【日中交渉秘話】 垂 秀夫 著
官庁を退官した人は、出身母体を批判したり、関係者を悪しざまに公表することがあります(腹いせのようであまり好きではない)。本書は、(知っている方も多数登場するのですが)一部の政治家を除いてそうした批判めいたことはなく、純粋に「日中交渉秘話」として読むことができます。文章も著者が語ることを産経記者が書き起こす形でとても読みやすくなっています。また、外務省の「工作」や現閣僚の発言など、「ここまで書いていいの?」と思うところもありますが、漁船追突事件や尖閣諸島問題など、実際はどうだったのかが克明に描かれています。
現在、台湾問題で紛糾していますが、著者は武力行使ではなく、「危機の本質はむしろ平和的統一のほうにある」と言います。Amazon Primeでは「零日攻撃」で中国の台湾侵攻を扱っていますが、ほとんど戦闘シーンはなく、グレーゾーン作戦として日常に食い込む「平和的統一」を描写しており、個人的にもそちらが優先されるかなと思っています。
自分自身、長らく中国とはビジネスをしてきましたが、著者のいう中国観はとても似ていて安堵しました(見かけは同じ東洋人ながら思考は米国的でビジョン優先など)。「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」という昨今の風潮にクギを刺し、「戦略的臥薪嘗胆」で長期的な視座に立つべきという論調にも同感です。「外務省のチャイナスクールたちが日夜いかに生命の危険をおかしてでも国益のために働いているか」がしっかり理解でき、今年読んだ中では白眉の一冊です。









