【書評】 ゆうびんの父 | "Food for Thought"

"Food for Thought"

日々考えていることを、自分の思考をまとめるためにも書きつづっています。

『ゆうびんの父』 門井 慶喜 著

 

 門井慶喜氏の本にハズレはないと新刊をゲット。と思ったところ、前半は前島密(上野房三郎)があっち行ったり、こっち行ったりの繰り返し。北は北海道から南は九州まで、上司・師・仕事を転々とし、「いつ本題は出てくるのやら…」と不安になってきます。後半から郵便事業の立ち上げとなり、ヤマト運輸の小倉昌男氏バリの活躍に移行します。しかも、前半の長々とした旅の経験が事業立ち上げに役立つということもわかりました。特に、旅を通じた維新の志士たちや勝海舟らとの交流が、やがて「人脈」となって活きてくることも描かれています。

 

 いまでも郵便局には地元の「名士」が就くことが多いようですが(私の知人もそう)、東海道から始めた郵便事業を全国展開するための算段であったということもわかり、歴史がまだ生きていることを実感した一冊です。