【書評】 黄金の稲とヘッジファンド | "Food for Thought"

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【黄金の稲とヘッジファンド】 波多野 聖 著

 

 第一次産業中央金庫(農林中央金庫)、略して産中(農林中金)を舞台とした経済小説。一般から預金を集める銀行とは異なり、農共(農協)、農林水産共同組合(農林水産業協同組合)から安定した資金を集めて運用する「系統金融」が、やがてヘッジファンド化する実態を描いています。

 

 主人公は自分とほぼ同世代。リーマンショックまでを描いていますが、実体験と重なる上、「なるほどね~、農協(JA)、農林中金とか、こうやっているのか」とか、地域の農業・漁業の話もあって、とても面白く読みました。恐らく著者の実体験によるものと思いますが、古典からの引用も多く、ページをめくる手が止まらない、人呼んで「かっぱえびせん状態」。

 

 脇役の「産中の最終兵器」として登場する菅拓郎という人物には助演男優賞です。エリート集団の産中にあって「菅は頭はありませんが、腹もありません」とケチョンケチョン。しかし、酒の付き合いだけは良いことから農共や共同組合から絶大な信頼を得て、産中との架け橋になるというのは、あるあるの世界です。

 

 色恋話は一切ない経済小説ですが、IR(投資家向け広報)をやっていたためか、投資家たちの動きや考え方もありありとわかり、読み終わって「あ~、面白かった~!」とため息をついた一冊です。