次は土曜に投稿予定です飛び出すハート

 

「ワインをお持ちしました」

 

 

食事が中盤に差しかかった時に現れたのは

涼やかな目元をしたウェイターだった。

 

「こちらは私からのサービスです。

今日は私の誕生日なので

どうぞお二人もご賞味ください」

 

 

二つのグラスをテーブルに置くと

気取った仕草で手早くつぎ分けた。

 

耀と浩は、グラスの中にルビー色の

液体が注がれるのをうっとりとながめた。

 

 

完璧な笑顔のウェイターは

「上海ルネサンス」のショップカードを

テーブルに置いた。

「またのお越しをお待ちしております」

 

 

耀はカードを手に取り

ウェイターの後姿をじっと見送った。

 

 

「なかなかこのワイン美味しいよ」

と浩はご満悦で言った。

「けっこう良いものだと思う。

僕らってラッキーだったんじゃない?」

 

 

「彼は毎日が誕生日かもしれないね」

冷静に耀は言った。



 

 

*・゜゜・*:.。..。.:*・゜・*:.。. .。.:*・゜゜・

 

 

「あ、そういうことだったのか」

 

そうだ。あのワインの中に

何か仕込んであったのだろう。

気の利いたサービスだと思わせて

さりげなく何かの薬を飲ませるためだったんだ。

 

 

二人は黙り込んだ。

 

自分たちが追いかけている九鬼は

そんなことまでする男なのだ。

 

 

「それにあの占い師の言葉。

あのまじないのような言葉で暗示をかけたんだな」

「なんて言ったっけ?」

 

 

 

「ミミズに食われろとか

蔦が追いかけてくるとか

それに九つの龍を探せ…だ」

 

 

九つの龍を探せ

 

 

「何だよ、それ。まるで意味わかんないよ」

「その通りの意味だろう。九つの龍を探せ」

「…………」

 

 

「やつがよこしてきたメッセージだ。

手の込んだ細工までしたのは

俺たちに本気になってほしかったからだ」

 

 

「そうかなぁ。それって

何か裏があるんじゃないの。

相手の術中にはまってしまっていいの?」

 

 

 

「そうはさせないさ。

相手がそのつもりでも逆手に取ってやる。

なあ、俺たちだってそんなに馬鹿じゃないだろう。

これを逃すともう連絡は取れないかもしれない。

最後のチャンスなんだ」

 

 

耀の力強い言葉に浩もようやくその気になってきた。

「でも龍って何?どうやって龍を探すんだい?」

 

 

「そこが問題だよな。

でも彼はちゃんと最初の手がかりは

残していったんだ」

 

 

耀が昨日もらったショップカードをひっくり返すと

裏に最初の目的地が書いてあった。    

 

 

         

   第一の龍 

     -手水舎-

 

 

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UnsplashBailey Heedick

 

月・木・土に投稿予定です飛び出すハート

 

占い師は瞑想するように目をつぶって

水晶玉に手をかざした。

 

 

透明だった水晶玉の中に

数滴の白い絵の具がわいて

ぽとぽとと水の中に落としたように

溶けていった。

 

 

それは入道雲がわくように

むくむくと水晶玉の中に広がっていって

雲はゆっくりと渦を巻き

しだいにスピードを早めていった。

 

 

ぐるぐる回る白い雲の渦の中で

塵のようなものが舞っている。

二人は目が吸い寄せられ

思わず身を乗り出していった。

 

 

塵のようなものは、小さなタロットカードだった。

水晶玉の中をカードが激しく舞っている。

 

 

椅子もテーブルもかたかたと揺れだし

耀と浩はテーブルにつかまった。

 

 

「さあ、今からわしの言うことを聞くがいい」

 

その声は占い師よりも

ずっと背後から響いてくるような太い声だった

 

 

テーブルはますます音をたてて激しく揺れた。

 

 

*・゜゜・*:.。..。.:*・゜・*:.。. .。.:*・゜゜

 

 

 

「遅くなりましたが…」

食事も中盤に差しかかった時に

滑るように現れたのは

涼やかな目元をしたウェイターだった。

 

 

「ワインをお持ちしました。 

今日は私の誕生日なので

よろしければ皆様もご賞味ください」

二つのグラスを音も立てずにテーブルに置くと

もったいぶった仕草で手早く注ぎ分けた。

 


 

水晶玉

 

月・木・土に投稿予定です飛び出すハート

 

 

「占い当たりますよ。

どうぞ、お入りください」

 

耀と浩が、緞帳のような

重いカーテンをめくって入ると

中は意外に広く

外観からは想像できないほどの奥行きがあった。

 

 

正面にはテーブルがあって

その上にはお決まりの水晶玉が鎮座している。

ここの主、占い師は

魔法使いのような帽子に

長髪で顔を隠すようにうつむいて座っていた。

 

 

二人が勧められて木のベンチに腰を下ろすと

占い師がおもむろに顔を上げ

正面からその顔を見た二人は声も出なかった。

 

 

何て不思議なご面相だろう。

不健康な黄色い顔に

大きくたるんだ下まぶた。

白髪の入り交じった長髪と長いあご鬚は

まるで面白おかしく変装をしたようだ。

 

 

「私の顔に何か付いているかね?」

と占い師。

「いいえ」二人は首を振って否定した。

「私の顔は変か?」

「いいえ、いいえ」

「ならいい」占い師は咳払いをして

「ところでさっきから黙っているが、用件は?」

 

 

さて、どうやって切り出せばいいのだろうか?

二人はとっさに飛び込んだから

何の考えもなかったのだ。

しばらくの沈黙のあと耀は口を開いた。

 

 

「僕たちが何を相談しに来たか

占い師さんならわかるんじゃないですか」

 

 

占い師は意表を突かれムッとした表情になった。

「わかっているかどうかだって…

わかっているさ、もちろんわかっている」

ぶつぶつと口の中でつぶやいた。

 

 

「ところで二人の名前を聞かせてもらうかな?」

これには耀も浩も正直あまり答えたくなかった。

相手の正体がよくわからないうちに

こちらの手の内を見せたくないのだ。

 

 

「僕たちの名前が必要なんですか?」

と浩が言うと

占い師は驚いたような顔をした。

また沈黙が訪れた。

 

 

「ふん、そうか。

名前も言いたくないのだな。

わしは姓名判断や人相学も含めて

総合的に霊視して占っている。

冷やかしなら出て行っておくれ。

時間のむだだ。やめた。やめた」

 

 

「僕たちそんなんじゃないです。

理由があって言えないんです」

浩は慌てて取りなした。

 

 

「それで占えと言うのか」

占い師はふーっとため息をついた。

「本当に難儀なものだな」

 

 

「人は困った時に占いを求める。

自分ではどうすればいいかわからないから

占いに頼る。

二人とも何か困ったことがあるから

良いことを言ってもらいたいと期待して

ここに来たのだな。

だが、占いは現実を変える魔法の力ではない!」

 

 

耀と浩は困ってしまって顔を見合わせた。

 

「ただ占いに救いを求める人の気持ちも

わからないではない。

しかし、これだけは言っておく。

解決策や打開する方法が見つかったとしても

かなりの困難を伴うことになる。

長い道のりになる。それでいいのだな」

と念を押すように言って睨んだ。

 

耀と浩はおとなしく頷く。

 

占い師は瞑想するように目をつぶって

水晶玉に手をかざした