
月・木・土に投稿予定です![]()
二人がやって来たのは
三つのデパートの中でも一番新しい
若者向けのセントラルデパート。
「こっち、こっち」
中に入ろうとした浩を呼び止めたのは
耀だった。
デパートの入り口横には
龍の模様がレリーフになった壁画がある。
「ああ、ここにもあったんだね」
「えっ、この壁画だと思っていたけれど
浩は違うの?」
中華街のあるこの街には
探せばいたるところに龍のモチーフがある。
ただしそれが九鬼の言うところの
「九つの龍」かどうかはわからない。
「とりあえず
この龍の壁画は撮っておこう」
耀はパシャリと写真に収めると
振り返って尋ねた。
「ところで
浩が考えていた場所はどこなんだい?」
それはデパート1階の
ハンバーガーショップだった。
2人が足を踏み入れると
ピーッと警笛が鳴って
おもちゃの列車が走り出したところだ。
セントラルデパート名物の
店内を走るドラゴン列車。
近くの中華街にちなんで
先頭が龍の頭になっている。
壁に近い目線を上げたぐらいの位置に
レールが設置してあり
15分おきに警笛とともに
列車が出発するのだ。
途中各駅で止まったり、走ったり
約5分で店内を一周して戻ってくる。
初めて来た人は音にびっくりして
珍しそうに見上げている。
(そうだ。僕と浩も最初来たときは
ぽかんと口を開けて見上げていたっけ)
「ほうら、汽車ぽっぽだよ」
小さい子どもがお母さんにあやされて
「きゃっきゃっ」と笑い声をあげている。
二人はハンバーガーとドリンクの
セットを注文した。
食べながらも視線を周囲に素早く
巡らすことは忘れない。
母親と子供。
にぎやかな女子高校生のグループ。
一人で来ている男性。
何も変わったところはない。
場違いな人、怪しい人はいない。
いたって普通の午後の店内の光景だ。
耀が物思いに沈んでいるので
「何か気になることでもあるの」
と浩がたずねた。
「うーん、うまく説明できないけれど
何かを感じるんだ。
誰かの視線を感じる」
クリーム色の壁には大きさの違う絵画が
飾ってある。
丘の上の一軒家だったり
光きらめく海だったり
色とりどりの花束だったり。
その中でも縦長の一番大きい絵。
これが耀はさっきから気になっていた。
グランドピアノとその横に立っている
少年を描いたもので
少年の歳は七~八歳ぐらい。
白いシャツに蝶ネクタイ
紺の半ズボンスーツという姿で
これから演奏を始めるのか、終えた後なのか
かしこまって照れたような笑みを浮かべている。
なぜこの絵に心ひかれるのだろう。
少年だ。
この少年を、知っているような
気がするからだ。
全然思い出せないけれど
確かにどこかで会っている。
耀は立ちあがって絵に近づいてみた。
絵の下にタイトルが記してある。
「天使の少年」
この少年が天使の少年なのか。
天使の少年。
天使の少年。
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スマホがあると
その場で何でも簡単に検索できるし
家族や知人の居場所もわかるので
ミステリーとしてはドキドキハラハラが
物足りないですね。
それで、このお話ではスマホがない時代に
設定しています。![]()




