読書の秋

 

まさに今の季節にぴったりなのが

 

レイ・ブラッドベリの 『10月はたそがれの国 』

  ( 原題は The October Country )

 

ブラッドベリの初期の幻想と怪奇の短編集。

 

この中の「みずうみ」と「集会」が

萩尾望都先生の

「ブラッドベリSF傑作選  ウは宇宙船のウ」

の中に入っています。

 

 

「集会」は

 闇の世界の住人たち

 魔力を持った一族が

 数十年に一度のハロウィンに

 世界中から集まってきて

 饗宴がひらかれる…というお話。

 

何だか「ポーの一族」の世界と似ていますね。

 

透明感、清澄さ、寂しさ、美しさ……。

 

そもそもレイ・ブラッドベリと

萩尾望都先生の一連の「ポーの一族」の

作品とは共通点が多いのです。

 

秋の夜長を楽しむにはおすすめですよ。

 

 

余談ですが、私がレイ・ブラッドベリの

短編の中で一番好きなのは

『とうに夜半を過ぎて』の中の

「ある恋の物語」です。

レトリックを駆使した奇妙な味の物語で

いつまでも余韻が残ります。

 

 

Image by Joe from Pixabay  (上)

Melk HagelslagによるPixabayからの画像 (下)

 

※  2022年の記事に、加筆修正して再投稿したものです。

 

 
月・木・土に投稿予定です飛び出すハート

 

 

時間は夜の八時を少し回っていた。

オフィスに残っているのは

日和田と耀の二人だけだったが

二人とも口をきかず

黙々と自分の仕事をこなしていた。

 

 

日和田は急に「あっ」と声を上げ

「帰らなくちゃ、帰らなくちゃ

忘れていた」

ぶつぶつとつぶやき

慌ただしく帰り支度を始めた。

 

 

 

日和田はもはや

耀に声をかけることも

目を合わせることもなかった。

無関心を装うことが

彼流の不器用なアピールなのだ。

 

 

耀もそれを知っていて、パソコンに向かって

自分の仕事に集中しているふりをし

気づかないふりで応じていた。

 

 

何も言わずに帰っていくのかと

思っていたが、日和田は

「お先に失礼します」

と耀に声をかけて出て行った。

 

 

どんなニュアンスも汲み取れないように

細心の注意をはらった

抑揚のない声だった。

 

 

期待を与えないように

かといって恨みを買わないように。

これが日和田のできる精一杯の礼儀

最低限の挨拶なんだろう。

 

 

Image by Free Photos from Pixabay

 

 

つい一週間前までは、この事務所の中で

お互いを心の支えとし

二人で共同戦線を張って

励ましあい慰めあっていたというのに。

 

 

耀は溜息をついた。

 

いじめられている子をかばったりするな。

今度は自分がいじめられる番になる。

今どき子供でさえ知っているような

単純なルール。

 

 

こんなこともわからないなんて

自分は本当にばかでお人よしだ。

 

 

でも不思議と裏切った日和田に対して

怒りはわいてこない。

それどころか「そこまでして

この事務所にしがみつきたいのか」

と憐みすら覚える。

 

 

そして

自分はと言えば…

いつもこんなことを

繰り返しているような気がする。

 

 

 

 

 
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東京での就職を諦めて

故郷に戻った耀は

すぐに実家の「ラーメン亭」で

働くことはしなかった。

 

 

大学で学んだ経営学、特に会計学を

実務で学びたいという思いから

会計事務所に勤めることにした。

 

 

「ラーメン亭」は

小規模な家族経営のため

選んだのはビルの一室にある

所長と事務員6人の小さな会計事務所だった。

 

 

入所当初、事務所の雰囲気は

とても良かった。

年長の先輩職員が面倒見の良い頼れる人物で

温かい雰囲気の中で働き始めた。

 

 

しかし、小さな職場の人間関係は

トップの人格に大きく左右されることを

耀は後に思い知らされることになる。

 

 

その先輩が急に実家の家業を継ぐことになり

退職したのだ。

すると、それまでおとなしくしていた

ナンバー2の鰐口(わにぐち)が

にわかに気炎を上げ始めた。

 

 

辞めた先輩の代わりに

日和田(ひよりだ)という男が

入ってきてからは

鰐口の言動は一層エスカレートしていった。