新刊のチェックにホームページにいったら発見した。小説やエッセイを連載するサイト。「レンザブロー」
ポプラビーチ
やwebちくま
みたいな感じ。執筆人は豪華で酒井順子、柴崎友香、中村航&フジモトマサル(回文コンビが復活!)、宮下奈央、金原ひとみ、中島さをり、橘連二、古川日出男、恩田陸、加門洋子、という超豪華メンバー。
これが無料で読めるというのは嬉しいかぎり。これからは各出版社がこうした文芸WEBコンテンツを持つという流れに期待したい。と思いつつも、こっちが連載の主流になったら変わりに文芸誌が無くなってしまうのではと心配な気もする。
週刊誌の書評コーナーで桜庭一樹が紹介していて面白そうだったので読んでみた。とある国のとある町の駅前に大きなクレーンをつくることになり、そのクレーンに魅せられた男の波乱万丈な生涯の物語。キレイな挿絵がたくさんついていて、とっても読みやすい児童書。
クレーンに対する驚異的な愛情を持つクレーン男の魅力と、愛すべき脇役たちの存在。ちょっと風刺的な部分もあるので大人でも十分に楽しめる内容になっている。クレーン万歳!
芥川賞候補になった『わたくし率 イン歯ー、または世界』が掲載されていて、他の作品も気になったため購入。表紙のペラペラさが尋常ではなく、すぐに捲れあがって大変。収録されている小説は以下のラインナップ。
川上未映子『わたくし率、イン 歯ー、または世界』
青木淳悟『日付の数だけ言葉が』
青山慎治『遊水地の眺め』
鹿島田真希『美しい人』
仙田学『肉の恋』
荻田洋文『ユキチ・コード』
向井豊昭『ドレミの外』
横田創『嘘で塗りかためられた人生』
中原昌也『執筆委任』
他にも斉藤美奈子と森達也の対談や評論、寺山修二の小特集などが掲載されている。
一般小説ばかり読んできたので、こういう実験的な雰囲気の純文学はあんまりよく分からない。青木淳悟や青山慎治など有名どころも今回始めて読んだが、さっぱり理解できなかった。中原昌也『執筆委任』も何やら目の前にいる女性に対して小説を書けと延々語りかけているという、実際に喋ったのをそのまま文章にしたんじゃないのかと思われる短編で、何だろうこれはと思っていると最後には早稲田文学新人賞募集の告知ページになって審査員が中原昌也というネタなのか小説なのかよくわからないものになっている。そんな中で僕なりに楽しめた作品をいくつか紹介。
『わたくし率 イン歯ー、または世界』川上未映子(著者のブログ )
前回の芥川賞候補になった作品。これを読んだら芥川賞を受賞した『アサッテの人』がものすごくフツーの小説の思えるほど混迷を極める内容になっている。自分のアイデンティティは歯なのだと激しく主張する女性が主人公。勤務する歯医者で同僚に苛められながら、いつか生まれるかも知れない未来の自分の子供に向けて手紙を書いていて、その文面でなかなか会えない恋人への思いを綴ったりしている。タイトルは変だが、それは内容が変だからなのであって、このタイトルは内容から考えると的確だ。
鹿島田真希『美しい人』
二つ年上の兄を愛する15歳の妹の、崇拝の念と鬱積した感情と屈折した憎しみと自虐の思いとが入り混じる。このラインナップのなかでは一番の直球。仰々しい文体で熱い想いを綴っていて兄はヘッセの「デミアン」を読んでいたりと高尚な雰囲気がありつつも、その傍らで老人ばかりの町内会の話題とか、豆腐買ってきてと頼まれたり庶民派な空気も流れるなど、愛憎以外にも様々に裏表が入り混じっていて独特の読み心地が楽しめた。
仙田学『肉の恋』
僕がホラー短編アンソロジーをつくるなら、ぜひ入れたい。スーパーで売っているスライス肉が異常に好きな女性の物語。純文学として真剣に読み込んだらスーパーの肉が食べられなくなりそうなので、これはホラー小説ということで流しておきたいところ。
荻田洋文『ユキチ・コード』
フリーマーケットで散髪をしてもらう話と、寓話的な世界のどかの小国での国王選挙のドタバタ劇が並行して描かれている。僕がそれほど作家を知らないのでもっと的確な人がいるかもしれないけれど、中村航と長嶋有を足して二で割ったような雰囲気を持っているような。ぼんやりフリーマーケットの店をひやかしたり、馬鹿な友人の騒ぎに巻き込まれたりと、取り立てて派手な展開はないものの、ゆるやかな日常の心地よさなどが感じられた。
なにげなく日常的に使われている言葉やしぐさに対する違和感を深く考察し、一回転半して予想もしない所に着地するようなエッセイ集。
「引退ではなく、卒業」や「旦那さんをお借りします」という言い回しの不可思議さを考え、「○○ドリンク」「○○リョク」という単語が持つ力の検証し、小便小僧をみて人は何を感じ得るのかと悩み、喫茶店とカフェの違いを考察し、暗がりでは人は小声になることや、関西のニュースでは広さは甲子園で測ることの発見したり、タバコ屋でアルバイト店員が言った「いまダンヒルは、だいたいジッポーになってます」という言葉からアルバイトの力を思い知る。
見過ごしがちな些細な違和感に鋭く切り込んで行く視点と、それを押し広げ笑いへと転化させる技量。宮沢章夫のエッセイは読むたびに僕は感心しながら笑い転げてしまう。
このミスで今年発売予定とあったのに音沙汰がなかった『ゴールデンスランバー』が、セブンアンドワイで予約受付
けが始まった模様。11月30日予定。今度こそ直木賞、もしくは本屋大賞!

