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砂場

本の感想と日記。些細なことを忘れないように記す。

ずっとお城で暮らしてる (創元推理文庫 F シ 5-2)
東京創元社
シャーリイ・ジャクスン(著)市田 泉(翻訳)
発売日:2007-08



豪邸に姉と叔父と暮らす少女メリキャット。彼女たちは過去にあった毒殺事件の生き残りの3人だ。町に買い物に行くのはメリキャットの役目。町の人たちは裕福なメリキャットたちをとても嫌っていて、いじめられる。だが屋敷の中での生活は快適だ。姉のコンスタンスは家事などが大好きで、メリキャットの面倒をよく見るし、車椅子の叔父との関係も良好で、その生活には幸福感が漂う。

だが彼女たちの幸せな様子を読んでいても違和感が離れない。自ら作ったおまじないの儀式など独自の世界観に生きているメリキャットの奇行。叔父は毒殺事件の思い出話を繰り返す。そんな二人に何の違和感も感じていないコンスタンスは、かいがいしく二人の面倒をみる。彼女たちが幸せだからいいのだと納得しつつも、一緒に住むには厳しいとしか言いようのないメンバーだ。

そして屋敷は従兄の登場によってバランスを失ってゆく。まるで今までの幸せは魔法によって作り出されていた幻かのように、どんどん色褪せていく。それは屋敷という閉じたれた世界のルールが失われ、外の世界のルールに侵食されていくようでもある。幸福と常識とは相容れないものなのだろう。盲目的でなければ幸福になることなどできないのだから。それはきっと魔法に近い。

それにしても、なんて嫌な人間ばかりでてくる小説なのだろう。人には薦めづらいけど、読んだ人とは話が盛り上がりそうな小説だ。
ミノタウロス
講談社
佐藤 亜紀(著)
発売日:2007-05-11



20世紀初頭のロシアウクライナ地方。偶然にも地主に成り上がった父を持つ主人公。その幼少時代から、戦争の混乱のなか生き延びていく様を描く悪漢小説。300ページ足らずとは思えない重厚な内容だ。

誰もが欲望のままに生きていた。それでも秩序があったから死ぬものは少なかった。やがて戦争の混乱が始まる。秩序が失われた世界で、誰もが欲望のなかで死んでゆく。もしくは欲望に絶望をして死んでゆく。数多くの魅力ある登場人物たちが現れては消えてゆく。それぞれが様々な状況下で複雑な想いを胸に抱きながら死んでゆく。死と生の距離が近すぎて、その差に価値がなくなっていくようにさえ思えてくる。凄惨さ極まる状況の中、主人公と仲間たちは非道な行為をためらわずに繰り返す。それは生き延びるためにしかたなくというよりも、檻から解き放たれた獣のように生き生きとした姿に思える。

ぼくはまだ人間であるかのように扱われ、だから人間であるかのように振舞った。それをひとつずつ剥ぎ取られ、最後のひとつを自分で引き剥がした後も、ぼくは人間のふりをして立っていた。数え切れないくらいの略奪と数を数えることさえしなくなった人殺しの後も、人を殺して身ぐるみを剥ぎ、機銃と手榴弾で襲って報復を得ることを覚えても、ぼくはまだ人間の顔をしていることができた。
インシテミル
文藝春秋
米澤 穂信(著)
発売日:2007-08



たぶん今年のこのミス上位は確実。雪山の山荘、嵐の孤島などといった閉鎖された場所で次々と起こる殺人事件というクローズドサークルを扱った本格推理小説。ありえない高額のバイトに申し込んだ人たちが巻き込まれる殺人ゲームという展開。使い古された本格推理の手法を逆手にとってパロディの要素を交えてエンターテイメントとして楽しませる。本格推理小説を読んだことのない人が楽しめるかどうかは分からないが、クローズドサークルが好きな推理小説ファンなら必読。最近はあまり本格推理は読んでいないけど、これは楽しめた。
実際にあったお客様の問い合わせ。

「タムラって本はどれ?」
「キリンって本ありますか?」
「ダンボール中学生を探してるんですが?」

どれも正解は「ホームレス中学生」です。


硝子のハンマー (角川文庫 き 28-2)
角川書店
貴志 祐介(著)
発売日:2007-10
丸かじり劇場メモリアルBOX (朝日文庫 し 14-4)
朝日新聞社
東海林 さだお(著)
発売日:2007-10-10
生首に聞いてみろ (角川文庫 の 6-2)
角川書店
法月 綸太郎(著)
発売日:2007-10

泣かない女はいない (河出文庫 な 23-1)
河出書房新社
長嶋 有(著)
発売日:2007-10
退屈論 (河出文庫 こ 11-1)
河出書房新社
小谷野 敦(著)
発売日:2007-10
その名にちなんで (新潮文庫 ラ 16-2)
新潮社
ジュンパ・ラヒリ(著)小川 高義(翻訳)
発売日:2007-10
背の眼 上 (1) (幻冬舎文庫 み 11-1)
幻冬舎
道尾 秀介(著)
発売日:2007-10
背の眼 下 (3) (幻冬舎文庫 み 11-2)
幻冬舎
道尾 秀介(著)
発売日:2007-10
百器徒然袋-風 (講談社文庫 (き39-12))
講談社
京極 夏彦(著)
発売日:2007-10
天使の梯子 (集英社文庫 む 5-19)
集英社
村山 由佳(著)
発売日:2007-10

さようなら、コタツ (集英社文庫 (な41-2))
集英社
中島 京子(著)
発売日:2007-10
国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて (新潮文庫 さ 62-1)
古本病のかかり方 (ちくま文庫 (お34-4))
筑摩書房
岡崎 武志(著)
発売日:2007-10
ブロンソンならこう言うね (ちくま文庫 み 23-3)
筑摩書房
ブロンソンズ(著)
発売日:2007-10

文庫手帳 (2008) (ちくま文庫 (ん1-21))
筑摩書房
発売日:2007-10
笑う茶碗 (ちくま文庫 (み5-15))
筑摩書房
南 伸坊(著)
発売日:2007-10
分岐点 (双葉文庫 こ 17-1)
双葉社
古処 誠二(著)
発売日:2007-10
対岸の彼女 (文春文庫 か 32-5)
文藝春秋
角田 光代(著)
発売日:2007-10


Amazy
パソコン書担当なのでエクスメディア倒産のショックから立ち直れない。だからビジネス書や実用書やら何でもいいから「超図解」とつけてガンガン出すべきだと何年も前から言っていたのに……。

10月は気になる本が多かったです。


さよなら僕の夏
晶文社
レイ・ブラッドベリ(著)北山 克彦(翻訳)
発売日:2007-10

灯台守の話
白水社
ジャネット・ウィンターソン(著)岸本 佐知子(翻訳)
発売日:2007-11
借金取りの王子
新潮社
垣根 涼介(著)
発売日:2007-09

私の男
文藝春秋
桜庭 一樹(著)
発売日:2007-10

走ることについて語るときに僕の語ること
文藝春秋
村上 春樹(著)
発売日:2007-10-12

秋の牢獄
角川書店
恒川 光太郎(著)
発売日:2007-11
二度はゆけぬ町の地図
角川書店
西村 賢太(著)
発売日:2007-11
伊坂幸太郎×斉藤和義 絆のはなし
講談社
伊坂 幸太郎(著)斉藤 和義(著)
発売日:2007-10-11

きみとぼくの壊れた世界
講談社
西尾 維新(著)
発売日:2007-10-10
不気味で素朴な囲われた世界 (講談社ノベルス ニJ- 20)
講談社
西尾 維新(著)
発売日:2007-10

洗面器の音楽
集英社
藤谷 治(著)
発売日:2007-10
さよなら、そしてこんにちは
光文社
荻原 浩(著)
発売日:2007-10-20

のはなし
宝島社
伊集院 光(著)
発売日:2007-09-28

バカにならない読書術 (朝日新書 72)
朝日新聞社
養老 孟司/池田 清彦/吉岡 忍(著)
発売日:2007-10-12

ガラスの宮殿 (CREST BOOKS)
新潮社
アミタヴ・ゴーシュ(著)
発売日:2007-10
若者を見殺しにする国―私を戦争に向かわせるものは何か
双風舎
赤木 智弘(著)
発売日:2007-10-25

Amazy