『ずっとお城で暮らしてる』シャーリイ・ジャクスン/創元推理文庫 | 砂場

砂場

本の感想と日記。些細なことを忘れないように記す。

ずっとお城で暮らしてる (創元推理文庫 F シ 5-2)
東京創元社
シャーリイ・ジャクスン(著)市田 泉(翻訳)
発売日:2007-08



豪邸に姉と叔父と暮らす少女メリキャット。彼女たちは過去にあった毒殺事件の生き残りの3人だ。町に買い物に行くのはメリキャットの役目。町の人たちは裕福なメリキャットたちをとても嫌っていて、いじめられる。だが屋敷の中での生活は快適だ。姉のコンスタンスは家事などが大好きで、メリキャットの面倒をよく見るし、車椅子の叔父との関係も良好で、その生活には幸福感が漂う。

だが彼女たちの幸せな様子を読んでいても違和感が離れない。自ら作ったおまじないの儀式など独自の世界観に生きているメリキャットの奇行。叔父は毒殺事件の思い出話を繰り返す。そんな二人に何の違和感も感じていないコンスタンスは、かいがいしく二人の面倒をみる。彼女たちが幸せだからいいのだと納得しつつも、一緒に住むには厳しいとしか言いようのないメンバーだ。

そして屋敷は従兄の登場によってバランスを失ってゆく。まるで今までの幸せは魔法によって作り出されていた幻かのように、どんどん色褪せていく。それは屋敷という閉じたれた世界のルールが失われ、外の世界のルールに侵食されていくようでもある。幸福と常識とは相容れないものなのだろう。盲目的でなければ幸福になることなどできないのだから。それはきっと魔法に近い。

それにしても、なんて嫌な人間ばかりでてくる小説なのだろう。人には薦めづらいけど、読んだ人とは話が盛り上がりそうな小説だ。