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砂場

本の感想と日記。些細なことを忘れないように記す。

無事に10作品が決まりました。超大作に話題作から感動作からエンタメ小説に人気作家の新刊まで。例年になく幅広いジャンルにまたがっていて、読むのが楽しみだけど、現在のところ読んでいる候補作は2作。大作揃いで、しかも他にも読まなければいけない本が山積みの状況で、僕は2月末までに読みきれるのだろうか。

ちなみに僕の投票した3作品『カラスの親指』『小さな男*静かな声』『かもめの日』 は見事落選・・・。『カラスの親指』なんとか滑り込むかと思っていたのだが残念。

悼む人
天童荒太
文藝春秋
発売日:2008-11-27

告白
湊かなえ
双葉社
発売日:2008-08-05

出星前夜
飯嶋和一
小学館
発売日:2008-08-01

ジョーカー・ゲーム
柳広司
角川グループパブリッシング
発売日:2008-08-29

新世界より 上
貴志祐介
講談社
発売日:2008-01-24

テンペスト  上 若夏の巻
池上永一
角川グループパブリッシング
発売日:2008-08-28

のぼうの城
和田竜
小学館
発売日:2007-11-28

ボックス!
百田尚樹
太田出版
発売日:2008-06-19

モダンタイムス (Morning NOVELS)
伊坂幸太郎
講談社
発売日:2008-10-15

流星の絆
東野圭吾
講談社
発売日:2008-03-05

投票本3作品。


カラスの親指 by rule of CROW’s thumb
道尾秀介
講談社
発売日:2008-07-23

小さな男 * 静かな声
吉田篤弘
マガジンハウス
発売日:2008-11-20

かもめの日
黒川創
新潮社
発売日:2008-03

12月のポプラ文庫が我が嫁を狙い撃ちだったことに今気づきました。


都市のドラマトゥルギー (河出文庫) (河出文庫)
吉見俊哉
河出書房新社
発売日:2008-12-04

蝶 (文春文庫)
皆川博子
文藝春秋
発売日:2008-12-04

意味がなければスイングはない (文春文庫)
村上春樹
文藝春秋
発売日:2008-12-04

古本屋群雄伝 (ちくま文庫)
青木正美
筑摩書房
発売日:2008-12-10

くらやみの速さはどれくらい (ハヤカワ文庫 SF ム 3-4) (ハヤカワ文庫SF)
エリザベス・ムーン
早川書房
発売日:2008-12-10

翻訳のココロ (ポプラ文庫)
鴻巣友季子
ポプラ社
発売日:2008-12-05

クルヨ・クルヨ (ポプラ文庫)
荒井良二
ポプラ社
発売日:2008-12-05

お悩みカテドラル (ポプラ文庫)
辛酸なめ子
ポプラ社
発売日:2008-12-05

綺譚集 (創元推理文庫)
津原泰水
東京創元社
発売日:2008-12

押入れのちよ (新潮文庫)
荻原浩
新潮社
発売日:2008-12-20

詩の力 (新潮文庫)
吉本隆明
新潮社
発売日:2008-12-20

アップルの人 (新潮文庫)
宮沢章夫
新潮社
発売日:2008-12-20

ナショナル・ストーリー・プロジェクト〈1〉 (新潮文庫)
ポール・オースター
新潮社
発売日:2008-12-20

ナショナル・ストーリー・プロジェクト〈2〉 (新潮文庫)
ポール・オースター
新潮社
発売日:2008-12-20

新版 禅とは何か (角川ソフィア文庫)
鈴木大拙
角川学芸出版
発売日:2008-12-25

死なないでいる理由 (角川文庫)
鷲田清一
角川学芸出版
発売日:2008-12-25

犬神博士 (角川文庫)
夢野久作
角川グループパブリッシング
発売日:2008-12-25

夜は短し歩けよ乙女 (角川文庫)
森見登美彦
角川グループパブリッシング
発売日:2008-12-25

国内小説が少ないのは本屋大賞が11月発売までが対象のためということでしょうか。そんななか、圧倒的に評判がいいのが西原理恵子『この世でいちばん大事な「カネ」の話』。この不況のタイミングで、生きていくための「カネ」について語るタイミングのよさ。しかもカネの話を自伝的に語っていて、その説得力が尋常ではない西原理恵子の生き様の激しさ。読んでないけど、凄いらしい。

その代わりに、まとめ的な本が素晴らしく充実。年間のまとめ本は文庫なら『文庫王国』、単行本ならダ・カーポ編集『今年最高の本』がジャンルの偏りがなくバランスがよくておすすめ。特に『文庫王国』は休刊の危機にさらされている「本の雑誌」の発売ですから、必ず買いましょう。


僕の読書感想文
近田春夫
国書刊行会
発売日:2008-12

文学地図 大江と村上と二十年 (朝日選書)
加藤典洋
朝日新聞出版
発売日:2008-12-10

本格ミステリ・フラッシュバック
千街晶之
東京創元社
発売日:2008-12

幻影城の時代 完全版 (講談社BOX)
講談社
発売日:2008-12-17

今日もていねいに。
松浦弥太郎
PHP研究所
発売日:2008-12-11

おすすめ文庫王国2008年度版
本の雑誌社
発売日:2008-12-06

ダカーポ特別編集 今年最高の本 2008 (マガジンハウスムック)

エッジ 上
鈴木 光司
角川グループパブリッシング
発売日:2008-12-19

エッジ 下
鈴木 光司
角川グループパブリッシング
発売日:2008-12-19

GOTH  モリノヨル
乙 一
角川グループパブリッシング
発売日:2008-12-17

TAP (奇想コレクション) (奇想コレクション)
グレッグ・イーガン
河出書房新社
発売日:2008-12-02

古本供養
出久根 達郎
河出書房新社
発売日:2008-12-18

見えない音、聴こえない絵
大竹伸朗
新潮社
発売日:2008-12

スプーク・カントリー (海外SFノヴェルズ)
ウィリアム・ギブスン
早川書房
発売日:2008-12-18

ハーモニー (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)
伊藤 計劃
早川書房
発売日:2008-12

部屋の向こうまでの長い旅
ティボール フィッシャー
ヴィレッジブックス
発売日:2008-12-10

すごい本屋!
井原 万見子
朝日新聞出版
発売日:2008-12-19

きのこ文学大全 (平凡社新書)
飯沢 耕太郎
平凡社
発売日:2008-12

森に眠る魚
角田 光代
双葉社
発売日:2008-12

ファンタジー文学案内
海野 弘
ポプラ社
発売日:2008-12


明けましておめでとうございます。といいつつ、去年読んだ本を紹介。トップの画像を年賀状用に撮影した我が子と牛乳のものに変えてみました。今年も更新は少なくなると思いますが、よろしくお願いします。


ライト
M・ジョン・ハリスン
国書刊行会
発売日:2008-09


3つの物語が平行して描かれたSF小説。少し病的な未来世界の全貌はなかなか見えてこず、登場人物たちの行動も理解しづらい。序盤の困惑があるからこそ、中盤以降の全てが繋がりだす展開が気持ちよく、ラストへと収束する加速感が眩しい。全てを語りつくさないことによって、ただの箱庭ではない、新たな世界を創り上げている。

庵堂三兄弟の聖職
真藤順丈
角川グループパブリッシング
発売日:2008-10-24


日本ホラー小説大賞受賞作は全部読んできたけれど、これは過去最高にホラー小説ではない。ホラー的要素を散りばめた青春・家族小説だ。エンタメ小説としての完成度はあるので楽しめるけれど、ホラー小説ファンとしてこの受賞は複雑な心境。

ミスター・ミー (海外文学セレクション)
アンドルー・クルミー
東京創元社
発売日:2008-10


こちらも3つの物語が描かれる。謎の百科事典を巡って繰り広げられるドタバタ劇と量子論などの難解な文章が入り乱れ、その落差がたまらない。まっとうな小説に飽きた人に超お薦め。

幻影の書
ポール・オースター
新潮社
発売日:2008-10-31


幻影となって生きた喜劇映画の監督の生涯と、彼の作品について本を書く妻子を失った男の物語。忘れられた過去に照らされる影。消えてしまった未来という幻。幻影は今という瞬間ですら飲み込んでいく。それは悲劇には違いない。けれど、幻影は完全な無ではない。幻影という存在があるから、人は生きていくことができる。人生とは幻影である。幻影のなかで人は生きている。

星のしるし
柴崎友香
文藝春秋
発売日:2008-10


占いやスピリチュアルが生活に浸透している。そういう神秘的なものが実在するかはおいといて、カウンセリング的に効果があるのは事実だ。それを持ち上げるでもなく、貶めるでもなく、リアルに等身大の女性の日常として描く。そのバランスが絶妙だ。そして、こういうラストシーン僕は好きです。

小銭をかぞえる
西村賢太
文藝春秋
発売日:2008-09


ダメ人間を描いた私小説。恋人には暴力を振るう。自分の体面のためだけに友人・知人に金の無心をする。短絡的で直情的で小心者で、救いようのない人間のクズとして描かれている。読んでいて本気で虫唾が走る。読んでいて楽しくはない小説だけど、だからといってつまらないわけでもなく、人間関係の空気感を微妙に変化させながら、会話の流れや感情の起伏など、全ての要素がダメ人間をよりダメ人間にするためにだけ費やされいく。その筆力には感心する。

ギンイロノウタ
村田沙耶香
新潮社
発売日:2008-10


2つの物語が収録されているが、どちらも現実世界に馴染めず、独特の内面世界に生きる少女を描いている。少女が母親を理想もしくは反面教師として大人の女性へと成長するのだとすれば、この少女は母親との関係が破綻していることによって、少女としての自分のあるべき姿が見つからず、その欠落を埋めるために異物を次々と取り入れて、不安定な精神状態のまま独自の価値観を築き上げながら年齢を重ねていく。現代的な無機質さと、少女趣味的な耽美さが入り混じった世界は見事で、これは次の三島賞を狙えるレベルがあると思う。でも、読んでいると、ゆがんだ鏡を見ているような、とても落ち着かない気分になるので、心の調子が悪いときは避けたほうがいいかも知れない。

年内の書評は年内に書き上げたいと、思うけれど。

クレストブックから堀江敏幸が選んだベスト短編集。繊細な描写によって描かれる物語たち。世界中を舞台に、様々な人の人生が切り取られる。何かを掴み取ることと引き換えに、何かを失うこと。静かな夜に読みたい、心に沁みる物語たち。なぜこの本がベストセラーにならないのだろう。


ctの深い川の町
岡崎祥久
講談社
発売日:2008-08

バカっぽく適当に思える言葉を投げ散らかしても、それが誰かの言葉に届けば、そこに幸福が生まれる。何もせず、何も答えなくとも、誰かの救いになることがある。ぼんやりと悩みながらタクシーを運転するこの主人公は、物語の中では何もしていないようで、何人もの人の救いとなっていく。何か夢を追うこともなく、一生懸命になるでもなく、けれどだらけているわけでもなく、人並みに不満などはあるけれど、真面目に淡々と働いて生活をする。そうした地味な生活のなかで、地元ならではの出会いがあり、そこから人と人が繋がり何かが生まれる。それらが「小さな幸せ」なんかに回収されず、主人公にとってはいつもどおりの「ぼんやりと悩んでいる日常」として過ぎていくあたりが味わい深い。


地図男 (ダ・ヴィンチブックス)
真藤順丈
メディアファクトリー
発売日:2008-09-03

東京の地図を持って歩き続ける男。その地名のところには、誰かに語りかけるかのような文体で物語が描かれている。3歳の天才音楽家。山賊となった男、東京の区を代表して夜な夜なバトルを繰り広げるアングラ世界、世界を折り合いのつかないムサシとアキルの恋物語。この物語たちは、誰に向かって語られているのか。古川日出男のような設定と世界感と文体で進みつつも、エンタメ小説として見事に着地。


モダンタイムス (Morning NOVELS)
伊坂幸太郎
講談社
発売日:2008-10-15

浮気を疑った嫁に送り込まれた拷問男。暗号が隠された謎のプログラム。過去にあった小学校襲撃事件。様々な要素が入り乱れ、戦うべき相手もわからないまま、奮闘する主人公とその仲間。やっぱり伊坂幸太郎は面白い。『ゴールデンスランバー』と平行して書かれたということで、それぞれ補完しあっているところも読みどころ(前作が「逃げる」のに対して今回は「戦う」とか)。


ことば汁
小池昌代
中央公論新社
発売日:2008-09


幻想的な6つの短編。共通しているのは動物化。人間の心の奥底に眠る欲望が解放され、人がその姿を変えていく。悪夢のような世界なのに、動物化したした人間たちは自分の本来の居場所を見つけたかのように、生き生きと心地よさそうに思える。人間が人間の皮を破る恐ろしさと、その変わり身の鮮やかさが秀逸。



閉塞感の漂う生きにくい現代の若者を取り巻く状況について、もっとも若者に寄り添って考えている社会学者は鈴木謙介だと思う。安易な既得権批判を否定して「ほんとうの幸せ」という虚構の権利を主張するのではなく、「ほんとうに幸せになる」ための道を探る。名詞から動詞へ。


一度、マンガの評論というものを読んでみようかなと思って購入。文学や音楽・映画評論と同じようにマンガも評論されるだけの作品であるという当たり前のことを、今更ながら確認。エロ漫画にヤオイから、変身ヒーローなど幅広い内容。


偶然と必然をどう捉えるかによって、人生の意味は大きく変わる。真理は必然にだけ宿ると考える西洋と、偶然のなかに無常という価値を見出す日本。日欧文化論として明快であり、また偶然が思想史のなかでどう扱われてきたのかということも分かりやすく書かれてあって興味深い。偶然か必然かという問いが実はとても主観的なものであることを解き明かし、偶然と思ったことが必然に思えてくる心の変化こそ大切だと著者は説く。