2008年11月に読んだ本 | 砂場

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本の感想と日記。些細なことを忘れないように記す。

明けましておめでとうございます。といいつつ、去年読んだ本を紹介。トップの画像を年賀状用に撮影した我が子と牛乳のものに変えてみました。今年も更新は少なくなると思いますが、よろしくお願いします。


ライト
M・ジョン・ハリスン
国書刊行会
発売日:2008-09


3つの物語が平行して描かれたSF小説。少し病的な未来世界の全貌はなかなか見えてこず、登場人物たちの行動も理解しづらい。序盤の困惑があるからこそ、中盤以降の全てが繋がりだす展開が気持ちよく、ラストへと収束する加速感が眩しい。全てを語りつくさないことによって、ただの箱庭ではない、新たな世界を創り上げている。

庵堂三兄弟の聖職
真藤順丈
角川グループパブリッシング
発売日:2008-10-24


日本ホラー小説大賞受賞作は全部読んできたけれど、これは過去最高にホラー小説ではない。ホラー的要素を散りばめた青春・家族小説だ。エンタメ小説としての完成度はあるので楽しめるけれど、ホラー小説ファンとしてこの受賞は複雑な心境。

ミスター・ミー (海外文学セレクション)
アンドルー・クルミー
東京創元社
発売日:2008-10


こちらも3つの物語が描かれる。謎の百科事典を巡って繰り広げられるドタバタ劇と量子論などの難解な文章が入り乱れ、その落差がたまらない。まっとうな小説に飽きた人に超お薦め。

幻影の書
ポール・オースター
新潮社
発売日:2008-10-31


幻影となって生きた喜劇映画の監督の生涯と、彼の作品について本を書く妻子を失った男の物語。忘れられた過去に照らされる影。消えてしまった未来という幻。幻影は今という瞬間ですら飲み込んでいく。それは悲劇には違いない。けれど、幻影は完全な無ではない。幻影という存在があるから、人は生きていくことができる。人生とは幻影である。幻影のなかで人は生きている。

星のしるし
柴崎友香
文藝春秋
発売日:2008-10


占いやスピリチュアルが生活に浸透している。そういう神秘的なものが実在するかはおいといて、カウンセリング的に効果があるのは事実だ。それを持ち上げるでもなく、貶めるでもなく、リアルに等身大の女性の日常として描く。そのバランスが絶妙だ。そして、こういうラストシーン僕は好きです。

小銭をかぞえる
西村賢太
文藝春秋
発売日:2008-09


ダメ人間を描いた私小説。恋人には暴力を振るう。自分の体面のためだけに友人・知人に金の無心をする。短絡的で直情的で小心者で、救いようのない人間のクズとして描かれている。読んでいて本気で虫唾が走る。読んでいて楽しくはない小説だけど、だからといってつまらないわけでもなく、人間関係の空気感を微妙に変化させながら、会話の流れや感情の起伏など、全ての要素がダメ人間をよりダメ人間にするためにだけ費やされいく。その筆力には感心する。

ギンイロノウタ
村田沙耶香
新潮社
発売日:2008-10


2つの物語が収録されているが、どちらも現実世界に馴染めず、独特の内面世界に生きる少女を描いている。少女が母親を理想もしくは反面教師として大人の女性へと成長するのだとすれば、この少女は母親との関係が破綻していることによって、少女としての自分のあるべき姿が見つからず、その欠落を埋めるために異物を次々と取り入れて、不安定な精神状態のまま独自の価値観を築き上げながら年齢を重ねていく。現代的な無機質さと、少女趣味的な耽美さが入り混じった世界は見事で、これは次の三島賞を狙えるレベルがあると思う。でも、読んでいると、ゆがんだ鏡を見ているような、とても落ち着かない気分になるので、心の調子が悪いときは避けたほうがいいかも知れない。