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砂場

本の感想と日記。些細なことを忘れないように記す。

素晴らしい本から読んだ時間を返せという本まで今年は73冊の本を読んだ。順調にいけば『「批評」とは何か?』佐々木敦、『TAP』グレッグ・イーガンも年内に読み終える予定。序盤は本屋大賞関連の本を読み、その後は古典をのんびり読んでいたら、後半からは急遽新刊を沢山読まなくてはいけない事態になった一年間。我が子が寝た隙に本を読むという、あまり読書向きではない環境で我ながらよくがんばった。こうして見るといつになく新旧、和洋のバランスがとれたラインナップ。読んだ作品のレベルも僕の読書人生の中で過去最高ではないかと思う。

今年のお気に入りのは、北斗の拳みたいな荒廃した世界を父と息子が歩き続ける『ザ・ロード』、様々な人の1日を上空から見ているかのように描いた群像劇『かもめの日』、3つの異様な物語が加速しながら収束するSF小説『ライト』。物語が終わるということは、物語が始まることと同じ意味なのだと改めて思い知らされる3冊。

ザ・ロード
コーマック・マッカーシー
早川書房
発売日:2008-06-17

かもめの日
黒川創
新潮社
発売日:2008-03

ライト
M・ジョン・ハリスン
国書刊行会
発売日:2008-09




2008年に読んだ本の全タイトル73

■フィクション
『首無の如き祟るもの』三津田信三
『空を引き寄せる石』蜂飼耳
『悪人』吉田修一
『無間道』星野智幸
『赤い糸』メイ
『私の男』桜庭一樹
『カシオペアの丘(上下)』重松清
『乳と卵』川上未映子
『異邦人』カミュ
『土曜日』イアン・マキューアン
『八日目の蝉』角田光代
『アムステルダム』イアン・マキューアン
『ペスト』カミュ
『プレーンソング』保坂和志
『ラットマン』道尾秀介
『箱男』安倍公房
『贖罪』イアン・マキューアン
『クビキリサイクル』西尾維新
『オブ・ザ・ベースボール』円城塔
『断食芸人』カフカ
『両手いっぱいの言葉』寺山修二
『カラマーゾフの兄弟』ドストエフスキー
『木曜日だった男』チェスタトン
『さよなら渓谷』吉田修一
『終わりは始まり』中村航・フジモトマサル
『グ、ア、ム』本谷有希子
『ザ・ロード』コーマック・マッカーシー
『ゆん』山本精一
『ハローサマー、グッドバイ』M・コーニィ
『マイナス・ゼロ』広瀬正
『ひゃくはち』早見和真
『ギフト』日明恩
『桜島・日の果て』梅崎春夫
『カラスの親指』道尾秀介
『ノック人とツルの森』アクセル・ブラウンズ
『かもめの日』黒川創
『曲芸師のハンドブック』クレイグ・クレヴェンジャー
『優雅なハリネズミ』ミュリエル・バルベリ
『告白』湊かなえ
『分福茶釜』細野晴臣
『誰かが手を、握っているような気がしてならない』前田司郎
『記憶に残っていること』堀江敏幸編
『Ctの深い川の町』岡崎祥久
『地図男』真藤順丈
『モダンタイムス』伊坂幸太郎
『ことば汁』小池昌代
『ライト』M・ジョン・ハリスン
『庵堂三兄弟の聖職』真藤順丈
『ミスター・ミー』アンドルー・クルミー
『幻影の書』ポール・オースター
『星のしるし』柴崎友香
『小銭をかぞえる』西村賢太
『ギンイロノウタ』村田沙耶香
『草祭』恒川光太郎
『ミュージック・ブレス・ユー』津村記久子
『小さな男×静かな声』吉田篤弘
『残される者たちへ』小路幸也

■ノンフィクション
『現代の貧困』岩田正美
『文化系トークラジオLife』鈴木謙介
『人生論ノート』三木清
『絶対安全文芸批評』佐々木敦
『屋上への誘惑』小池昌代
『世界はもっと豊かだし、人はもっと優しい』森達也
『三国志男』さくら剛
『叱り叱られ』山口隆
『不可能性の時代』大澤真幸
『読書の腕前』岡崎武志
『新・文学入門』岡崎武志・山本善行
『ゼロ年代の想像力』宇野常寛
『こんな日本でよかったね』内田樹
『サブカル・ニッポンの新自由主義』鈴木謙介
『マンガは変わる』伊藤剛
『偶然を生きる思想』野内良三
『プルーストとイカ』メアリアン・ウルフ
今頃になって昔の書評をまとめる作業。

ノック人とツルの森 (Modern&Classic)
アクセル・ブラウンズ
河出書房新社
発売日:2008-08-07

ネグレクトの母親と共に、ガラクタに埋もれた屋敷で暮らす少女。家族以外の人間は「ノック人」だから信用するなという母親の言葉に従って孤独に生きている。少女ならではの内に閉じた世界観によって、まるでおとぎ話のような独特な雰囲気がある。重いテーマだが、社会問題を扱った小説ではなく、現代を生きるひとりの少女の成長物語。

かもめの日
黒川創
新潮社
発売日:2008-03

長編なのに短編小説のような切れ味がある群像劇。それぞれの1日の出来事が鮮やかに切り取られる。人と人とがゆるやかに繋がって、視点が移っていく。物語は終焉を迎えることなく、終焉と思ったものは始まりとなる。その人の全てを理解することなどできないという前提で、けれどその人のことを思うことのかけがえのなさが胸に沁みる。

曲芸師のハンドブック
クレイグ・クレヴェンジャー
ヴィレッジブックス
発売日:2008-04

不定期に訪れる強烈な偏頭痛。その痛みをやわらげるため、過剰に薬物を摂取して病院に担ぎ込まれる。そこで受ける精神鑑定で、常習犯であることを隠し、正常と診断されるために主人公は「曲芸」を使う。医者のカウンセリング技術を完全に把握していて、あらゆる会話を計算し尽くして答える。この精神鑑定の息詰まる駆け引きと、文書偽造という「曲芸」を使って生き延びてきた主人公の波乱の人生が平行して描かれる。文書を偽造し、自分を偽造する主人公の「曲芸」は鮮やかであるがゆえに、その人生は痛ましく悲しい。

優雅なハリネズミ
ミュリエル・バリエリ
早川書房
発売日:2008-10-09

日本大好きのフランス人が書いてベストセラーになったという哲学小説。いかにフランスで日本文化が好まれているか、どのように日本文化が解釈されているかなど、興味深い。日本人が知らない日本に驚きの内容。コージー系が好きな人向け。

告白
湊かなえ
双葉社
発売日:2008-08-05

話題の本。『そして粛清の扉を』みたいに、担任教師が生徒に復讐するだけの物語かと思いきや、章ごとに主人公が生徒やその母などに毎回変わり、前章までに描かれていた物語が視点を変えればまったく違う意味を持つ物語へと書き換えられていく。それは読者の持つ、善悪に明確に分けられないボーダーライン上の道徳観を揺さぶってくる。「どこまでが許されるのか」。それは自分自身がその相手にどこまで共感できるかという、きわめて主観的な判断に依存していることを身を持って思い知らされる。次回の本屋大賞ベスト3入りは手堅い傑作。

細野晴臣分福茶釜
細野晴臣
平凡社
発売日:2008-06-03

細野晴臣が鈴木惣一朗を聞き手に、人生や音楽について語るという内容。重鎮とは思えない軽妙な語り口。様々な苦労を重ねた上での飄々として人生観。とにかく会話が楽しそうなのが読んでいて気持ちいい。飲尿療法と快便の話の衝撃は後から効いてくる。

神の独白ではじまる。その声が聞こえる少女の視点になり、その姉、母、父と視点が入れ替わりながら物語が進んでゆく。日常はくだらなさに溢れている。真剣な問題とは馬鹿馬鹿しい問題と表裏一体であり、そのくだらなさの中でグダグダになりながらも、生きることに懸命な人の姿が描かれていく。ここでは、真理や真実の権化である神すらも、そのくだらなさに飲み込まれて、グダグダになる。真剣な問題がくだらなさに飲み込まれるというのは前田司郎の小説に一貫して描かれるテーマだ。そのくだらなさとグダグダの中にこそ生きている手触りと実感を見出して行く。


ブログからの書籍化。ほとんど読んでいるものだったが、それでもやっぱり面白い。
年末はランキング本がたくさんでるので本代がたいへんです。


2005年のロケットボーイズ (双葉文庫)
五十嵐貴久
双葉社
発売日:2008-11-13

フルタイムライフ (河出文庫) (河出文庫)
柴崎友香
河出書房新社
発売日:2008-11-04

神曲 地獄篇 (河出文庫) (河出文庫)
ダンテ
河出書房新社
発売日:2008-11-04

アンボス・ムンドス―ふたつの世界 (文春文庫)
桐野夏生
文藝春秋
発売日:2008-11-07

シャイロックの子供たち (文春文庫)
池井戸潤
文藝春秋
発売日:2008-11-07

知に働けば蔵が建つ (文春文庫)
内田樹
文藝春秋
発売日:2008-11-07

百年の誤読 (ちくま文庫)
岡野宏文
筑摩書房
発売日:2008-11-10

神も仏もありませぬ (ちくま文庫)
佐野洋子
筑摩書房
発売日:2008-11-10

Presents (双葉文庫)
角田光代
双葉社
発売日:2008-11-13

日暮らし〈上〉 (講談社文庫)
宮部みゆき
講談社
発売日:2008-11-14

日暮らし〈下〉 (講談社文庫)
宮部みゆき
講談社
発売日:2008-11-14

日暮らし〈中〉 (講談社文庫)
宮部みゆき
講談社
発売日:2008-11-14

バスジャック (集英社文庫)
三崎亜記
集英社
発売日:2008-11

国家と神とマルクス  「自由主義的保守主義者」かく語りき (角川文庫)
佐藤優
角川グループパブリッシング
発売日:2008-11-22

城のなかの人 (角川文庫)
星新一
角川グループパブリッシング
発売日:2008-11-22

白の鳥と黒の鳥 (角川文庫)
いしいしんじ
角川グループパブリッシング
発売日:2008-11-22

書きあぐねている人のための小説入門 (中公文庫)
保坂和志
中央公論新社
発売日:2008-11

旅行けばネコ (新潮文庫)
岩合光昭
新潮社
発売日:2008-11-27

ティファニーで朝食を (新潮文庫)
トルーマン・カポーティ/村上春樹訳
新潮社
発売日:2008-11-27

うそうそ (新潮文庫 は 37-5) (新潮文庫)
畠中恵
新潮社
発売日:2008-11-27

社会学系の本が充実。


元職員
吉田修一
講談社
発売日:2008-11-05

電化製品列伝
電化製品列伝
講談社
発売日:2008-11-05

小さな男 * 静かな声
吉田篤弘
マガジンハウス
発売日:2008-11-20

古本愛
樽見博
平凡社
発売日:2008-11-20

14歳からの社会学 ―これからの社会を生きる君に
宮台真司
世界文化社
発売日:2008-11-11

〈世界〉はそもそもデタラメである (ダ・ヴィンチブックス)
宮台真司
メディアファクトリー
発売日:2008-11

街場の教育論
内田樹
ミシマ社
発売日:2008-11-15

昭和のエートス
内田樹
バジリコ
発売日:2008-11-21

歴史の〈はじまり〉
大澤真幸, 北田暁大
左右社
発売日:2008-11-17

まなざしの地獄
見田宗介
河出書房新社
発売日:2008-11-07

草祭
恒川光太郎
新潮社
発売日:2008-11

どこから行っても遠い町
川上弘美
新潮社
発売日:2008-11

四とそれ以上の国
いしいしんじ
文藝春秋
発売日:2008-11

光
三浦しをん
集英社
発売日:2008-11-26

読んでいない本について堂々と語る方法
ピエール・バイヤール
筑摩書房
発売日:2008-11-27

いつかソウル・トレインに乗る日まで

ファミリーポートレイト
ファミリーポートレイト
講談社
発売日:2008-11-21

北緯14度
絲山秋子
講談社
発売日:2008-11-21

光の曼陀羅 日本文学論
安藤礼二
講談社
発売日:2008-11-22

おじさんは白馬に乗って
高橋源一郎
講談社
発売日:2008-11-22

単行本なら悩むのに、文庫はついつい買ってしまう。


狂気の偽装―精神科医の臨床報告 (新潮文庫 い 84-2)

ボディ・アンド・ソウル (河出文庫 ふ 5-1)
古川日出男
河出書房新社
発売日:2008-10-03

うなぎのダンス (河出文庫 い 20-1)
いしいしんじ
河出書房新社
発売日:2008-10-03

澁澤龍彦書評集成 (河出文庫 し 1-52)
河出書房新社
発売日:2008-10-03

ホームタウン (幻冬舎文庫 し 27-1)
小路幸也
幻冬舎
発売日:2008-10

文学概論 (講談社文芸文庫 よD 16)
吉田健一
講談社
発売日:2008-10-10

子午線を求めて (講談社文庫 ほ 29-2)
堀江敏行
講談社
発売日:2008-10-15

社交ダンスが終った夜に (新潮文庫 フ 15-6)
レイ・ブラッドベリ
新潮社
発売日:2008-10-28

さがしもの (新潮文庫 (か-38-4))
角田光代
新潮社
発売日:2008-10-28

ボン書店の幻―モダニズム出版社の光と影 (ちくま文庫 う 31-1)

ねじ式,夜が掴む (ちくま文庫 つ 14-1 つげ義春コレクション)

ママの狙撃銃 (双葉文庫 お 23-5)
荻原浩
双葉社
発売日:2008-10-16

灰色のピーターパン―池袋ウエストゲートパーク6 (文春文庫 い 47-10)

いい加減にしろよ(笑) (文春文庫 ひ 12-6)
日垣隆
文藝春秋
発売日:2008-10-10

明るい夜 (文春文庫 く 30-1)
黒川創
文藝春秋
発売日:2008-10-10