不器用な私の愛し方


これから先 何があっても しっかり生きて行く


いつかもう一度 あなたに会える時を夢に見て


日々を過ごしていく



強い私になったら 会いに行く


今の気持ちを忘れないための 誓いのリング


いつも身に着けている


こんな生き方を選んだ私を いつか許して


あなたを守りたかった それだけを考えた


でも あなたを傷つけてしまった


暗い闇の中に一人 残してきたようで いつも心配だった




何かに取りつかれたように 日々の仕事をこなし


疲れた身体は 考えることすらさせず 眠りを誘う


こんな日々を過ごしていて大丈夫?


ふと自分に聞きたくなる


このままずっと 会いに行けないんじゃないの?


誓いのリング 今も同じ場所で 私を見ている


でもね・・少し疲れたかも?







「ゴメンね、待たせちゃって。」


「いいさ。」


いつも麻衣が待っていてくれた。


そんなことを考えながら麻衣の帰りを待っていた。


「忙しいんだろ。


麻衣の小説読んだよ。


もっと早くに読んでいれば、今はきっと違っていたかもな。」


「どうだろう・・。


私、いろんなことがわからなくなってるの。


例えば、何のために書いているのかとか・・。


それは多分、好きだからなんだと思う。


でも、尚がいるから書けるんだ。


一緒にいる時も離れて暮らすようになっても、尚を好きだという私の心がいつも変わらずある。」


「麻衣、俺はオマエのことを傷つけてしまった。


今更こんなことを言う俺の神経を疑うかもしれないけど、やっぱり麻衣でなければダメなんだ。」


「尚、その言葉だけで十分。」


「それが麻衣の答えなのか?


今も俺を・・、そう言ってくれたじゃないか。


始めからやり直そう。」


「彼女はどうするの。


尚のことを本気で愛してるのよ。


彼女を傷つけることになるのよ。」


「それは仕方がないことだよ。


俺は、麻衣がいいんだから。」


「本当に勝手な人ね。


いつか尚が言ったんだよ。


『彼女を好きになったんだ』って・・。


だから私は自分がラクになれる道を選んだんのよ。


今まで一度も何かから逃げたことなんて無かったけど、初めて逃げる道を選んだ。


尚があんなこと言わなくたって、私はずっと気が付いてた。


尚が彼女の話もせずに黙って別れることができるズルい男だったら、今でも私は自信を持って自分の道を歩いていると思う。


だけど尚はそんな男じゃない。


その真っすぐなところは出会ってからずっと好きだった。


他にもたくさんいい所あるけど、私はそんなところが一番好きだった。


だからすごく苦しくなった。


心が泣くんだ。


尚を愛してるって・・。


でも頭がそれを否定する。


手は尚の温もりと感触を求める・・。


でも頭が彼女と暮らしている尚の姿を映し出す。


こんなことを繰り返しながら私は決心したんだから。


こんなこと尚に聞かせるつもりはなかった。


でも、このままじゃ私の気持ちが伝わらないから・・。


私は決めたんだから・・。」


「麻衣の気持ちはわかった。


じゃあ、俺の気持ちはどうなる?


俺だってオマエを・・。」


尚の言葉をさえぎって麻衣は言う。


「あの頃とは違うのよ。


二人ケンカもしたし、もう別れるって何度も口にした。


だけど、二人だけの問題だったから、仲直りも簡単だった。


今はそうじゃない。」


「俺だって、それくらいのことはわかってる。


俺のこれまで通り彼女と暮らせって言うのか?


麻衣に向かった気持ちを隠して、それこそ彼女に悪い。


彼女が納得するまで、麻衣はここで待っててくれるか?


俺が戻ってくるまで・・。」


「何を言ってるの?


これ以上もう話すことは無いわ。


帰って。


私、これから人に会う約束があるの。


準備するから・・。」


「麻衣・・。」


どんな風に思われても、もう一度、尚はそう思っていた。


どんなに格好悪くても大切なモノを失ってしまうよりはましだと思った。


「そんな尚を見たくない。」


逃げ出すように部屋を出た麻衣。


そして車を海に向かって走らせていた。


夕日が眩しい。


サングラスを手にした。


今日の麻衣には太陽の輝きがきつかった、もうすぐ日は沈む。


目を細めながらも進んでいく先に視線を移しながら走る。


普段ならそうした。


それが出来なかった。


こんな気持ちでここに来たことはなかった。


だけど、他に行く当てがなかった。



キミの好きな歌が流れているよ


一緒にライブにも行ったよね


最初は行かないと言った僕を どうしても・・そう言って


あの日 わかった気がした


なぜキミがその音楽を素晴らしいというのか


日常に溢れているたくさんの出来事が そこにはあった


『僕たちは決して特別じゃないんだ』


言葉をメロディーにのせて届けたい思い


それが真っすぐ心に浸みこんでくる


熱い思いが飛び込んでくる


一つのフレーズが頭の中で回り続ける


いつも一生懸命な姿に 心を奪われる


彼らの日常なんて 僕には知りえない世界


だけど 見えるんだよ


その音楽から 


その姿から




弱音は吐かないと決めた


キミにはもう会えないけれど


キミのいないこの世界で 僕は生きて行く


キミの大好きな音楽と一緒に 僕は生きて行く




今年ももうすぐ クリスマス


キミはいないけど 行ってくるよ


キミの好きな歌を聴きに・・







誰もが彼女を好きだった


友人として 姉のように 仲間として・・


一人の女として・・


そう思っていたのは きっと俺だけじゃない


嫉妬心に俺自身が押しつぶされそうになったこともある


一度や二度じゃない


それでも 今 こうやって 彼女の隣を歩いている


なぜだかわかるか?


ある時 わかったんだ


彼女はいつでも俺を信じている


それがどれだけ俺にとって嬉しいことか わかるか?


『隣を歩く』その意味がわかるか?


いつも一緒ってことじゃないんだ


近くにいても 離れていても いつも心の中に・・


笑顔の奥に隠している 悲しみも


はしゃぐ姿の奥に隠している 大きな覚悟も


その全部を受け止める


そして 愛しぬくと誓う





午前中、旅行会社に出かけ、帰る途中、冷たい物でも飲もうと近くにある店に入った。


「草野さん。」


章吾が声をかけた。


「章吾君、今日はどうしたの?


学生してるじゃないの。」


「僕、こう見えても本業は学生ですよ。


まあ、大した勉強はしていませんけど・・。


ここ、どうぞ。」


「いいの?」


「もちろん。


一人ですから。


プラネタリュウムですか?」


「今日は違うんだ。」


「デートだったりして・・。


この前の人と。」


あれから、ずっと気になっていた。


「そんなんじゃないよ。


旅行会社にちょっとね。」


「どこか行くんですか?


あっ、この前のあの人って、友達ですか?


僕にはかんけいないことですね、すみません。」


「へ~、章吾君らしくない発言。


聞きにくいことズバズバ聞くのがキミなのに・・。」


「あれっ、遥・・。」


章吾は急いで表に駆けて行った。


そしてしばらくして・・章吾は息を切らして戻ってきた。


額からは汗が流れている。


「遥がいたような気がしたから。


追いかけたけど見失ってしまいました。」


「ねえ、章吾君、それは遥じゃないって。」


麻衣の声が聞こえているようには見えなかった。


「私、もう行くね。


じゃあ・・。」


章吾の頭の中はさっきの彼女のことでいっぱいだった。


(遥が生きている。


俺の知らない所で元気に暮らしてる。


もう一度会いたい。 


遥に会いたい。)


麻衣はマンションに帰る途中ずっと章吾のことを考えていた。


今までどうにか悲しみに押しつぶされずにきてはいたが、もう壊れる寸前だったのだ。


あの場所に連れて行ってしまったことが今の状況を生んでしまったのだろうか。