俺たち、また今回もすれ違ってしまうのか?
沙耶は眠っていたが、隼人は一睡もしないまま朝がやって来た。
今日が最後の日。
仕事が休みでちょうど良かった。
一日一緒に過ごせる。
こんな日くらい、早く起きてくればいいのに、沙耶はまだ眠っている。
二度と会えないような沙耶の言葉・・。
「沙耶、もう一日出発を延ばしたらどうだ?」
「一日延びると気持ちが揺れそうだから、夜の便で帰る。」
沙耶がはっきりと言い切る。
「そうか・・。
空港行くまでの時間、どこ行く?
何する?
今日は空港まで行かせてくれるんだろ?」
「隼人、見送りはいらないよ。
でも、少しだけこうしてて・・。」
沙耶は隼人の背中に寄り添った。
サヨナラを言わなければいけないのに、言えなかった。
涙でサヨナラなんて嫌だった。
だからこうして心の中で隼人に別れを告げた。
隼人は振り返ってもう一度沙耶をしっかりと抱きしめた。
沙耶の身に付けている桜の花の香りが隼人の心を締め付ける。
この手を離してしまったら、もう二度と会えないかもしれないという心が弾けた。
「これで最後か?
本当に最後なのか、俺たち・・。」
「私、一人で行きたいから。
ここで・・、ねっ。
ここで隼人と過ごしたこと、決して忘れない。
隼人の優しさを感じることが出来て良かった。
嫌いにはなれなかったけど、これで終わりにできるよ。
隼人を好きになって良かった。
ありがとう。」
迷いのない沙耶の姿。
「沙耶、きっとまた戻って来いよ。
俺、それまでに今よりずっとイイ男になって待っているから。」
「隼人・・、待っててくれなくていいから、幸せになって。」
沙耶の眩しい笑顔、この場所から動けない。
沙耶の足音がだんだん小さくなって、そして・・消えた。
見送りもいらないなんて、あの時と同じだった。