ドリーミング


●Karen Matheson “The Dreaming Sea”


スコットランドのバンド、カパーケリーの女性ボーカル
カレン・マシスンをフィーチャーした96年のアルバムです。
バンドのほうの音源は聴いたことがないのですが、
スコットランドの民族音楽をやってるようです。


曲調は基本的にポップな感じで
声質もしっとりしているけど明るく、聴きやすいです。
バラードも重くならずに美しくまとめ
明るい曲もはしゃぎ過ぎず微笑ましい感じで好感が持てます。


スコットランド・ゲール語で歌う曲が含まれているのですが、
歌詞の意味が全然わからない事によってある種の浮遊感があり
それがかえってプラスに作用していると思います。
意味が分かる人は全く違う聴き方をするのでしょうか。


このCDは霧のかかった湖をカヌーで進んでゆくという
ジャケットの雰囲気が気に入ってのジャケ買いでした。
写真とタイトルと音のイメージを揃えた作品作りって重要ですね。


あと、自分がそうなのですが
ファイナルファンタジー3~5くらいのゲーム音楽が好きな人に
是非お勧めしたい作品です!

濾過


●遊佐未森 roka


よく言われることですが、CDを買うときに
今ではパソコンを使って自分の好きなキーワードを検索して
リストアップされたものの中から実際に視聴して選ぶことが出来ます。
この行動はすべて自分の好きな時間に好きな分量の情報を
得ることが出来て非常に効率的です。


さらにはそのCDをパソコンに取り込み(もしくは直接ダウンロードして)
好きな順番に並べて好きなように聴くこともできます。非常に効率的です。


だがしかし!
そうやって効率的に便利に手に入れた音楽よりも
偶然出会ってしまった音楽、苦労して手に入れたCDのほうが
魅力的に感じることはありませんか?


簡単になんとなく手に入れたCDっていつの間にか
どこに仕舞ったか分からなくなって、
気がつくとすぐに手に取れる位置にあるCDは昔に手に入れた
思い入れの強いものばかりだったりしませんか?



そんな前置きで今回紹介させていただくのは遊佐未森さんのCD“roka”です。
アイルランドで録音されたらしく、現地のミュージシャンもフィーチャーして
温かみと広がりのあるサウンドが繰り広げられています。


この作品は97年2月の発売なので自分はまだ中学生、
高校受験のころに出会ったものだったと思います。


やはり当時は自宅にインターネットの環境などなく
試聴機のある都会のCDショップまで出かけるのも大冒険だった
少年にとって、最大の情報源はラジオだったのです。

もちろんテレビの歌番組もかなり見ていたのですが
その頃から流行りものの大衆向けの音楽だけでは満足できないと
感じるように変化(成長?)を始めていたようで
ラジオはそんな自分にちょうど良いツールでした。


さてその日も、いい感じの音楽が流れたらそれを保存するために
空のカセットテープをラジカセにセッティングして
ラジオを聴きつつ受験勉強らしきことをしていました。
そしてこのCDに収録された曲が流れてきて
僕はすかさずラジカセの赤くて丸いボタンを押したのでした。


アイリッシュなサウンドで色付けをしているこの作品ですが
土台となる部分では冨田恵一さん(キーボードとアレンジ)
渡辺等さん(ベース)、鈴木達也さん(ドラム)という
今でもかなり好きなミュージシャンの方々が参加しています。
自分は10年前の情報の少ないときでもそれなりに
ちゃんと好みの音を聴きわけることが出来ていたのでしょうか。


そんなわけで、自分にとって大きな存在として
今後もたまに聴くであろう作品の紹介でした。

若いカップル


●Herbie Hancock "SPEAK LIKE A CHILD"


ハービーハンコックの1968年の作品です。
計算してみたら当時彼は27歳!
大御所が作った名盤というイメージが完全に付きまとうのですが
今の僕と1歳しか変わらない年の若造の作品だったのですね。
恐るべし…。


ちなみにジャケットの写真でキスをしているカップルは
ハービー本人と奥さんらしいです。


内容はアルバムのタイトルから受ける印象より暗いイメージで
含みを持たせたリリカルさを感じました。
ピアノトリオをメインとしつつ
バストロンボーン、アルトフルート、フリューゲルホルンの
3管がバッキングにまわり効果的に雰囲気を作り出しています。


ベースはロン・カーターが弾いています。
僕はこの作品で彼の演奏が好きになりました。
ピッチが良くないという弱点がよく話題になってしまう人なのですが
(Wikipediaなどにもにわざわざ書いてあって気の毒です)
伸びのある音質でグリッサンドを多用し、うねりを生み出す
彼のプレイなしにはこの作品は成立しないと思います。


当時彼は29歳。まだ少し猶予があるので
僕も頑張ろうと思います。



お久しぶりです。

ヴォーカルのケンジです。


突然ですが、ワタクシかなり流行やらなんやらに疎い方でして、

ハヤリものを取り入れるのが随分遅い方でございます。

それでいて、根が単純なものでして、

そんな話題になるなら試してみようかなと

流行した時から「2流行」位遅れて使い始めてみると、

あんまりにも便利なもんだから他人様に

「これすげーよ!マジ画期的だぜ!」と

感動と興奮を伝えようとするのですが、

「そんなの常識だろ、おせーよ。」と返され

激しい温度差に切なくなるのが常でございます。


そんな僕なんですが、

先日初めてiTunes Storeで買い物をしてみました。

Amazonなどでネット通販で買い物することは前々からありましたが、

パッケージではなくデータのみを購入するのは初めてのこと。

できればミュージシャンのクレジットや歌詞カードなんかも欲しいとこですが

そこはネットがアホみたいに浸透してる現代ですから、ネットサーフィンしてそこいらで調達。

iTunesやiPodに入れてしまうので、インポートした後の製品はどうしても邪魔になってしまうのですよね。

なんだか悲しい話な気がしますが、テクノロジーの進化とはそういうものなのでしょう。


さて、これからが本題になるのですが

iTunesで初めて購入したのが

今回紹介するDonald Fagenの82年の作品

“The Nightfly”でございます。


本作品は世界初の完全デジタルレコーディング作品らしいのですが、

そんな当時の最先端の技術を駆使して作ってるくせに、

作品のコンセプトの核が現代批判というのが

いかにもDonald Fagenという感じでニヤリとさせられます。


Donald Fagenのルーツと言えばJazzとR&Bが挙げられることが多いですが、

このアルバムでは特にR&B的な要素が目立ち、

生楽器のリズムを重視したプロダクションや

要所要所で入ってくる絶妙なコーラスワーク等などが組み合わされ

クールではありながら肉感的な感触が生み出されていると思います。

最先端のテクノロジーで武装した肉声で歪んだ現代を批判する、

そういう音楽的なスタンスがDonald Fagen流のロマンティシズムなのではないのでしょうか?


サウンドも全く古臭くなく

肝心の楽曲も全てが名盤に恥じない素晴らしい出来です。

聴いたこと無い方は是非お試し下さい。



こんばんは、ヴォーカルのケンジです。

おそらく今年初の更新です。

今回紹介するのは、

またまたAORの名盤中の名盤として名高い、

Rupert Holmesの“Partners in Crime”(1979)です。


倦怠期真っ最中の夫婦を歌った“Escape”、

昼休みを利用して情事にふけるニューヨーカー達がテーマの“Lunch Hour”などなど、

なかなかクセのあるテーマを、独自の鋭い観察眼から生み出される言葉で紡がれ、

控えめだけれどもところどころ遊び心のある、ツボを得たアレンジが施された彼の音楽は、

成熟した耳を持った「オトナ」の音楽ファンを、

過去も現在も、そしてこれからも「ニヤリ」とさせ続けていくことと思います。


メロウさやグルーヴ等、いわゆる「それっぽい雰囲気」では、

他のAORの代表作品に見劣りしてしまうのは否めませんが、

Adult をorientしたRock、つまりオトナに向けたロック、という点では

このアルバムほどAORという肩書きが似合う作品は珍しいと思います。


とにかく歌詞が素晴らしい、オトナによるオトナのための音楽です。

是非お試しあれ。