ナイトドリーマー


●Wayne Shorter “Night Dreamer”


テナーサックス奏者、ウェイン・ショーターの1964年の作品。
ブルーノートレーベルで初の彼のリーダー作です。


アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズ、
マイルス・デイビス・クインテット、
ウェザーリポート、
V.S.O.Pクインテット、と彼は超有名なグループを渡り歩いています。
そういう活動ができるのは音楽の才能だけじゃなく
人柄も良かったのかな、と勝手に想像してしまいます。
実際はどうなのでしょう。


さてこのレコードはすべて彼のオリジナル曲で構成されています。
乱暴な意見ではありますが
やはり、40年以上前から今まで残っているようなものは
演奏技術が高いことなんてある意味当たり前で
そのレコードを好きになるかどうかは、「曲が良いかどうか」に
尽きると思います。


その点ウェイン・ショーターは素晴らしい作曲家でありプロデューサーで
独特の浮遊感やミステリアスな響きをうまく作り上げています。
彼自身のテナーの音色もその曲を表現するのにふさわしい
神秘的とも言えるような音で世界観をより広げています。


昔のドラマやバラエティーのそういうシーンでよく使われているように
ジャズのテナーサックスというと『エロい』という一般的なイメージがありますが
この人のレコードはそういう用途には使えないと思いますので

どうぞご注意ください。


池田さん



●池田聡 “至上の愛”


1992年の作品。
ピチカートファイブの小西康陽さんプロデュースです。


1曲目『ヘヴン』が田島貴男さん作曲ということもあって
田島さんが在籍していた時代のピチカートファイブに近い
自分の好きな感じのサウンドだと思いました。

そのころのアルバム『べリッシマ』が好きな人には特にお勧めです。


安易にロックにはならず、ポップといってもキラキラになり過ぎず
絶妙のバランスだと思います。


小西さんというとポップでキャッチーな女性ボーカルの
プロデュースが一般的なイメージとしては大きいのですが
こういった「男気」を表現した作品も秀逸で
改めてすごい人なのだと思いました。


そのほかにも玉置浩二さん作曲の暖かい曲や
かまやつひろしさん作曲の激渋な曲も楽しめて
お買い得でした。


アルバムのタイトル(コルトレーンの名盤)からして判りやすいのですが
ジャズ的なクールな格好よさを狙ったジャケットの
アートワークも、とても魅力的です。
内側もオシャレなので、見かけたら是非買って見てください。
(これも廃盤なので中古で!)


先生



●George Mraz “Bass lines”


チェコのジャズベーシスト、ジョージ・ムラーツをリーダーとして
トリオあるいはテナーを加えたカルテットで演奏をする97年録音作品。
チャールズミンガス、ロンカーターなど、ほかのベーシストの
作品を採り上げた面白いCDです。


選ばれた曲もジョージムラーツの書いた曲もなんだか暗いものが多くて
内向的、自省的な印象を受けます。
やはりベーシストは根暗なのでしょうか?


僕がこの中で最も好きな曲はもちろん、1曲目のジャコ・パストリアス作の
“Three views of a Secret”です。
自分の昔の話ですが、大学時代はビッグバンドのサークルで活動していて
4年生で引退する最後のライブではそれぞれフィーチャーの機会が与えられるのですが
そのとき僕が選んで演奏したのがこの曲なのです。
なので油断すると当時あったことをいろいろ思い出して
涙腺が緩んだりします。


さてそんな自分とは比較にもならない
世界最高レベルの技術でジョージムラーツ先生は
華麗な演奏を聴かせてくれます。


この人は日本で企画された微妙なピアノトリオのCDなんかでもよく演奏していて
有難いのだか勿体無いのだか、という感じがします。
もう神様なんだから健康に気をつけて、仕事も選んじゃってくださいよ!と
言いたくもなってしまいます。余計なお世話なんだろうけど。



むらさき



●ともさかりえ “むらさき。”


アイドルや女優さんのCDを馬鹿にしてはいけません。
本格派・実力派などと銘打たれたバンドの作品を聴いて何度がっかりしたことか。
そんなわけで、99年発売のともさかりえ2枚目のアルバム。
かなりの名盤です。


古内東子、椎名林檎、鈴木祥子、種ともこ、上田まり、上田知華、具島直子
(順不同・敬称略)といった豪華な女性ソングライターたちが参加。
さまざまな恋愛模様が、キャッチーなメロディと職人技のアレンジにのせて
描かれています。


ともさかさんはかなり器用に声をコントロールできるようで
古内さんの曲なんかは本人が歌ってるのかと錯覚するほど
発音の仕方が似ていて、楽しめます。
本人歌唱のデモテープをもらって練習したのでしょうか。


今では廃盤になってしまっているCDなので
売ってるところを見かけたら是非買うべきです。
軽く検索してみたところ、オークションなんかでは
中古でも定価以上で出品されていました。
(ちなみに僕はそんなことは知らずに近所のレンタル屋の中古で
¥100で買ったのですが…。)

alter ego



●Myriam Alter “alter ego”

ベルギーで活動する女流コンポーザー・ピアニスト
ミリアム・アルター97年の作品。
二管を加えたジャズクインテットでヨーロッパらしい
繊細でリリカルな作品になっています。


このCDではミリアム・アルター本人は演奏に参加せず
ピアノはケニー・ワーナーにまかせて
作曲とアレンジに専念しています。

ベースのマークジョンソンのソロから始まる
ドラムレスの2曲目"warmness"が特にメロディが美しく
これだけ何度も聴いてしまいます。


このCDもジャケットだけ見て買いました。
おそらく撮影のモデルはミリアム・アルター本人なのですが
彼女が曇りガラスの向こう側から手を伸ばしている様子が
全体的に内向的なこの作品のサウンドと合っている気がします。

(ちなみに裏ジャケットはその曇りガラスに
手だけではなく鼻を押し付けていて若干不細工な感じです!)


あまり売ってないCDだとは思いますが、

万が一どこかで思い出したら手にとって見てください。