突発性難聴専門 さいとう難聴鍼灸院です。


突発性難聴は原因不明の急性片耳難聴で、感音性難聴の代表例として増加している難病です。

ある日突然片耳の聴力が急激に低下し、単に「音が聞こえない」という聴力低下だけではなく、音の聞き取り困難や音の方向距離感覚異常、音割れや耳閉感など、様々な聞こえに関する異常症状が現れます。




図引用 https://www.nihonkohden.co.jp/ippan/audio/hearing.html


突発性難聴の詳しい原因や病態は解明されていませんが、音を感じ取る内耳の有毛細胞が何らかの原因で衰弱し、電気信号を正常に脳へと送ることができなくなったことが原因であると有力視されています。


そのため、耳鼻科では衰弱している有毛細胞の修復を行うため、ステロイドと高気圧酸素療法をメインに治療を行うのが標準治療となります。




図引用 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jibiinkoka/117/1/117_62/_pdf



こうした耳鼻科の治療で有毛細胞の修復が進めば、一般論から言えば聴力が回復したり、耳鳴りの改善がみられるはずです。

しかし実際には、耳鼻科の治療では目立った改善が見られないことが多いため、患者さんは次の選択肢の一つとして鍼灸治療を選ぶことになります。



今回は、突発性難聴の主な症状である聴力低下と耳鳴りに対して、鍼灸治療がどのような効果を与えることができるのかを解説します。





図引用 https://www.hosoda-cl.com/ear/315/



大前提として、完全に破壊された有毛細胞は再生されません。したがって、鍼灸治療に対いて「有毛細胞を再生させる」といった効果を期待することはできません。



あくまでも、どんなに聴力が低下している状態であっても、まだ有毛細胞が生きていて、修復可能な状態なのであれば聴力が回復する可能性があるという話です。




図引用 https://www.widexjp.co.jp/deafness/what/decline.html





衰弱している有毛細胞を修復するためには、そのエネルギー源となる酸素が大量に必要となります。

酸素を運ぶのは血液であり、内耳への血流を増加させ、いかに効率的に有毛細胞に酸素供給を行うかが治療のポイントとなります。


そのために必要なのは、

①内耳の血流増加
②血液の解毒(酸素運搬能力の改善)
③造血促進、酸素摂取量の増加

となります。





①内耳の血流増加

有毛細胞は内耳の蝸牛にある内リンパ腔に整列しています。有毛細胞に酸素供給を行うためには内耳への血流増加が必要です。

内耳に血液を送る動脈は、首の後ろを通過する椎骨動脈の枝からきています。




図引用  http://yakuraibos.exblog.jp/18690907/



内耳の血流を増加させるためには、椎骨動脈の流れを阻害する原因を除くことが必要です。姿勢不良による頸椎のズレや、筋肉の過剰収縮による頸椎のズレによって椎骨動脈が圧迫され、内耳への血流が低下する原因をつくります。


また、首周囲のオ血という老廃物の貯留によって正常な血流が低下し、内耳への血流低下を招くこともあります。






こうした阻害原因を鍼灸治療で除くことによって、有毛細胞への酸素供給を増加させ修復を手助けすることができると考えます。





②血液の解毒(酸素運搬能力の改善)

酸素は血液中の赤血球(ヘモグロビン)が運搬します。内耳の血流増加を行おうとしても、肝腎の血液自体の酸素運搬能力が低下していれば、結局は酸素を運ぶことができないために意味がありません。




上図は、カッピングによって体表面に浮き出たオ血(血液中の老廃物)です。オ血が体内に貯留している状態では、血液自体に酸素運搬能力が低下していることを意味するために、酸素を内耳へと運ぶことが困難になっています。


血液を解毒し、オ血を除去するためには肝臓と腎臓の解毒能力を高める必要があります。難聴患者さんは耳鼻科で処方されたステロイドや循環改善薬などを多量に服用しており、そういった毒素が肝臓と腎臓の機能低下を招く原因ともなります。

肝臓と腎臓の解毒機能を鍼灸治療で高め、オ血を除くことで、酸素運搬能力を回復させることが聴力回復には必須のことです。





③造血促進、酸素摂取量の増加

酸素を運ぶためには血液の状態を良くすることが必要ですが、新鮮な血液を作り出すことも必要です。

血液は骨髄で作られますが、胃腸で吸収された栄養素をもとに血液は作られます。胃腸の状態が悪い状態だと消化吸収がうまくいかず、造血に必要なエネルギーを得ることができません。




上図は消化吸収能力が低下した状態の舌です。この状態では胃腸の機能が弱く、造血に必要なエネルギー源を得ることができません。胃腸の状態を改善させ、造血に必要なエネルギーを得るように治療する必要があります。




また、そもそもの酸素摂取量が低下している状態では元も子もありません。難聴患者さんはストレスによって呼吸が浅いという傾向にあります。

呼吸が浅い=酸素摂取量と二酸化炭素の排出量が低下している状態では、そもそも有毛細胞に酸素を届けることができません。


呼吸機能の改善のためには肺の強化、横隔膜の動きの改善、精神的な負担の軽減など、やるべきことがたくさんあります。

こうした体全体の状態を改善させ、また患者さん自身の考え方や心のこだわりを少しづつ変化させていくことで、聴力回復につながる可能性をだすことができます。




鍼灸治療を含めた東洋医学とは、単に難聴=耳という安易な発想ではなく、体全体を診ることに意味があるのです。


そこが西洋医学とは大きく異なるところだからこそ、西洋医学では改善しなかった難聴であっても改善する可能性があるということです。



鍼灸治療には完全に破壊された有毛細胞を再生させる効果は期待できませんが、まだ有毛細胞が生きているならば、その回復を手助けして、難聴状態を改善させる可能性があるということです。









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