- ちいさなふゆのほん (世界傑作絵本シリーズ―スウェーデンの絵本)/福音館書店
- ¥1,155
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ヨレル・クリスティーナ・ネースルルンド/文
クリスティーナ・ディーグマン/絵
ひしきあきらこ/訳 福音館書店●ものがたり
冬、雪がふって嬉しいのはスウェーデンの子どもたちもいっしょです。雪の上に寝そべって天使になったり、雪をキュッキュッとふみ鳴らしたり、雪のおうちをつくったり。雪だるまを作るのもいつもの冬の楽しいこと。鼻はにんじん、腕は枝、頭には帽子をかぶせます。でもね、日本の冬を想像しながら、この絵本を読まないでほしいのです。なぜなら……。
●北欧の冬
北欧の冬は、暗くてきびしくて、とても長いのです。一日のうち、太陽が顔を見せるのはほんの少しの時間だけ。今頃の季節、朝日は8時半頃昇り、15時半頃には沈んでしまいます。冬でも明るい日本と違い、昼間でも空は暗く、冷たく寂しい空気が漂っています。あなたには想像できますか? 太陽があまり照らない国の冬を舞台にしたこの絵本。寒く暗い冬のあと、春の訪れはなにものにも代えがたい喜びだったでしょうね。
●この絵本を書いた人
ヨレル・クリスティーナ・ネースルルンドさん(1940-)。北スウェーデン生まれの作家。リンゴを愛して、リンゴの研究家としての本もあるそうです。絵を描いたのはクリスティーナ・ディーグマンさん(1959-)。ヨレルさんと組んだ絵本がいろいろあります。
絵本に登場する木Treesと花Flowers
表紙を開くと、白い雪景色が広がるページいっぱいに、いろんな形の落葉樹が目に飛びこんできますよ。
- 小さなバイキングビッケ (評論社の児童図書館・文学の部屋)/評論社
- ¥1,470
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ルーネル・ヨンソン/作
エーヴェット・カールソン/絵
石渡利康/訳 評論社
アニメで人気になった『小さなバイキング ビッケ』。あなたは、知っているかな? あらためて読んでみると、ビッケの冒険物語は、バイキングの暮らしや人柄がよくわかり、北欧の神様たちが生活に根ざしていたことなどもちゃんと伝わるように描かれています。
●バイキングって、なあに?
バイキングといえば、こわ~い海賊!? 金銀宝石を奪ったり、町を襲ったりする乱暴者のイメージがありますが、じつはすぐれた貿易商人でもありました。このことは小さなビッケが偉い領主と交渉する場面にも取り入れられています。今から一千年ほど昔、スウェーデンやノルウェーの沿岸から大海原へと出発したバイキングたち。この童話は、暴力ではなく、知恵と勇気で勝利をつかむ、小さなバイキングのおはなしです。
●ものがたり
ある日、ビッケはお父さんのハルバルと“石はこび競争”をします。知恵をしぼって、力持ちのお父さんに見事に勝ったビッケは、バイキングの族長でもあるハルバルから「次の航海に連れて行こう!」と約束してもらいます。ビッケは意気揚々とバイキング船に乗り込みますが、島に上陸したとたん、ワナにかかり、ハルバルも仲間たちもみんなつかまってしまいました。大ピンチを救ったのはビッケの賢い知恵でした。それはどんなこと?
●この絵本を書いた人
文章を書いたのは、ルーネル・ヨンソンさん(1916-2006)。スウェーデンのニーブロ生まれ。児童文学作家、ファンタジー作家。ビッケのシリーズは世界中で大人気です。
このバイキングは、スウェーデンのガムラ・ウプサラGamla Uppsalaにあるレストラン「オーディン・ボルグOdinsborg」で撮影しました。(2013年7月2日)
- みどりおばさん、ちゃいろおばさん、むらさきおばさん (世界傑作絵本シリーズ―スウェーデンの絵本)/福音館書店
- ¥1,365
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エルサ・ベスコフ/作・絵
ひしき あきらこ/訳
福音館書店●ものがたり
緑色の服を着て、緑色のじょうろや熊手で庭のお手入れをするのが好きな“みどりおばさん”、茶色の服を着て、クッキーやキャラメルなどお菓子を作るのが好きな“ちゃいろおばさん”、紫色の服を着て、バラやスミレの刺しゅうが好きな“ちゃいろおばさん”。
ある日、3人のおばさんが飼っている黒いプードルのプリックがいなくなっちゃった。おばさんたちは3本の道に分かれて探しに行きますが、いろいろなハプニングが起きて3人ともへとへとになりました。プリックはいったいどこに!?
「3人のうち、私は誰に似てるかな?」そんなことを思いながら読み進めていきたい絵本です。●この絵本を書いた人
エルサ・べスコフさん(1874-1953)。スウェーデンのストックホルム生まれ。小学校の絵の先生をした後、結婚し、絵本や挿絵の仕事を始めるようになりました。この絵本では影絵とカラーの絵とを両方描き、空想をふくらませやすい、素敵な世界を作り出しています。1952年、スウェーデンの児童書の最高賞であるニルス・ホルゲション賞受賞。その後、エルサさんの名前を冠した文学賞もつくられました。訳したのは、菱木晃子さん(1960-)。小さな時にはスウェーデンに住んでいたそう。スウェーデンの名作を見つけては日本に紹介しています。
- かたあしだちょうのエルフ (おはなし名作絵本 9)/ポプラ社
- ¥1,050
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思いがけないラストに感動する“木”の絵本
『かたあしだちょうのエルフ』
文・絵/おのき がく
ポプラ社
思いがけず心打たれる本と出会えると、その物語を書いてくれた作者に感謝したい気持ちになります。この絵本の作者、おのきがくさんにも「ありがとう」を言いたい。こんなにも、ひとのこころのかなしさを伝える物語を書いてくださって。かなしさ……いえ、「悲しい」物語ではありません。一匹のだちょうが秘めている、他者への無償の愛情。あたりまえのように他者に手を差し伸べる、深い思いやり。
ものがたり
エルフは強くて大きなオスのだちょう。子どもたちはエルフと遊ぶのが大好きでした。エルフも大好きでした。ある日、動物たちの村をライオンが襲います。みんなを助けようと戦い、ライオンを追い払いますが、エルフは片足を食いちぎられてしまいます。ケガをしたエルフはエサをとることができません。最初はエルフのところにエサを運んでくれていた、仲間の動物たちはやがて自分の生活に戻り、エルフはひとり、空腹に耐えて過ごすことになりました。どんどんひからびていくエルフ。ある日、今度は黒ヒョウが動物たちに襲いかかりました。エルフは……?
どんなに孤独になっても、命ある者は他者をいたわれるのだと、守ることができるのだとエルフの行動から知ることができます。
あとがきには、作者のおのがきさんが、まるで天から降ってきて言葉を書き写したみたいな、創作のエピソードが描かれています。この絵本は、神秘的な出来事の中から生まれた物語なのです。
- ニーベルンゲンの指環 (〔4〕) (ニーベルンゲンの指環 4)/リヒャルト・ワーグナー
- ¥1,682
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『ニーベルンゲンの指環』
1ラインの黄金
2ワルキューレ
3ジークフリート
4神々の黄昏
リヒャルト・ワーグナー/作 寺山修司/訳
アーサー・ラッカム/絵 新書館
北欧神話を題材にとった作品として、筆頭はこの『ニーベルンゲンの指環』でしょう。
今年生誕200年を迎える作曲家ワーグナーのオペラ。英雄シグルズ(ジークフリート)の物語をモチーフとした序夜から全4日間の荘厳な楽劇です。
ワーグナーは北欧神話の世界に夢中になり、26年もの歳月をかけて、このオペラを創りあげたといわれています。自分の世界に没頭する…そんな人生を私も送ってみたい。
さてこの物語。キーワードは“指環”です。
ライン川の黄金で作った指環を持つ者には無限の力が与えられるという神秘の指環。
たった一つの指環が発端となり、英雄ジークフリートをめぐる悲恋物語へと展開されていきます。
物語の合間には、魔女や妖精や鍛冶師などが出てきては問題を起こし、さまざまな登場人物が数奇な運命をたどることとなります。
不老不死のリンゴを守る女神も神ヴォーダンも、北欧神話からとられた人物です。
結局、英雄ジークフリートをめぐって起こる、愛と憎悪のやりとりは、壮絶な結末へと向かうのですが、さながら壮大なスペクタクル映画を見るようです。
寺山修司さんが訳していますが、あとがきのエッセイが秀逸です。
とくに10歳のときに体験したという、ワーグナーの曲を聴きながら死んでいった祖父のエピソードは、のちの寺山修司さんを創りあげたのではないかと思える文章です。
挿絵がアーサー・ラッカム。少々恐ろしさも感じる、神秘的かつ官能的な絵によって、一千年以上も前に描かれた北欧神話がこの世に蘇り、音楽が鳴り響くように感じられるのです。
- オオカミと氷の魔法使い (マジック・ツリーハウス (18))/メディアファクトリー
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『マジックツリーハウス 18オオカミと氷の魔法使い』
メアリー・ポープ・オズボーン著 食野雅子訳
メディアファクトリー
まだまだあります。北欧神話をインスピレーションとした本!
映画化もされた『マジックツリーハウス』シリーズ。
あらゆる時代にタイムスリップできる魔法のツリーハウスで、恐竜やマンモスのいた時代、ポンペイ最後の日、タイタニック号沈没の時など、さまざまな時代に冒険に出かけるジャックとアニー。
18巻に、氷と雪に閉ざされた北欧神話の世界に飛び込む冒険ストーリーが展開されます。
運命の女神ノルン、片目の最高神オーディン、フェンリルを思わせるオオカミ、そして、悪の存在・巨人など、北欧神話の登場人物たちが活躍します。
大声で怒鳴るコワい巨人の存在に、「生きて帰れないかもしれない!」とドキドキするようなハプニングの連続!
ところが、その巨人はじつは存在せず、ただの風の音だったことがわかります。
雪嵐のビュービューうなる声を人々は人間を痛めつける悪い巨人だと決めつけていただのです。
ここまで読んで、私はこの作家メアリー・ホープ・オズボーンさんは非常に深く物事を見つめ、本質を見抜く心をもった人だと感じました。
なぜなら、ここまでずばりと、北欧神話の悪=巨人が、嵐や大雪など“過酷な自然の象徴”だと書かれた本はほかにあまり読んだことがなかったからです。
学者たちは口を濁すように、「古代北欧の人々は厳しい自然を巨人として表現したのかもしれないなあ」と、小難しい論文の間にちらっと入れているくらいなのです。
私自身、北欧神話の本を書きながら、著者メアリーさんと同じように、「神様たちは巨人が悪いヤツって言うけれど、本当に悪い人なんだろうか。そんなに悪いことをしていないし・・・・・・。吹雪や嵐などを擬人化したものではないのか?」と思っていました。
この本は子供向けですが、深い知識とあたたかな視点で描かれた、とてもステキな物語だと思います。
メアリーさんはやさしい言葉で物語をつづりながらも、厳しい自然と闘い続ける北欧の人々の心もすくいとっているように思えます。
『北欧神話』をもっと知るための副読本としておすすめです。
- 新版 指輪物語〈1〉旅の仲間 上1 (評論社文庫)/評論社
- ¥735
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『指輪物語』
J・R・Rトールキン著 瀬田貞二訳
岩波書店
トールキンが『ホビットの冒険』の続編として書いた、あまりにも有名なファンタジー大作。
本に登場する<指輪>は、『北欧神話』に出てくる“アンドヴァリの指輪”がモデルとされています。
北欧の神々のほんのいたずら心から呪いがかけられた指輪。持つ者に不幸をもたらすという指輪は英雄たちの運命を翻弄していきます。
『旅の仲間』『二つの塔』『王の帰還』の3部作があり、壮大であまりにも長い物語。
映画『ロード・オブ・ザ・リング』で楽しむのもいいですが、トールキンの創造した世界を丹念に読んでいくと、もっと深い神秘の世界を味わえるはずです。
- ホビットの冒険 オリジナル版/岩波書店
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『ホビットの冒険』オリジナル版
J・R・Rトールキン著 瀬田貞二訳
岩波書店
作家トールキンは『北欧神話』から多くのインスピレーションを得たといわれています。現在、映画公開中の『ホビット 思いがけない冒険』にはいたるところに『北欧神話』のエピソードが散りばめられているんですよ。
●冒険のスタートで、魔法使いガンダルフがビルボの家の扉に描いた目印はルーン文字<富-フェオ>。
●一緒に旅に出る小人たちの名前は北欧神話を詩にした「巫女の予言」に登場する小人の名前がとられています。
●壮絶な戦いをすることになる竜は、『北欧神話』で黄金の欲望にかられて竜の姿と化した若者ファブニールを思わせます。トールキンが書くところによると、「千年以上たっても生きている」とあるのを読むとまさに、彼のことではないでしょうか。
<ストーリー>
穏やかな毎日を送っていた主人公ビルボ・バキンズはある日突然、魔法使いガンダルフに誘われ、13人のたちと冒険の旅に出ることになる。次から次へと襲いくる危険を切り抜け、ついにビルボは黄金の山を守る龍に戦いを挑みますが・・・。
『ホビット』は翻訳本がいくつかありますが、この本はトールキン自身が描いた挿絵があるのが嬉しい一冊です。トールキンの意図を生かすためでしょうか、横書きの文章に効果的に挿絵が差し込まれています。
★映画『ホビット』公式サイトも楽しいよ!
http://wwws.warnerbros.co.jp/thehobbitpart1/
- いちばんわかりやすい 北欧神話 (じっぴコンパクト新書)/実業之日本社
- ¥800
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『いちばんわかりやすい北欧神話』
杉原梨江子著 実業之日本社
北欧神話って、知っていますか?
今、映画公開中のファンタジー大作『ホビット』や『指輪物語(ロード・オブ・ザ・リング)』、ワーグナーのオペラ『ニーベルンゲンの指環』などのインスピレーションの源となった神話世界です。
人間は木から生まれたという創世神話をもっていて、古代北欧の樹木崇拝がベースとなっています。
天地創造から最終戦争までが描かれた古代ゲルマンの神々の物語を現代に再現した一冊です。
魔力を秘めた神秘の古代文字「ルーン文字」やルーン・ガルドゥル、魔法の指輪、勝利の宝剣……など、ファンタジー文学の礎石ともいえる魔術の数々も解説しています。
最高神オーディンの人生哲学も、心にぐさりと突き刺さる格言ばかりだと思います。
1000年以上前に作られたものとは思えないほど、現代に通じるエピソードがいっぱい。
今を生き抜く知恵が散りばめられた北欧神話の世界へどうぞ。