■民間賃貸住宅を活用した住宅確保について

(1)市営住宅の状況について

(2)住宅確保要配慮者について

(3)住宅セーフティネットについて

(4)借上げ等について

(5)民間賃貸住宅所有者について

(春日井市議会 末永けい 本会議一般質問)

末永けい

民間賃貸住宅を活用した住宅確保について伺います。
 先日,6月議会の初日に質疑を行った令和2年度春日井市一般会計補正予算では,新型コロナ感染症に伴う景気悪化,コロナショックによる解雇や雇い止め,廃業,減収などによって,住居確保が困難になる方々へのセーフティーネットとして,民生費で生活困窮者自立支援,住居確保給付金4,800万円の補正と,新規事業として一時生活支援事業400万円が盛り込まれました。住居確保給付金については,平成27年度から実施されている事業ですが,例年10件から20件程度の支給決定であったところ,今年度は5月末時点で既に50件の支給決定をされているとのことです。支給要件の緩和の影響もあるとはいえ,支給申請の申立て理由は,失職や離職によるものが25件,収入減少によるものが25件で,住居については50件全てが住居を失うおそれがあるという申立て理由であるとのことでした。
 住居確保給付金の令和2年度の支給件数の見込みは260件,新たな住宅の転居に当たっては,給付期間中,転居相談に応じたり,家賃の安価な住宅への早期転居を促すなど,情報提供を行っていく。提供する住宅情報については,市営住宅や県営住宅についての情報提供をしているとのことでした。
 また,新規事業の一時生活支援事業については,新型コロナの影響に伴い,生活困窮者の大幅な増加が見込まれ,令和2年度の支給見込み件数は50件で,住居を失った方が対象であり,新たな居所が必要となるので,一時生活居所に入居中から,市営住宅や県営住宅等の内容も含んだ安価で個人に合った賃貸物件に関する情報を提供していくとの答弁でした。
 住宅確保要配慮者の増加ないし増加の懸念がある状況に加えて,足元の悪化した景気が長引くのか,コロナの第2波,第3波が発生するのか,先行き不透明な状況ですので,住まいを維持するのに苦慮されている方々が潜在的にも相当数いらっしゃることがうかがい知れます。
 福祉部の対応については,質疑の内容で理解しましたが,生活困窮者自立支援制度は,国では厚生労働省と国土交通省の間で連携が図られています。したがって,本市においても住宅政策の観点からもしっかり見ていく必要がありますし,福祉部と住宅部局で連携を強化していただくように要望します。
 そこで,本市の住宅の需給状況についてはどのようになっているのかといえば,平成25年以降,愛知県より高くなり,急速に上昇している本市の空き家率について,さきの3月議会で議論をさせていただきました。そのやり取りの中で,平成30年住宅土地統計調査によると,平成30年の本市の住宅総数に占める「その他空き家」の割合,本市の空き家率については,平成25年以降,愛知県を超え,平成25年から平成30年の間で,国や県の増加率を上回っておりますが,その要因について,市当局の分析としては,空家特措法の対象としない共同住宅等の空き室が1,200戸増加しており,法の対象となる「一戸建て空き家」に大きな増減はないとのことでした。
 また,本市のまち・ひと・しごと創生総合戦略(第1期)のKPIでもある空き家率の平成30年目標値は3.94%であったところ,実績値は4.66%と,未達成となった要因についても,共同住宅等の空き室が1,200戸増加したことが影響しているとの答弁もありました。したがって,共同住宅等の空き室(民間住宅ストック)の有効活用は,本市の課題であるということです。
 共同住宅の空き室が増加している状況ですので,今後はむやみに市が自前で市営住宅を建設するのではなく,政策の目的はあくまでも住宅確保要配慮者が適切に住宅を確保できる状態にすることであり,その目的が達成できるように民間住宅ストックも有効に活用するという視点で取組を進めていくべきであります。
 市営住宅や県営住宅だけでなく,立地など住まいの選択肢は多いほうがよいと思われますし,入居を拒まれない住宅が一定数市内に存在することは,本市のセーフティーネットとして大変意義のあることと思います。
 そこで,小項目1,市営住宅の状況についてです。
 福祉部からも案内しているとしている市営住宅についてお尋ねします。現在の管理戸数と入居状況,昨年度の応募状況(倍率),入居できなかった方へはどのように対応しているのかお尋ねします。
 (2)住宅確保要配慮者についてです。
 現在,市では,市営住宅総合再生計画(令和2年4月改定)で,市営住宅の整備の考え方を示しており,721戸の市営住宅を管理していくとしています。
 市営住宅の整備は,低所得者や高齢者,障がい者などの住宅確保要配慮者の将来的な推移を把握しながら進める必要があります。と申しますのも,愛知県では,令和2年3月に策定した愛知県営住宅長寿命化計画において,公営住宅の施策対象となる著しい困窮年収未満世帯は,今後30年間で約2割減少すると推計しており,30年後の県営住宅の管理戸数について,現状より1割から2割削減を目標としたのです。
 そこで,本市では,そういった世帯の数が今後どうなっていくのか,市は将来推計を行っているのか伺います。
 続いて,(3)住宅セーフティーネットについてです。
 高齢者世帯や子育て世帯などの住宅確保要配慮者の増加に対応するため,国は,住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律,通称住宅セーフティーネット法を改正し,民間賃貸住宅や空き家を活用した住宅確保要配慮者向け住宅の登録制度等を創設しました。この新たな住宅セーフティーネット制度は平成29年に施行されていますが,主に住宅確保要配慮者向け賃貸住宅の登録制度,登録住宅の改修や入居者への経済的支援,住宅確保要配慮者の居住支援から成り立っています。定額所得者や高齢者,障がい者などの住宅確保要配慮者の入居を拒まない民間住宅,いわゆるセーフティーネット住宅について,県は愛知県賃貸住宅供給計画(平成31年3月)において,2025年度までに県内の供給目標を1万戸にするとしています。
 そこで,セーフティーネット住宅の登録状況について,県内と本市の現在の状況をどのように把握しているのか伺います。また,今後の方針等について,県から市に何か示されているのか伺います。
 続いて,(4)借上げ等についてです。
 市は,これまで市営住宅を自前で建設してきましたが,その一方で,民間において空き家や空き室が増加しています。市が民間住宅を借り上げて市営住宅として管理していくことは,市営住宅総合再生計画にも示されていますが,現在の本市の借り上げ住宅の状況について伺います。
 続いて,(5)民間賃貸住宅所有者についてです。
 市内に民間の賃貸共同住宅は何棟あるのか。また,所有者は何人なのか。把握状況を伺います。

まちづくり推進部長(大島常生君) 私からは,大項目1の民間賃貸住宅を活用した住宅確保についての御質問に順次お答えいたします。
 初めに,市営住宅につきましては,10団地594戸を管理しており,令和2年3月末の入居戸数は532戸です。
 昨年度の応募状況につきましては,27戸の応募に対し174世帯の申込みがあり,倍率は6.4倍で,抽せんで入居できなかった方には県営住宅等を紹介しています。
 次に,著しい困窮年収未満世帯数の将来推移につきましては,市は把握しておりませんが,令和2年4月に改定しました春日井市市営住宅総合再生計画で,市営住宅で支援する主に低所得者を対象とした要支援世帯数は,平成28年度から令和7年度までの10年間で360戸としています。
 次に,セーフティーネット住宅は,低所得者だけでなく,高齢者や障がい者なども対象とする住宅確保要配慮者の入居を拒まない住居として,民間住宅の賃貸人が所有する住宅を,県や政令市等に登録するもので,平成29年10月から開始された制度です。現在,本市はセーフティーネット住宅の登録はありませんが,県内には約2,000棟,約1万4,000戸の登録があります。また,県から今後の整備方針など,具体的な通知はありません。
 次に,借り上げ住宅につきましては,本市は市営住宅を10団地管理していますが,民間住宅を借り上げて市営住宅として管理している住宅はありません。
 次に,市内の民間賃貸共同住宅につきましては,令和2年3月末で,棟数は約5,600棟,所有者は約3,600人です。

末永けい

(1)の2回目に入ります。
 市営住宅の応募倍率6.4倍という状況とのことで,6.4倍という数字をどう見るかですが,やはり市営住宅の趣旨として,住宅確保要配慮者に住宅を供給するものですので,その倍率だけ見れば相当数の方が落選しているわけで,高いニーズがあるという見方もできると思います。
 そこで,現在の市営住宅の応募倍率についてどのように分析されておられるのか伺います。
 また,入居できなかった世帯の方には,県営住宅等を紹介しているとのことです。紹介先では,入居戸数は確保されている状況なのでしょうか。お尋ねします。

まちづくり推進部長(大島常生君) (1)の2回目の御質問にお答えいたします。
 市営住宅の入居審査は,申込みのあった全ての世帯を審査するものではなく,抽せんで入居が決定した世帯のみを審査しています。したがいまして,申込みのあった全ての世帯が所得などの入居条件に適合していたかは分かりませんが,住居に困窮しているというよりは,応募物件の立地環境や現在の家賃を比較され応募される方もおられる状況です。なお,紹介先の県営住宅は常時募集を行っていることからも,入居機会は確保されていると考えています。

末永けい

(1)の3回目に移ります。抽せんの結果,市営住宅に入居できなかった方の動向については把握されておられるのか伺います。
 また,抽せんに外れた方から,住まいがないといったような声はなかったのかについて伺います。

(1)の3回目の御質問にお答えいたします。
 市営住宅に入居できなかった世帯について,その後の状況は把握していません。また,住むところがなくて困るといった声も寄せられていません。

末永けい

(2)の2回目です。
 市の市営住宅総合再生計画で,市が対応すべき要支援世帯数を360戸としている根拠は何なのかについて伺います。

まちづくり推進部長(大島常生君) (2)の2回目の御質問にお答えいたします。
 要支援世帯数につきましては,平成28年度から令和7年度までの10年間で,公営住宅で支援していく要支援世帯数を,市内で1,380世帯とし,その世帯数を市営住宅と県営住宅の管理戸数の比率で案分したものです。

末永けい

(2)の3回目です。
 御説明のように,市営住宅総合再生計画の中で,要支援世帯数を推計値によって導き出しています。しかし,市営住宅総合再生計画の令和2年4月の改定で,市は当初の計画よりも多い市営住宅の戸数を自前で建設していくことにしました。
 自前で建設した市営住宅は,今後長期で維持管理コストが必要となります。人口減少の動向や,仮に県のように困窮年収未満世帯数が減少するという見通しであれば,市として要支援世帯数や維持管理すべき市営住宅の数についても精査が必要になるでしょうし,はたまた今回のような景気悪化も起きますので,今後,市営住宅の長期的な維持管理戸数については,現在計画に示している戸数にとらわれず,生活困窮者などの将来推計や社会経済情勢,市民ニーズの変化等を捉えて,柔軟な対応が求められると思いますが,市の所見を伺います。

(2)の3回目の御質問にお答えいたします。
 将来の整備戸数につきましては,令和5年度から入居を開始します第2期下原住宅119戸の応募状況を見ながら,国や県が示したデータ等も参考とし,整備戸数を検討してまいります。

末永けい

(3)の2回目であります。
 新たな住宅セーフティーネット制度が開始されて3年目に入っておりますが,人口31万人を超える本市で,なおかつ空き家率が県を上回っている本市において,セーフティーネット住宅として登録されている件数がゼロ件というのは,あまりにも寂しいと感じました。
 セーフティーネット住宅として登録されている住宅がいまだに本市にないことについて,その要因をどのように考えますでしょうか。伺います。

まちづくり推進部長(大島常生君) (3)の2回目の御質問にお答えいたします。
 県内に登録されている住宅のうち,約97%が名古屋市内の住宅となっており,一部の市に偏っていることから,セーフティーネット住宅の制度が十分に周知されていないことも要因の一つと考えられます。

末永けい

(3)の3回目です。
 住宅セーフティーネット制度が住宅の所有者に十分に周知されていないことが,要因として大きいと私も考えております。
 現行の市営住宅総合再生計画の考え方では,市が借り上げするという方針が示されていますが,借り上げにせよセーフティーネット住宅にせよ,大事なことは住宅確保要配慮者に適切に住宅が供給されている状態をつくることであり,かつ民間住宅が有効活用されることも重要だと思います。
 福祉部からは市営住宅や県営住宅を案内しているという話もありましたが,要配慮者にとっても市営住宅と民間住宅では立地なども異なるわけで,住まいの選択肢の幅が広がることはいいことであると思います。つまり,市内にセーフティーネット住宅の登録が広がっていくことはよいことだと思いますが,市はどのように考えておられるのか,所見を伺います。
 また,登録が広がるよう,市としても何かしら取り組めることはないのか伺います。

(3)の3回目の御質問にお答えいたします。
 県内のセーフティーネット住宅の設置数は,既に目標値を達成している状況であることからも,直ちに市内に整備が必要とまでは考えておりませんが,今後,国や県の動向などを注視してまいります。

末永けい

(4)の2回目であります。
 令和2年度4月に改定した春日井市市営住宅総合再生計画では,借り上げによる市営住宅の整備戸数を60から37戸と変更し,スケジュールも平成29年度から令和6年度に見直ししています。
 開始年度を令和6年度と遅らせた理由について伺います。

まちづくり推進部長(大島常生君) (4)の2回目の御質問にお答えいたします。
 借り上げ住宅の整備の開始年度につきましては,今後整備します第2期下原住宅の令和5年度からの入居状況等を見極め,令和6年度からの開始としました。

末永けい

(4)の3回目です。
 新たに建設する下原住宅の入居状況等を見極めるということですが,先ほど話がありましたように,市営住宅の応募倍率は6.4倍という足元の状況があること,もともと市営住宅総合再生計画では,本市の要支援世帯数を推計した上で,市営住宅によって対応すべき戸数を導き出して,市は整備を進めていますので,借り上げ住宅のスケジュールを後に遅らせるということは,少し釈然としない部分があります。
 入居状況等を見極めるということですが,何を見極め,今後借り上げの方針を決めていくのかについて伺います。

まちづくり推進部長(大島常生君) (4)の3回目の御質問にお答えいたします。
 借り上げ住宅は県内でも実績がなく,普及が進んでいないところですが,第2期下原住宅の入居状況や,他の住宅の応募倍率の変化も見て,必要とする戸数等を判断してまいります。

末永けい

(5)の2回目に移りたいと思います。
 市内には,民間賃貸住宅が約5,600棟,所有者は3,600人とのことで,多くの所有者がいらっしゃることが分かりました。民間賃貸住宅の所有者の中には,セーフティーネット住宅の登録や借り上げ住宅に関心を持たれる方もいらっしゃると思います。市として今後の施策を検討する上で,所有者の意向を確認していくことは重要だと思われますが,今後,所有者の意向を把握していく考えについて所見を伺います。

まちづくり推進部長(大島常生君) (5)の2回目の御質問にお答えいたします。
 今後,民間住宅の活用が必要となった場合には,所有者の意向を把握できる手法の検討を進めてまいります。

 

【ご参考】

愛知県賃貸住宅供給促進計画

愛知県営住宅長寿命化計画

住宅確保要配慮者円滑入居賃貸住宅(セーフティネット住宅)制度

空き家対策(春日井市の補助金等)

春日井市空き家等対策計画

春日井市空き家等対策協議会

春日井市営住宅総合再生計画

 

【末永けい関連質問】

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