春日井市都市計画マスタープラン2020.3より)

2013年以降愛知県より高くなり急上昇している本市の空き家率について、要因分析や不動産の需給状況、今後の対応策について市の認識をただしました。(春日井市議会本会議一般質問)

末永けい

 先般,平成30年の住宅・土地統計調査の結果が明らかになり,春日井市都市計画マスタープランには,本市の空き家率の推移について掲載されまして,住宅を初めとする民間のストックの活用を意識した都市経営が求められている時代背景の中,空き家の状況をまちづくりのデータとして都市マスに記載していただいたことは大変よかったと思います。
 都市マスの中では,「本市の空き家率は,全国よりも低くなっているものの,平成30年から空き家率の増加が顕著であり,平成25年以降,愛知県よりも高くなっています。」と記載されていますが,私が注目したのは,平成25年以降,空き家率が愛知県よりも高くなっていることはもとより,空き家率の上昇率が国や県よりも顕著であることです。平成25年と比べて,国はプラス0.3%,県はプラス0.2%であるところ,本市はプラス0.8%となりました。さらに遡って平成20年と比較すると,国はプラス0.9%,県はプラス0.5%,本市はプラス1.3%になっております。
 空き家の増加は,地域の周辺住環境に悪影響を及ぼし,エリア価値の低下につながるおそれがあります。高度成長期に一斉に開発された住宅団地などにおいて,住宅の老朽化や相続問題が同時期に集中して出てくることや,空き家が虫食い的に発生するいわゆる「都市のスポンジ化」によって,十分な生活インフラ,公的サービスの維持に多大なコストがかかることは,今後の都市経営において大きな懸念材料です。空き家率の上昇傾向が加速しないように,危機感を持って対応に当たらないといけない状況下にあることを,まず共通認識を持たなければなりません。
 その一方で,本年4月から,市当局では組織改正を行います。空き家等対策に関する事務は環境部からまちづくり推進部へ,住宅に関する事務は建設部からまちづくり推進部へそれぞれ移管され,空き家問題については新設の住宅政策課においてまちづくりの観点で取り組みが行われるとのことで,その方向性については賛意を示すところであります。
 本市の現行の住宅政策は,市内で多くの空き家・空き室が発生し,市営住宅の申込倍率が8倍という状況にもかかわらず,市営住宅総合再生計画における借り上げ住宅の実施スケジュールは予定よりも繰り下げ,借り上げ住宅の戸数も削減し,いまだに住宅の借り上げは未実施でありながら,公費による市営住宅の整備は相変わらず盛んに行っており,矛盾したところがあります。こうした齟齬が直ちに改められることを強く期待しています。
 ほかにも,居住誘導区域の空き家活用の方策を具体化することができれば,立地適正化計画のコンパクトシティ・プラス・ネットワークを推進させることができます。空き家問題を新しい時代に求められるまちづくりを行う契機と捉えることもできるかもしれません。
 それから,本市の空き家等対策計画について,他市のものと比べると,しっかりとつくり込みがされていない点も指摘しておかなくてはなりません。具体的には,市内各地区の住宅に関するデータの整理や分析が不十分であったり,施策に係る目標値も設定されておらず,進行管理ができていません。施策立案に活用できるように,必要なデータをしっかり収集・分析し,課題の洗い出しを行い,新設する空き家対策協議会や市民に情報共有しながら,さまざまな角度から検討して,実効性のあるプランを策定していただきたいと思います。空き家等対策計画は,市民の皆様の生活や財産を守るだけにとどまらず,市全体のエリア価値に影響するという認識を持って取り組まれることを期待いたします。
 そこで,今回の一般質問では,現行の空き家計画では足りない視点などを中心に取り上げ,今後の空き家計画改定や施策の方向性について課題提起するために質問を行います。
 そこで,(1)住宅の需要と供給の推移について。
 平成28年2月策定の本市の現行の「空き家等対策計画」では,このように記載があります。「名古屋市に隣接しており,鉄道や高速道路などの交通アクセスにも恵まれていることから,住宅需要が高く,新設住宅着工件数も市内で年2,000戸を超えるペースで推移しています。」とされています。平成28年当時,住宅需要が高いというふうに評価した根拠と,近年,平成25年から30年の本市の住宅需要,住宅需給の状況はどのようになっているのかお尋ねをいたします。
 続いて,(2)実態調査についてです。
 市では,空き家の実態調査を進めていますが,空き家実態調査の調査目的,調査区域の決め方,これまでに市が把握した空き家情報の件数をお伺いします。
 続いて,(3)分布状況(地区別,建築年次)について伺います。
 空き家等対策計画の改定に当たっては,市内の各地区別に空き家の分布状況を把握すべきであり,空き家の建築年次,高齢者世帯の状況などはどのように把握されておられるのかお尋ねをいたします。
 続いて,(4)要因分析についてであります。
 平成30年住宅・土地統計調査によると,平成30年の本市の住宅総数に占める「その他空き家」の割合,空き家率については,平成25年以降,愛知県より高くなり,平成25年から平成30年の間で国や県の増加率を上回っておりますが,その要因をどのように分析されておられるのかお尋ねをいたします。
 続いて,(5)空き家予備軍についてであります。
 高齢者のひとり暮らし世帯は,将来的に空き家になる可能性が高く,いわゆる「空き家予備軍」とも言われています。高齢者のひとり暮らしの世帯数と全世帯に対する割合,また,戸建て住宅に住んでいる高齢者のひとり暮らし世帯数と戸建て総数に対する割合について,本市はどのような状況なのかお尋ねをいたします。
 続いて,(6)空き家等対策の目的と目標値・指標について伺います。
 現在,空き家等対策について様々な取り組みがなされていますが,本市の空き家等対策の目的と,実施している施策の進捗管理を行うための指標や目標値の設定,その達成状況についてお尋ねをいたします。
 続きまして,(7)空き家等対策と立地適正化計画との整合性についてです。
 コンパクトシティ・プラス・ネットワークを掲げる立地適正化計画では,居住誘導区域における誘導施策として,「空き家,空き部屋の活用」とありまして,具体的に,「新たな定住先を探す若い世代等に,空き家バンク等の活用により空き家や空き部屋等の既存住宅が円滑に活用されるように取り組みます」と記載されております。令和2年度から,まちづくり部門で空き家対策を所管することになりますので,立地適正化計画に記載のとおり,空き家等対策の各種取組について立地適正化計画との整合性を図るために,特に居住誘導区域への誘導策を具体的に実施する考えについて所見をお尋ねします。
 続いて,(8)空き家バンクについてであります。
 私は平成30年7月に一般質問を行い,ニュータウン空き家バンクの実績についてお尋ねをしておりまして,当時,空き家バンクの登録件数は2件で,空き家バンクを通じた成約及び工事に至った実績はないとの回答でした。私は,ニュータウンよりも市全域のほうが空き家率が高く,空き家バンクについては,ニュータウンだけではなく市全体でしっかりしたスキームを構築するべきであり,速やかに全市的な取り組みとすべきだと当時提案をしております。
 そこで,お尋ねですが,ニュータウン空き家バンクは,運用を開始してから今日に至るまでにどのような成果を上げたのか,登録件数や成約件数について改めてお尋ねをいたします。

環境部長(大橋弘明君)

 初めに,小項目1についてですが,計画策定当時の住宅需要につきましては,毎年2,000戸以上が新築され,世帯数も毎年約1,500世帯増加していることから,「住宅需要が高い」としました。近年も同様な状況にあることから,住宅需給はあるものと考えています。
 次に,小項目2の実態調査につきましては,空き家所有者を把握し,適正管理や意向調査を行うため実施しています。調査区域につきましては,駅周辺を中心とした市街化区域内で,水道が閉栓された建物を空き家候補とし,平成29年度から実施しています。平成29年度と30年度に702件を調査した結果,269件を空き家として把握し,別途,市への苦情や相談で把握できた件数と合わせると,総数は569件となっています。
 次に,小項目3についてですが,市内全ての空き家分布状況につきまして,現在は把握しておりませんが,今後の空き家等対策を検討するため,市内の住宅について,建築年次,高齢者(65歳以上)世帯の状況を地域ごとに今年度取りまとめています。
 次に,小項目4についてですが,総務省統計局が実施しました「平成30年住宅・土地統計調査」によりますと,別荘や賃貸売却用以外で人が住んでいない「その他空き家」は,平成25年と比べ1,290戸増加しております。その内訳は,「空家等対策の推進に関する特別措置法」の対象としない共同住宅等の空き室が1,200戸増加しており,法の対象となる「一戸建て空き家」に大きな増減はございません。
 次に,小項目5についてですが,本市の65歳以上のひとり暮らし世帯につきましては,「平成30年住宅・土地統計調査」によりますと1万3,370世帯で,全世帯12万4,470世帯に占める割合は10.7%,一戸建て総数7万120戸に占める割合は19.1%です。また,一戸建てに住んでいるその世帯数は7,720世帯で,割合は11.0%です。
 次に,小項目6についてですが,空き家等対策の目的につきましては,良好な生活環境の保全と流通促進であり,これまでも空き家の適正管理の啓発や補助制度を活用した空き家の解体を進めてまいりました。「空き家等対策計画」では,目標値について定めておりませんが,平成28年策定の「まち・ひと・しごと創生総合戦略」で目標値として定めた「平成30年・その他空き家率」3.94%に対し,実績値は4.66%となっている状況です。
 次に,小項目7についてですが,次年度には,学識者や建築士,宅建士など専門家で構成する協議会を設置し,「空き家等対策計画」を改定する予定としております。立地適正化計画との整合につきましては,改定の中で,居住誘導区域などに対する具体的な施策についても検討してまいります。
 次に,小項目8についてでございます。平成27年度から運用を開始した「空き家バンク」につきましては,現在の登録件数は2件で,契約実績はこれまでございません。

末永けい

(1)の2回目であります。
 本市の住宅総数,それから世帯数,1世帯当たりの住宅数の増減はどのような状況になっているのかお尋ねをいたします。
 それから,1世帯当たりの住宅数の将来推計については,市としてどのような見通しを持っているのかについて伺います。

環境部長(大橋弘明君)

 「平成30年住宅・土地統計調査」によりますと,平成30年の住宅総数は14万1,500戸で,平成25年に比べ7,150戸増加し,世帯数は13万4,465世帯で,7,318世帯増加しています。
 住宅総数を世帯数で割った「1世帯あたりの住宅数」は,平成25年は1.06で,平成30年は1.05となっています。「1世帯あたりの住宅数」の将来推移につきまして,世帯数は,「国立社会保障・人口問題研究所」の調査結果によりますと,2020年から25年における愛知県での推移は横ばいであり,2030年以降は減少傾向となっています。一方,住宅総数については,将来推移を予測できる統計データを持ち合わせていないため,現在のところ,想定することは困難でございます。

末永けい

(1)の3回目であります。
 今,住宅総数を世帯数で割った1世帯当たりの住宅数は,平成25年は1.06,そして平成30年は1.05となっておりまして,その住居環境としては,かえってこの数字が高まっているような自治体もある中で,春日井市としては数字が減っていますので,住宅と世帯数のバランスというか,これはそんなに悪くないのかなとは思うんですけれども,今後,「1世帯あたりの住宅数」が高くなるようなことがあれば,住宅の供給が過多ということが言えると思いますので,先ほど御説明ありましたように,2030年以降については世帯数が減少する推計が出ております。仮に住宅総数が増えずに一定で推移したとしても,世帯数が減れば,住宅数が過多になるということになります。こうした世帯数と住宅数のバランスについては,今後もぜひ注視をしていただきたいと思います。
 それから,土地取引動向を把握をするために,「土地取引件数」の推移がどうなっているのかについてお尋ねします。

環境部長(大橋弘明君) 小項目1の3回目の御質問にお答えをいたします。
 国土交通省の「国土利用計画法に基づき提出された届出情報や登記情報に基づいた土地取引数」によりますと,平成25年は2,541件,平成30年は2,816件で,この間の平均は2,628件となっております。

末永けい

(2)の2回目に移ります。
 1回目の質問では,市は,現在569件の空き家データベースを蓄積しているということでした。
 そこで,空き家実態調査などで市が把握した空き家のデータベースについてどのように活用しているのかお尋ねをいたします。

環境部長(大橋弘明君) 小項目2の2回目の御質問にお答えいたします。
 今年度,市が把握している空き家について意向調査を実施しましたところ,提供同意が得られた20件の空き家情報について,協定団体に提供いたしました。現在,協定団体が所有者に,売買,リフォーム,解体などにつなげる提案をしているところでございます。

末永けい

(2)の3回目に移ります。
 こちらは2点お尋ねいたします。
 1点目なんですが,先日の質疑において,空き家の転用の研究について取組状況と成果をお伺いしました。町内の交流集会施設への転用の例はあるが,実績は限られているという答弁がありました。全庁的に,空き家のデータベースを民間・公共的用途などさまざまな方向で活用できるように構築しておくことは非常に重要かと思います。
 そこで,現在,どのように空き家のデータベースを構築しており,庁内でどのような共有がされているのかお尋ねします。
 2点目なんですが,現在,市として把握しているデータベースは569件とのことで,毎年,約250件ほどのペースで空き家の情報を蓄積をしてきております。推計では,市内に戸建て住宅の「その他空き家」は約3,800戸あるとされています。3,800戸の戸建て空き家に対して,毎年,新たに把握している件数は約250件ほどであり,また,空き家対策推進部会を通じて売買等を提案していくスキームの所有者の同意件数は569件中20件という御説明でしたので,空き家の総数解消を目指すには遠く及びません。したがって,より一層のスピード感を持って空き家のデータベースをふやしていく必要があると思いますが,所見について伺います。

環境部長(大橋弘明君) 小項目2の3回目の御質問にお答えいたします。
 市が把握している空き家情報につきましては,建物所有者の氏名と建物所在地を取りまとめており,個人情報に留意し,活用できる範囲で他部局への提供を検討してまいります。
 また,市内の空き家情報につきましては,今後も,実態調査に加え,民間が所有する情報も活用し,把握に努めてまいります。

末永けい

(3)の2回目に移ります。
 (3)は,分布状況(地区別,建築年次)についてお尋ねしました。今後,どういった地域において空き家の増加が懸念されるのか,そしてどういった地域から優先的に対策を講じていくべきなのか,考え方をお尋ねいたします。

環境部長(大橋弘明君) 小項目3の2回目の御質問にお答えをいたします。
 高齢者のひとり暮らし世帯が多い地域や建築年数の経過した古い建物が多い地域は,今後,空き家が問題になりますので,次年度に設置する協議会の中で御意見を伺ってまいります。

末永けい

続いて,(4)の2回目であります。
 1回目で,本市の空き家の増加要因について,平成25年と比べて平成30年は共同住宅等の空き室が1,200戸増加したということで,それらに対して行っている現在の取り組みと,今後どのような対策が必要とお考えなのかお尋ねをいたします。

環境部長(大橋弘明君) 小項目4の2回目の御質問にお答えをいたします。
 共同住宅等への居住促進につきましては,市,UR都市機構,中部大学が連携して,高蔵寺ニュータウンの共同住宅に学生の入居を促進する取り組みを行っており,2019年には80件の利用がございます。今後も,民間機関や他自治体での活用事例等を注視し,情報収集を図ってまいります。

末永けい

(4)の3回目であります。
 (1)の答えの中で,平成25年と平成30年の住宅総数と世帯数の比較で,住宅総数は7,150戸増加する中で,世帯数は7,318世帯増加となっていました。つまり世帯数のほうが住宅総数よりも増加しております。単純に考えれば,空き家は減少するものだと思うんですけれども,その要因についてどのように分析されているのかお尋ねします。

小項目4の3回目の御質問にお答えをいたします。
 5年間での増加数の差が168とわずかであり,空き家総数が増加した要因を現時点で特定することは困難と考えます。

末永けい

続いて,(5)の2回目です。
 市内で,高齢者の戸建て住宅に住んでいる世帯数が7,720世帯あるということが分かりました。戸建て住宅の総数のうち,約1割になります。将来的な空き家の増加を抑制していくには,そうした世帯への対応が必要になってくると言えますが,どのような対応を考えているのかお尋ねいたします。

環境部長(大橋弘明君) 小項目5の2回目の御質問にお答えをいたします。
 市では,空き家の発生を抑制するためには,高齢者のひとり暮らし世帯への対応は必要と考えており,民生委員の方が訪問する際やさまざまな機会を通じ,その方に参考となる情報を提供してまいります。

末永けい

続いて,(6)の2回目であります。
 第1期目の「まち・ひと・しごと創生総合戦略」では,「安全で快適な生活のための基盤整備」の項目において,平成30年時点での目標値として,空き家率をKPIとして設定し,目標値は3.94%でした。しかし,実際はそれを大きく上回り4.66%となってしまいました。当初の目標値である3.94%を達成するためには,どれくらいの数の「その他空き家」を解消する必要があるのでしょうか。

環境部長(大橋弘明君) 小項目6の2回目の御質問にお答えをいたします。
 約1,000戸の「その他空き家」の削減が必要になります。

末永けい

(6)の3回目です。
 目標値が未達成となっていることについての要因はどのように分析されておられますでしょうか。

小項目6の3回目の御質問にお答えをいたします。
 目標値が未達成となった要因につきましては,先ほどもお答えいたしましたが,共同住宅等の空き室が1,200戸増加したことが影響しているものと考えます。

末永けい

続いて,(8)の2回目であります。
 ニュータウン空き家バンクについてなんですが,登録件数が伸びておらず,成約件数はないという状況とのことで,これについては要因をどのように分析されておられますでしょうか。

小項目8の2回目の御質問にお答えをいたします。
 現在の空き家バンクに物件を掲載するには,リノベーション案を付加する必要があり,そのことがハードルになり,登録件数が伸びず,契約につながっていないものと考えております。

末永けい

(8)の3回目であります。
 4年間,取り組みを行って,成約件数がゼロ件というのは,抜本的に見直しの必要があると思われまして,市として今後の対応を考えていく必要があると思いますが,所見をお尋ねします。

環境部長(大橋弘明君) 小項目8の3回目の御質問にお答えをいたします。
 空き家バンクにつきましては,運営主体である春日井商工会議所から,令和2年3月をもって閉鎖すると聞いているところで,今後,協議会の中でさまざまな視点から検討してまいります。

 

【参考】

空き家が「問題」になる前に、今からできること

市が空き家の「利活用」をサポートします

春日井市の空き家対策の補助金等

春日井市空き家等対策計画

春日井市空き家等対策協議会