毎年、フェスティバルホールで「芝浜」をきいている。
聞き始めたのは、2016年。
わたしには、夫がいないから、この女房ぐあいがさっぱり分からないのだが、
これまでの芝浜は、女に我慢と内助の功を強いているから、女性に不評なんだそう。
談春落語が好きな人でも「芝浜」だけは、聞きにこない人が一定数いるのだとか。
そして、客席で芝浜をきいて泣いてる人の8割は男なんだそうですよ。
あっ・・・・わたし、泣いてる側ですけど・・・。
でも、腕があるのに飲んだくれて働かないなら、すぐに愛が冷めて追い出してしまうだろうけど・・・。
去年もきいたが、ことしの噺は、すっーとココロに入ってきた。
去年きいた時は、“どこまで変えるんだ?えっ?お酒のんじゃうの?年こしちゃうの?”と驚きがさきにきて、
噺があんまり入ってこなかったが、今年は寒い日に、温かいお茶をのんだようにジワジワとあったかくなってきた。
談春さんはなぜ、芝浜を変えようとおもったのか。
そもそも「芝浜」とは、どういう噺なのか。
変えるまえの談春「芝浜」は、どうだったのか。
談志から教わった「芝浜」は。
談志「芝浜」のベースは、何だったのか。
この解説が、談春さんから語られる。
これが、落語講座みたいで、とても貴重な時間でワクワクした。
圓朝作といわれる「芝浜」だか、三代目 桂三木助が改作して今のベースを作ったという。
圓朝のは、ずいぶんとあっさりとした噺だったとか。
で40年前、談志に弟子入りしようと決意させた「芝浜」は、どうだったのか。
この独演会で、談志の芝浜がどうだったのかを語るため、
NHKの番組で放送された唯一の映像を何度もみたとおっしゃっていた。
浜で革財布をひらうシーンを談志がどう演じたか、
浜でタバコをのむ仕草をどう演じていたかを、再現してみたり、あぁもうマジでかっこいい。
談志は、女房を自分が愛おしいと思う女を、情感たっぷりに演じてみせたのだと。
談春さんは、談志師匠の女房よりもう少しやわらげて、
女房を改変してみたけど、それでは若い人の心に届かないと。
現代の女性像にどう合わせていくか。現在の夫婦像はどんなカタチなのか。
女房と呼ばれ名がなかった女性に「お浜さん」と名前をつけて、彼女がウソをついてまで勝を働かそうと思った真意はなにだったのか。
勝に、お酒をのませてやりたかった。そしたら、年をこして正月どうだったのかも気になって・・・・それであのカタチになったのだと。
とは言え、それでもお浜さんは、よくできた女房で、理想の女には違いなかった。
でも、お浜さんがお酒をあおって何度も吐き出してる場面で、ぶつくさ言いながらも背中をさすってやるシーンは、素敵な男性像だった。
なんにしろ、談春「芝浜」は、
あったたかい気持ちになる。
今年もきけてよかった。
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2023年12月28日
@フェスティバルホール
登場するなり、客席の空席を睨め付け、
「きょうは、フェスの神様は機嫌がよくないそうで・・・ちょっと咳ばらいを」
と言い、口元をマイクからそらせて咳ばらいをする。
「楽屋に吉弥くんが遊びにきていて、25分ほど喋ってたもんですから・・・」とはじめる。
珍しく3階席をすべて閉じていて、2階席もマバラだった。
大阪公演が多かったからか、改変した芝浜に飽きたのか、それとも芝浜に飽きたのか・・・・。
これを機に、また談春さん変わっていくんだろうなという予感が。
はじめてきいた蜘蛛駕籠。
上方でよくやる演目らしく、談春さんのサービス精神が随所に。
落語途中に談春さんがカラダを後ろにそらせ、下手袖にむかって
「おい、二分金って、一両の半分だよな?」
「ハイ!」
と、桂吉弥に声をかける場面も。
しかし、江戸時代の男どもは、ヒマなのか 笑。
▼はじめてきいた「これからの芝浜」
▼2023年にみた舞台一覧
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この落語をきいた後、またイロイロと衝撃的な出会いがあり。
2023年は、本当に刺激的だった。