TPP協定により医療保険制度いわゆる国民皆保険が崩壊すると言われる方々に対し、その認識は誤解であり、既に医療制度改革が始まっていて、可能な限り医療保険制度を利用して利益を分かち合う仕組みができていることをこれまで指摘してきました。(下記投稿集)


「肺がん治療薬;ニボルマブ」


 2月24日の毎日放送(大阪)の報道を見ていて愕然としました。超高額の医薬品が保険収載されていて、その適用を拡大すると医療保険制度が崩壊するのではないか、という報道です。下記動画をご覧ください。
 海外製薬メーカーの圧力ではなく高額の治療薬普及により、医療保険制度の危機が目の前にあるのです。中医協や厚生労働省の保険収載に責任のある方々にこのような制度を早期に見直すよう働きかけねばなりません。この話は、TPP協定とは関係なく国内で進行していることなのです。
http://www.mbs.jp/voice/special/archive/20160224/


上記放送のメモ


体重60kgの患者
一回の投与130万円 x 年26回= 約3500万円/年(高額療養費制度で最裕福の患者でも200万円)

これまでメラノーマ(悪性黒色腫;皮膚がん)に保険適用、患者数500人
メラノーマ治療費用=3500万円 x 500人=175億円

2015年11月肺がん治療の保険適用認可。患者数5万人
肺がん治療費用=3500万円 x 50000人=1兆7500億円

国民医療費40兆円(内10兆円が医薬品)であるあるため、大幅に(医薬品の18%)医療費が膨らむことになる。
現在の負担は、健康保険20兆円、自己負担5兆円、公費(国・自治体)15兆円


ニボルマブの開発(小野薬品)
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO78790300T21C14A0X11000/


「C型肝炎治療薬;ソバルディとハーボニー」
(米製薬会社の多額の売上に中医協と厚労省が協力)


 高額医薬品の問題は、昨年、TPP協定合意後、WHOのマーガレット・チャン事務局長の発言で注目を集めました。話題になった一錠1,000ドルのC型肝炎治療薬が日本では既に薬価収載され、一方10ドルで販売されている国もあることが分かりました。


ロイター 2015年11月12日
「C型肝炎を治療するために、一錠1,000ドルを負担することができるだろうか。 我々がこれらの価格を下げない限り、何百万という人々が取り残されるだろう。」と聴衆に語った。
"Can you bear the cost of $1,000 for a pill to treat Hepatitis C?," Chan asked the audience of health experts, academics and diplomats. "Unless we get these prices down many millions of people will be left behind."
http://www.reuters.com/article/us-trade-tpp-health-idUSKCN0T10X720151112

この報道をご覧になった堤氏は次のツィートを発信しました。
https://twitter.com/tsutsumimika/status/666810892659507200


 一錠1,000ドルの薬は何かと調べて見ましたら、米製薬ギリアド・サイエンシズの「ソバルディ」と「ハーボニー配合錠」であることが分かりました。既に下記記事のように日本では薬価収載が終わっています。


【中医協総会】ソバルディ薬価、1錠6万円-13年ぶりに画期性加算
http://www.yakuji.co.jp/entry43531.html
【厚労省】「ソバルディ」に公費助成‐C肝患者負担は3~8万円
http://www.yakuji.co.jp/entry43627.html
薬剤費=60,1799円 x 一錠/日 x 7日 x 12週=520万円(記事約550万円)
自己負担=8万円


日経 2015年8月28日
ギリアドのC型肝炎薬、1錠8万円 厚労相諮問機関が決定
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ26HGE_W5A820C1TJC000/
【厚労省】「ハーボニー」に公費助成‐患者負担は最大で月2万円
http://www.yakuji.co.jp/entry45730.html

薬剤費=80,171円 x 一錠/日 x 7日 x 12週=673万円
自己負担=2万円/月 x 84日/30=5万6千円


2015年12月11日適用の薬価基準収載リスト(厚労省)に、ハーボニーとソバルディが収載されている。
http://www.mhlw.go.jp/topics/2014/03/tp0305-01.html
高額医薬品リスト
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000095565.pdf


国内医薬品市場上位10製品
米製薬ギリアド・サイエンシズ社は、2015年の売上を一気に2,300億円とし、ハーボニーとソバルディそれぞれ1,100億円を超えた。
http://www.yakuji.co.jp/entry48882.html


 ところが、2016年3月1日ブルームバーグ紙によれば、ソバルディ錠について、「1錠1,000ドルの医薬品、10ドルで購入できる国も-ギリアドの価格設定」と、国の事情によって価格決定をしていることを報道しています。
 エジプトでは、12週間のセットを900ドル(一錠10ドル)で販売している。国境なき医師団は、製造コストはセット当たり100ドルと見積もっている。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O3BHRMSYF01X01.html


 堤氏やTPPに関心を持たれる方々が、TPP協定によって外国の高額な医薬品の収載で国民皆保険が崩壊すると外(TPP協定)に目を向けさせる言動を行っていますが、日本国内では、極めて高額な肺がん治療薬やC型肝炎治療薬の薬価収載が実施済みなのです。何故、国内のこのような動向に警鐘を鳴らさないのでしょうか。2016年1月31日の下記投稿で紹介しましたように「未就学児10割、大人7割を税金が負担する日本の皆保険制度」と、日本の法制度をご存じ無いか、関心が無いようです。


2015年11月11日
TPPと医療問題(1)
http://ameblo.jp/study-houkoku/entry-12094407427.html
2015年11月13日
TPPと医療問題(2)国内制度の変更はない
http://ameblo.jp/study-houkoku/entry-12095137576.html
2015年11月19日
TPPと医療問題(3)「外国企業とISDS」
http://ameblo.jp/study-houkoku/entry-12097316294.html
2015年12月7日
TPP協定と国民皆保険制度
http://ameblo.jp/study-houkoku/entry-12103854659.html

2015年12月31日(国民医療費などのデータ)
TPP協定と年次改革要望書(その4)医療

http://ameblo.jp/study-houkoku/entry-12112114091.html
2016年1月31日
堤氏は、米医産複合体は日本の皆保険制度を破滅させないと語る
http://ameblo.jp/study-houkoku/entry-12123591475.html