毎年秋に米国より年次改革要望書が届き、翌年日米政府が協議し課題の消し込みを行い報告書を作成します。その秋に次の年次改革要望書を届けるという繰り返しを2011年まで行ってきました。2001年には「成長のための日米経済パートナーシップ」の枠組みになり日米対話が2009年まで定例化されて行きます。2010年中断し2011年日米経済調和対話が復活し2011年に協議報告を行って終了します。


成長のための日米経済パートナーシップ(経済産業省)
http://www.meti.go.jp/policy/trade_policy/n_america/us/html/index.html
参考資料(リンク)
 成長のための日米経済パートナーシップ【概念図】(和文・英文)
 成長のための日米経済パートナーシップ【本文】(和文)(英文)



 上記の概念図と本文に「規制改革及び競争政策イニシアティブ」(外務省)、「財務金融対話」(財務省)と「投資イニシアティブ」(経済産業省)の三つに分かれて対話を行うことが説明されています。医療関係については「改革イニシアティブ」の作業部会で取り扱うとしています。
 そして、「投資イニシアティブは、両国における外国直接投資のための環境改善を意図する法令、政策及び他の措置を扱う。このイニシアティブにおいて扱われる問題は、企業の構成及び経営、企業ガバナンス、企業の透明性、破産、労働流動性、並びに土地市場の流動性を含む。」と規定しています。
  「改革イニシアティブ」の年次改革要望書の協議報告書には米国の要望に日本政府がどのように対応したか書かれていますので、下記のように報告書の主要な内容を取り出して紹介します。


 医療関係の米国の要求は、医薬品、医療用具(2005年4月より医療機器と改名)、血液製剤、一般用医薬品、栄養補助食品、化粧品、ワクチンの売り込みのための規制改革、特に保険収載価格への透明性と承認手続の迅速化を要求し、日本の医療制度をくまなく追求し、制度・法改正要求を継続してきました。透明性とは、米国企業が日本の医療・保険に関する決定機関(中医協など)に直接意見を述べる機会を得て、影響力を行使することです。厚生労働省は、外国企業も日本企業も等しく意見具申の場を与えることにしました。2009年には、外国企業の代表が中医協の専門委員に就くことも許しました。外国企業の内国民待遇は、このように既に実現していたのです。


 バイオ製薬のデータ保護期間延長を要求され、厚生労働省は、2007年4月に新薬の再審査期間を6年から8年にしました。これは実質上のデータ保護期間延長になります。米国でバイオ製薬データ保護期間12年が決められたのは、2010年3月成立のオバマケア法でした。TPPアトランタ交渉では、最大の争点になり延長戦を重ねましたが、8年に落ち着き、交渉合意に至ったわけです。


 医療機器、体外診断薬、血液製剤についても、保険償還価格の決定法に有利になる要求を出し続けていました。年次改革要望書における議論は、日本の医療保険制度が前提でした。米国を含む外国製造業者は、日本の医療保険制度に入り込みその分け前を拡大していこうとしたわけです。保険償還価格を決定するにしても、窓口は厚生労働省(中医協)一つで済み、営業努力をそこに集中すればよく、米国のように多くの民間保険会社、連邦政府(メディケア)、50の州政府(メディケイド)毎に価格交渉を行わなくても良いわけです。しかもほぼ希望にかなう価格になっていると思います。


 さらに、日本では副反応で社会的問題になっている子宮頸がんワクチン、平成26年10月から高齢者への定期接種とされた肺炎球菌ワクチン、乳幼児への定期接種のヘモフィルスインフルエンザ菌b 型(Hib)の三種のワクチンは、2008年要望書でワクチン使用の促進を米側から要求され2010年日米経済調和対話に2010年にはワクチンが採用されたと書かれています。(注1、ワクチン接種については後述)
米国大使館
http://japanese.japan.usembassy.gov/j/p/tpj-20110304-70.html


 投資イニシアティブに、突然医療問題が提起されたことに違和感を感じ、少し調べてみました。上記経済産業省の「成長のための日米経済パートナーシップ」の「2003/04/14 日米官民会議第2回会合の結果概要」に医療関係の提言があります。この会議は「改革イニシアティブ」「財務金融対話」「投資イニシアティブ」の合同会議であり、企業再生と金融、医療のイノベーション、コーポレートガバナンス、貿易と投資の4分野の提言でした。
 医療に関する提言では、医療保険制度、償還制度および行政政策に関しその維持と改善を米国と日本に求めています。これらの制度を破壊することは誰も望んでいません。この提言書に「混合診療」が現れます。発想としては、医療保険の負担を低減するため「保険診療」と「自己負担診療」の併用を認めるべきだという考え方と言われています。(下記国会図書館編混合診療をめぐる経緯と論点」)


2003/04/14 日米官民会議第2回会合の結果概要
http://www.meti.go.jp/policy/trade_policy/n_america/us/data/kanmin_200304_j.pdf

 我々は、国で、依然として多くの人々が医療保険に加入できない事態を憂慮している。米国政府には本事態を改善すべく緊急の努力が求められている。同時に、米国では、医療過誤による保険金の支払いが年々増加しつつあり、これが医療保険の保険料を押し上げている事態を指摘したい。本問題は医療を超えて、あらゆる産業に影響を与えつつある。

 日本政府は、患者さんに提供される医療の質を維持、向上する必要がある。医療制度は、効率性、高い質、患者の選択、予防治療に立脚すべきである。医療制度を適切に管理し運営するために、我々は以下の原則を採用することを強く求める。「医療情報公開による透明性の確保」「医療の標準化」「健康管理・疾病予防活動の拡充」「間接税の導入」 「混合診療による医療費適正化と選択肢の拡大」
(以上日米官民会議第2回会合資料)


 この混合診療の問題は、「投資イニシアチブ」(経産省担当)で、米側から病院経営の観点から要求が出てきます。2004年、米側の要求の株式会社の医療機関経営、検査などの外部委託、混合診療についての議論で、日本側は全て拒否回答を行いました。混合診療については、2006年日米投資イニシアティブ報告書(9,10頁)に「日本政府は、公的医療保険制度は基本的に、全ての必要な医療を被保険者に対して保障するとの原則を保持しており、それ故、日本政府は、そのような米国政府の見解を共有していない。」として回答しています。


 この混合診療を推進したのは国内の規制改革派であり、厚生労働省との協議が進められました。(下記国会図書館資料)外圧を利用した事例のようです。この国民皆保険を守り、また患者の福利を考慮して、日本政府は、2004(平成16)年12月に厚生労働大臣と内閣府特命担当大臣(規制改革、産業再生機構)の『いわゆる「混合診療」問題に係る基本的合意』に基づいて改革を行うこととしました。
(投資グループのメンバーには米国の製薬産業や医療機器産業のような強力なグローバル産業に匹敵する病院経営グループは見当たらないことから、国内規制改革派が米国に言わせた可能性が高い。)

厚生労働省合意発表
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2004/12/h1216-1.html
尾辻大臣記者会見概要
http://www.mhlw.go.jp/kaiken/daijin/2004/12/k1215.html
国会図書館編「混合診療をめぐる経緯と論点」
http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_9107340_po_077007.pdf?contentNo=1


(注、国会図書館。年末から平成28年1月4日までメンテナンス中、1月5日より利用可)


 この合意と平成23年10月25日の最高裁判決「混合診療を認めていない現法は適正である」を受けて、平成24年10月から自己負担の先進医療と保険診療の併用が開始され、平成28年4月からは、患者申出療養が運用されることになりました。先進医療では、対象医療技術と医療機関の指定があり、患者申出療養では、臨床研究中核病院での臨床研究(治療結果の責任も患者に)として行われるため極めて限定的で、一部の国会議員や評論家が言われる「全面的な混合診療」にはほど遠い状況であると思います。(平成26年6月までの1年間の先進医療は、全患者約24,000人、総金額約247億円、保険負担約73億円、自己負担約174億円)


  今年10月に退職されたカトラー元USTR次席代表代行が2012年3月東京で次のように明言されていた。医療保険制度、混合診療や他の分野についても、全てこの発言通りであったことがテキスト調査の結果、確認されました。

・TPPは日本、またはその他のいかなる国についても、医療保険制度を民営化するよう強要するものではありません。
・TPPはいわゆる「混合」診療を含め、公的医療保険制度外の診療を認めるよう求めるものではありません。
・TPPは学校で英語の使用を義務付けるよう各国に求めるものではありません。
・TPPは非熟練労働者のTPP参加国への受け入れを求めるものではありません。
・TPPは他国の専門資格を承認するよう各国に求めるものではありません。
http://japanese.japan.usembassy.gov/j/p/tpj-20120314a.html


(混合診療詳細は下記に)
http://ameblo.jp/study-houkoku/entry-12103854659.html


「年次改革要望書による日本の医療制度の主な改正」

Ⅰ.医療保険制度改正
 医療保険の自己負担率は、平成13年(2001年)小泉政権から高齢者負担を段階的に増やしてきました。平成18年の保険法改正により、今では現役と現役並み所得者は3割の負担率になり、低所得の高齢者負担も1から2割に上がっています。(添付図)団塊の世代が高齢者になって行き、現役が少なくなっていく状況では仕方がないのかも知れません。


我が国の医療保険について(厚労省)
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/iryouhoken01/index.html
(小泉政権終了時の法改正)
平成18年(2006年)健康保険法等の一部改正について
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/iryouhoken-h18/index.html
その改正一覧表
http://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken02/01.html




Ⅱ.医薬品・医療機器の保険収載について(2009年報告書より)
 2.1医薬品
 ・製造企業の官民対話への参加により意見表明の機会を与える
 ・中医協の専門委員に外国人も選出
 ・薬価制度の提案;補正加算率拡大、原価計算方式の改正
 ・毎年の薬価改定を米国は回避するよう要請しているが日本は実施する
 ・市場拡大再算定の廃止要請と外国平均価格調整制度について議論する、補正加算は革新性の程度で評価する
 ・新薬の処方期間の提案を議論する(日本では14日、現在も維持)
 ・医療保険制度におけるワクチンに関する事項(ワクチンは保険収載対象ではないが米製薬会社は収載を希望している可能性がある)
 
 2.2医療機器
 ・外国平均価格参照制度(FAP)
 業界が提出した比較国4ヶ国のデータのみを使用し、価格引き下げ上限を25%に維持し、段階的引き下げを実施した。
 ・市場実勢価格加重平均値一定幅方式(R-ゾーン)の許容幅(現在2%)の議論
 ・革新性の評価;補正加算の議論継続
 ・C1/C2 製品の迅速な導入;保険償還時期頻度増、待ち時間を短縮
 ・保険償還プロセス;メーカの償還価格引き上げの説明機会を与える
 ・機能区分;2008年保険医療材料価格制度において機能区分の見直しを行った
 ・画像診断技術;2008年頸動脈CT、心臓MRIの加算を行った
 ・体外診断薬(IVD);2008年病院における迅速検査の償還価格を引き上げた
厚生労働省はIVDの収載に慎重である。このIVDは1994年の年次改革要望書から連綿として要求されている。


Ⅲ.医薬品・医療機器(医療用具)の承認機関短縮
2002年改正薬事法(2005年施行)
「薬事法」

(平成26年11月25日法改正で「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」に)

 1.医療機器に係る安全対策の抜本的な見直しの製造販売承認制度、製造販売業と製造業の規制及び医療機器に関する規制(クラス分類制度、第三者認証制度の導入)
 従来は製造及び輸入について厚生労働大臣の承認を要したが、改正法では製造段階で承認は不要とし、承認は医療機器を製造販売業者が市場出荷するための要件とした。
http://www.ja-ces.or.jp/03publish/pdf/kaishi26/26_3.pdf
 2.バイオ、ゲノム等の様々な科学技術に対応した安全確保対策
 3.市販後安全対策の充実と、承認・許可制度の見直し
 4.未承認の医薬品及び医療機器に係る特例輸入制度の見直し、「処方せん医薬品」の薬局販売


「採血及び供血あつせん業取締法関係」
 国内採血を原則に、規制強化(米国の輸入要請が継続しているが拒否している)


「2004年4月1日(独立行政法人)医薬品医療機器総合機構、設立」

 改正薬事法の2005年4月施行に合わせて、国立医薬品食品衛生研究所医薬品医療機器審査センター、医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構及び財団法人医療機器センターの一部の業務を統合。ドラッグ・ラグ、デバイス・ラグの短縮に努力します。


Ⅳ.まとめ
 TPP協定による日本に及ぼす影響について筆者も含め多くの方々が不安を抱いていました。協定テキストが公表されて読み解くうちに、2013年春に日本がTPP交渉に参加した時には、ほとんどの交渉が終わっていたということに気が付きました。日米並行協議の内容は、年次改革要望書のやり残しを協議したものです。米国とのTPP交渉は関税率の譲許表作成と自動車の部品関税と原産地規則に絞られたのではないかと感じます。それを示すのは、日本の国内法の改正リストです。TPP政府対策本部の「TPP協定に伴い法律改正の検討を要する事項」に記載されている項目は、関税法、特許法の一部、著作権、医療機器に関する適合評価に関する認証機関の指定、競争政策に係わる制度に関する改正だけです。農業や他の分野でも多くの法規改正があると思っていましたが、基本的な国内法への影響が少ないことに驚きました。医療関係では、日本の医薬品医療機器総合機構に相当する他国の認証機関を指定することができるという法改正のみです。


TPP協定に伴い法律改正の検討を要する事項

http://www.cas.go.jp/jp/tpp/pdf/2015/13/151105_tpp_kentoujikou.pdf
外国の認証機関の指定
http://ameblo.jp/study-houkoku/entry-12097334065.html


 日米間で1994年から続けてきた年次改革要望書による対話により米国の要望を受け入れて、日本の医療制度の改革がほぼ終わっていたのです。TPP協定によって、日本の皆保険制度が崩壊すると言われる方々がいますが、この日米対話の米国からの要求を見ていきますと、日本の医療保険制度を利用しようと考えいることが分かります。例えば、対外診断薬(IVD)を保険収載の要求は最初の1994年版に書かれ、医薬品と医療機器についても保険収載を求めて各種の提案を毎年行い、中医協の専門部会に参加して高く売り込むことを要求し、保険収載ができないワクチンも収載の提案をしています。ワクチンについては予防接種法とWHOの推薦を利用し、定期接種の指定を受けます。
 セールスから見たら、一人の客(厚生労働省)に売り込むだけで、後は自動的に購入してもらえて、金持ちの日本人がそれを負担してくれる、このような美味い商売はないと思います。彼ら(業界)は、日本の医療保険制度の維持を望んでいるはずです。


 医療だけでなく、2013年4月12日の佐々江・マランティス書簡に書かれた日米並行交渉の交渉分野の自動車、保険、透明性/貿易円滑化、投資、知的財産権、規格・基準、政府調達、競争政策、急送便及び衛生植物検疫について若干のやり残しはあったものの、農林水産、金融、情報通信、医療、労働、金融、環境、政府調達などについては、TPP本交渉に委ねたというより、既に協議が終わっていたと考えられます。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/tpp/pdfs/kyogi_2013_04_01.pdf


 中でも、知的財産権については、ACTA(偽造品の取引の防止に関する協定)をUSTRと共同作業で創り上げた経緯があり、互いに熟知している間柄です。このACTAは日本が寄託者となり署名式を行いましたが、批准したのは日本のみで発効していません。このACTA批准前に日本は著作権法を改正し、侵害に対し非親告罪の規定を入れました。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/ipr/acta.html


 各報告書の紹介では触れませんでしたが、日本は米国に対する要求も毎年出しています。しかし、ビザの切換手順、保険業の営業免許の取得が州毎に必要(注2)、WTO規定の政府調達が州政府以下に適用されていないこと(TPP協定では州政府以下を対象としないとした)、アンチダンピングルール、エクソン・フロリオ条項、メートル法など多くの課題が解決されないままです。これらはTPP協定でも解決出来ません。


政府調達の相互主義

http://ameblo.jp/study-houkoku/entry-12092948105.html


 最後に、筆者は、TPP協定よりも国内の規制改革派の活動が問題と思っています。
本来、立法は国会議員の仕事になるはずですが、官邸に規制改革委員会を設置し、この会で立案し官僚が法案を作成し国会に提出する、そしてその法案に反対する議員を首相の人事権で排除するといった独裁的な手法で構造改革を進めてきました。労働の流動化によるコスト低減を狙った派遣法の度重なる改正など指導してきた規制改革委員が最大手の人材派遣業の会長であるというように、利益を誘導している方がいます。(終)


(注1)ワクチン接種について
 現在、日本の国民医療費約40兆円には、出産、健康診断、予防接種、義眼・義肢などは含まないとされています。この予防接種の制度を調べますと、厚生労働省が予防接種の対象と方法を決定し市町村に実施を指示します。基本的にワクチンの購入は市町村が指示しますので、薬価交渉も市町村の担当になります。ワクチンは保険対象でないので薬価収載されていないものが多くあります。市町村は、接種対象者とワクチン購入費と医師の接種診療費、経費を含め総費用を算定します。財政負担能力を勘案して公費と自己負担額を決め接種対象者に通知します。このとき、接種にかかる公費はほぼ地方交付税から充当されます。(東京都と59の不交付団体はそれぞれの税収から充当)この予防接種に使われた公費の国の統計データを発見することができませんでした。各市町村の予算・決算書を集計しなければなりません。全ての市町村を調べるわけにも参りませんので、横浜市と京都市を調べて、住民一人当たりの「予防費」(公衆衛生費の内訳)を計算してみました。平成27年度の予算では、横浜市95億円:372万人:2,550円/人、京都市33.1億円:146.8万人:2,250円/人となります。日本全体では2,500円/人 x 1億2,688万人=3,172億円の公費負担と推定されます。これに自己負担費用が加わりますので、予防接種総額はさらに増えます。
 製薬会社の市場調査によれば、2011年国内ワクチン市場は約2700億円(下記6頁)ですから、概略数字が合っているように思います。
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000036w4i-att/2r98520000036w9p.pdf

平成24年5月23日予防接種制度の見直しについて(厚生労働省)
(16頁に子宮頸がん等ワクチンの接種計画が記載されている)
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002b5l0-att/2r9852000002b5nr.pdf
子宮頸がんワクチンと肺炎球菌ワクチンについて
http://ameblo.jp/study-houkoku/entry-12094407427.html


(注2)TPP協定を待つまでもなく、米国の保険会社を買収しています。
2014年6月 第一生命が米プロティブ声明を買収    5750億円
2015年6月 東京海上HDが米HCCインシュアランスを買収 9400億円
2015年7月 明治安田生命が米スタンコープを買収    6250億円
2015年8月 住友生命が米シメトラの買収交渉を発表 (4~5000億円)


(以下はメモです。本文は巻末のリンク集からご覧ください。)


Ⅴ.「年次改革要望書の報告書」の主要事項(繰り返しは省略)
1998年報告書
外国臨床試験データ受入大幅拡大
審議会への外国業者の意見受け入れ
新薬承認期間12ヶ月に2000年4月まで
日米EU医薬品規制整合化国際会議(ICH)のガイドラインの国内規制への取り入れ1998年夏まで
医療用具の機能別償還区分創設早期に


1999年報告書
米国の製造業者を含めた関係者と薬価制度の研究
医療用具の機能別償還区分創設早期に、2000年度中に
中医協の承認のもと高度先進医療制度の適正な運用
2000年4月中央薬事審議会の調査会廃止、医薬品医療機器審査センターにおけるチーム審査体制で対応
2000年4月から中央薬事審議会医薬品特別部会を現行の年4回よりも頻繁に開催
1999年4月よりソフトコンタクトレンズと化学消毒剤の適合性評価に関し、グルーピング制度を導入
外国の医薬品・医療用具製造業者と日本の製造業者と同等に行う
政令、省令、基準、告示などの措置の前にパブコメ
栄養補助食品;2000年4月に出される検討会の結論に基づき自由化の努力を行う


2000年報告書
薬価改革2002年4月までに
医療用具機能別分類制度改革、中医協の承認を前提として2000年10月に同一機能複数価格を実施
医薬品医療機器審査センター、(財)医療機器センター及び医薬安全局審査管理課における作業を調整する
2000年4月に医療用具の審査区分を分類し直し、「新医療用具」、「改良医療用具」及び「後発医療用具」の3つとした
生物学的適合性試験の要件について米国業界の意見をきく
一定の放射線療法の臨床試験が開始できるようにした
ペースメーカー及び整形インプラントの範囲に関する質疑応答を含む通知を発出した
2000年4月から新医薬品の承認審査の標準的な処理期間を12ヶ月に短縮した


2001年報告書
透明性;2000年に薬価算定ルールの明確化・文書化、薬価算定組織の設置といった措置を講じた。改革の過程で米国製造業者の提案・意見を考慮する。調整幅、先発・後発の取扱い、加算、市場規模拡大に対応し再算定、外国価格調整
保険適用区分の細分化とタイムクロックの明確化、C1、C2製品の価格算定ルールと保険導入時期の検討、米国製造業者に意見表明機会
医療材料の機能別償還価格について企業と直接議論する機会

臨床試験不要の医療用具の範囲拡大、創傷被覆材を含む。新医療用具の承認ステップの概略を示すフローチャート公表。改良医療用具の新区分と後発品との違いを業界に説明。
医療用具の申請前相談2000年5月より実施。厚生労働省の上級職員との面談。薬事法と計量法における体温計と血圧計の取扱い協議。生物学的適合試験米業界との対話継続。2000年4月以降事務処理時間12ヶ月以内の努力継続。2000年11月医薬品承認審査ステップのフローチャート発出。新医薬品の市販直後調査2001年10月より開始。

外国臨床試験データの受入;ブリッジング試験の検討

2000年10月薬価算定組織及び保険医療材料専門組織設置、薬価設定についての不服意見表明を受け入れる。審議会や検討会における外国の医薬品・医療用具製造業者と国内製造業者と同等の扱い

栄養補助食品
合理的適切で安全性有効性のある科学的データの表示を認める。
カプセル錠剤の成分が医薬品の成分として使用されたものであれば、1年間の毒性試験を省略

ヘルスケアサービス
2001年3月改正医療法で医療機関ができる広告;治験事項、保健指導実施、対応可能な言語、医療評価の結果、健康診査の実施


2002年報告書
A.医療機器及び医薬品の保険償還価格の算定ルールの改革並びに関連事項
自己負担と保険料負担の引上げ(H15年度)、価格設定制度の見直し、米業界の意見表明の機会
高齢者医療制度の見直し、米業界と国内業界を等しく討議、革新的な医薬品の加算率大幅引上げ、原価計算方式の価格算定の場合申請者の選択した係数を受入。
新薬剤分類制度は比較対象薬の選択結果が革新的医薬品を、承認済みで収載されていない医薬品を特定療養費制度を適用、新機能別分類のための医療機器価格設定ルールを策定、治験における医療機器を用いた医療について特定療養費制度を適用、特定の医療機器を用いる手術への診療報酬の支払いは症例数の豊富な施設に限定、

B.承認手続
生物由来製品の承認許可制度の見直し薬事法の改正、医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構(医薬品機構)と医薬品医療機器審査センターとの統合が内閣により提案され承認された、1994年以降、医薬品、医療機器等の承認申請の審査業務は、医薬品機構、医療機器センター及び医薬品医療機器審査センターに外部化されてきた。
医療用具承認申請の3区分(「後発」、「改良」及び「新」)を明確にするためのディシジョン・ツリーを含む事務連絡を、2002年3月26日に公表した。

C.外国臨床データの受入
日米EU医薬品規制整合化国際会議(ICH)の原則や指針に合致した方法で、かかる努力を継続する。
D.血液製剤
安全な血液製剤の安定供給を確保することを目的とした新しい法制を検討

E.栄養補助食品
(継続)


2003年報告書
A.保険償還価格算定ルール
医療保険制度体系や診療報酬の体系の見直しについての基本方針を策定した。2002年12月17日医療保険制度改革試案を発表、米業界とも議論、医薬品産業ビジョン、医療機器産業ビジョンを発表、革新的医薬品の加算率引上げ、「診断群別包括評価制度(DPC)」の適用範囲に関し説明する、バイオ製品の特別の規制要求、画像診断機器・体外診断薬などの議論に応じる、

B.制度改正
改正薬事法で「機構を」設置中、医療機器規制国際整合化会議(GHTF)と協力、2003年2月医療機器の生物学的安全性試験ガイドラインを廃止し新たに国際整合した生物学的安全性評価に関するガイダンスを定めた。

C.血液製剤
2002年7月31日法公布、血液製剤等に係る規制を2003年7月30日までに施行する


2004年報告書
2004年度の医療材料価格と薬価基準の改正が行われた-外国価格調整ルール・原価計算方式・長期収載医薬品の再算定ルールの導入・外国価格参照再算定ルール不採用、中医協において業界に意見表明の機会が与えらた、

B.制度
2004年4月医薬品医療機器総合機構設立(以後、総合機構)
C.血液製剤
D.栄養補助食品
E.構造改革特区


2005年報告書
バイオ製薬問題の提案、総合機構への注文


2006年報告書
中医協の薬価改定頻度大過ぎ、加算率引上げ、外国平均価格調整ルールの採用検討、薬価算定組織会議に収載希望者の参加意見表明の機会、医療機器の価格算定は業界から出されたデータのみを使う、次期償還制度の日本の外国価格参照制度廃止に米国が反対。
診断用具;先進的体外診断医薬品の保険償還
データ保護;「知的財産推進計画」により医薬品の試験データに関して8年間の保護期間を検討している
血液製剤;価格据え置き、算定制度について業界と相談
総合機構;制度・運用への注文


2007年報告書
A.保健医療制度の変更提案、経済財政諮問会議の研究開発・臨床試験・審査・償還の提案、中医協などへの業界意見表明を実施。日本の製薬企業の競争力強化官民対話開始。

B.制度
 中医協薬価専門部会委員国籍条項を外す、薬価制度改革提案も業界からの意見聴取、イノベーションの評価を加算程度に反映(毎年;米国は反対)
データ保護期間:再審査期間を6年から8年に延長(2007年4月)

医療機器
外国平均価格参照制度の検討に意見を求める、画像診断装置・体外診断薬も

制度;総合機構報告
血液製剤
一般用医薬品
栄養補助食品
化粧品


2008年報告書
輸入問題
ビタミンを基にしたほとんどの栄養補助食品は、12.5%の関税を課されるHS コード「2106.90.295」に分類され、ミネラルなどの他の多くの栄養補助食品は、15%の関税を課されるHS コード「2106.90.299」に分類される。対照的に、これらの成分が関税区分「3003」や「3004」の下で医薬品として輸入される場合には、無税となる。日本国政府は、医薬品と同じ成分を有する栄養補助食品類を含む関税水準の問題について、WTO 交渉において引き続き、包括的に対応する。日本国政府は、この問題について、米国政府と引き続き議論していく。


(筆者注記)
TPP協定においては、栄養補助食品と医薬品の関税は等しくゼロになり議論が終わったことになる。
ビタミンなどの「2106.90.295」は協定発効時、関税ゼロに(EIF)
ミネラルなどの「2106.90.299」は8年後の4月1日に関税ゼロに(B8)
下記107頁の譲許表に
https://ustr.gov/sites/default/files/TPP-Final-Text-Japan-Tariff-Elimination-Schedule.pdf


2009年報告書
(医療制度の主な改正で紹介済み)


2011年日米経済調和対話協議記録
ワクチン
日本国政府は予防接種制度の改正を進めているが,厚生労働省は,ヘモフィルスインフルエンザ菌b 型(Hib),肺炎球菌,ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンを定期接種の対象に含めることについて十分考慮しつつ,2010 年以降実施し,これら三つのワクチンへのアクセスを改善した緊急促進事業を踏まえ,対応していく。


「投資イニシアティブ」の主要事項
2003年
株式会社の医療機関保有 2003年2月27日構造改革特区推進本部決定、法案2003年度中提出、医療行為以外のアウトソーシング実施済み、医療行為は不可


2004年
特区で自由診療の分野;再生医療、遺伝子治療、美容外科医療の開設 2004年5月法成立10月施行

(参考)
高度医療特区で認める自由診療
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kouzou2/hyouka/hearing/060106/siryou2.pdf
 1)特殊な放射性同位元素を用いて行う陽電子放射断層撮影装置等による画像診断
 2)脊髄損傷の患者に対する神経細胞の再生及び移植による再生医療
 3)肺がん及び先天性免疫不全症候群の患者に対する遺伝子治療
 4)高度な技術を用いて行う美容外科医療
 5)提供精子による体外受精
 6)その他これらの医療に類する医療
(参考)
医療における株式会社参入に対する日本医師会の見解
http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20091224_3.pdf


MRIやPETの外部委託不可、血液検査は認める
混合診療は不可


2005年
米国政府の要望に応じて、2004年12月に厚生労働大臣と内閣府特命担当大臣(規制改革、産業再生機構)、行政改革担当、構造改革特区・地域再生担当との間でなされたいわゆる「混合診療」問題に係る基本的合意及び基本的合意に基づく改革の進展について、情報提供を継続する。


2006年
株式会社参入 高度医療特区で開始したと説明
外部委託 前年回答通り
混合診療 米国政府と見解を共有していない

(以上、年次改革要望書 医療関係)


年次改革要望書リンク集
http://ameblo.jp/study-houkoku/entry-12111886874.html

(次回、自動車交渉)