ぐるりのこと。
傑作です。ぐるりのこと。
僕は、基本的に予告トレイラーを観て気に入った映画しか観なくて、結果採点は高めになってしまうので「どんな映画でも良いと言う」なんて思われる事がありますが、これは本当に平成の邦画史に残ると思います。
監督は『ハッシュ』で世間の注目を集めた橋口亮輔。
僕が『ハッシュ』を観たのは高校生の頃だったと思いますが、その時は余りピンと来ず、本編よりもエンドロールの方が印象に残った程でした。
ただ、ずっとゲイについての映画を作っていたりして(僕は監督自身がゲイだとばかり思っていた)、創作意識や作家意識が強い監督なんだと認識していて、6年ぶりの新作という事で楽しみにしていました。
この映画に対する高すぎる期待を自覚してたのでがっかりしないか心配でしたが、逆にその期待を飛び越えてくれました。
ストーリーは、一組の夫婦の十年を淡々と辿ります。
しっかり者の妻・翔子と、だらしないけど心優しい夫・カナオ。
二人の、平凡に幸せな日々は、授かったばかりの娘の死を境に少しずつ崩れていきます。
法廷画家として生計を立てるカナオ、一方で翔子の精神のバランスは壊れ始めます。
物語は、翔子の、そして夫婦の、そしてそして家族の絆の再生を描きます。
これじゃ余りに簡単な説明なので詳しく知りたい人はhttp://www.gururinokoto.jp/story/index.htmlへどうぞ。
この映画が素晴らしい所は、あくまでも淡々と進んでいく点だと思います。
橋口監督はあえてドラマチックな演出を避けていて、例えば赤ん坊が死んでしまう直接的な描写はなく、季節が変わりスクリーンに仏壇が出てきて、翔子とカナオの表情から、観客は「そういう事があったのか」と察する事となります。
丁度、黒澤明監督の「生きる」で、いきなり主人公の葬式のシーンになる、あんな感じです。
はっきり言って、こんなやり方は従来の映画のセオリー(そういうものがあるとすれば)とは違うと思うのですが、それでも違和感が無いのは、橋口監督が主人公の二人を丁寧に描いたからだと思います。
カナオと翔子の会話が長回しのシーンがあるのですが、本当にリリー・フランキーと木村多江の素ではないかと思う程自然に撮られていて、僕はもう途中から、「映画の中で作られた架空の夫婦」ではなく「きっと日本のどこかにいる本当にいる二人」としてスクリーン上の二人を観ていました。これは本当に監督と役者陣の力だと思います。
観客ではなく、二人の人生の足跡を見つめる傍観者の気持ちに本当になっていました。
だからこそ、子供が死んでしまうシーンが描かれていなくても、「二人で辛い日々を乗り越えたんだろな」と想像し、(でもそれはカナオと翔子の二人の問題であって、僕がそれを見る必要はないし、見るべきではないな)と感じました。
はっきりいって、お金払って映画観ている訳だからこれはどこか屈折している感情だと思うのですが、本当に二人に感情移入してしまうのです、滅多に無い体験でした。
法廷画家としてカナオは歪んで行く日本社会を見ていきます、また最愛の妻は精神を病んでいきます。
そんな中、カナオはただ一人変わらず、ただ優しく傍に居続けます。
目まぐるしく変化していく世界の中で、「変わらないこと」の強さ、優しさを橋口監督は描きたかったのではないかと思います。
前作『ハッシュ』から六年の間橋口監督自身も欝と戦っていたらしいですが、その様な経験が糧になっているようで、『ぐるりのこと。』は人生の本質を見つめた非常に素晴らしい作品となっていると思います。
また、役者陣も素晴らしいです。
本格的な演技は初挑戦のリリー・フランキーですが、「うまい・へた」で言えば決して上手いわけではないと思うのですが、とにかくいい味を出しています。
カナオの役どころが実際の性格と似ているのも幸いして、飄々としつつ芯が通っているカナオという人間をちゃんとスクリーンの上で見つけることができました。
木村多江もさすがの安定感で、表情や仕草で時の流れを感じさせてくれて見事な演技でした。
精神を壊す女性の役どころといえば、『シークレット・サンシャイン』のチョン・ドヨンもそうでしたが、それよりは抑え目で上品な演技で、ストーリー全体の雰囲気にフィットしていました。
また音楽も素晴らしいです。
ラストシーンを観ながらぼんやり、ここで『ジョゼと虎と魚たち』みたいにぐるりが入れば合うだろうな、なんて思いましたが、流れてきたakeboshiのperunaは映画に非常にマッチしていて、最後の最後で映画の質をもう一つ上にあげたな、と思いました。
と、ベタ褒めしてしまいましたが、今年のナンバーワン邦画大本命です。
もう一度言います、傑作です。☆5つ!!
☆☆☆☆☆
僕は、基本的に予告トレイラーを観て気に入った映画しか観なくて、結果採点は高めになってしまうので「どんな映画でも良いと言う」なんて思われる事がありますが、これは本当に平成の邦画史に残ると思います。
監督は『ハッシュ』で世間の注目を集めた橋口亮輔。
僕が『ハッシュ』を観たのは高校生の頃だったと思いますが、その時は余りピンと来ず、本編よりもエンドロールの方が印象に残った程でした。
ただ、ずっとゲイについての映画を作っていたりして(僕は監督自身がゲイだとばかり思っていた)、創作意識や作家意識が強い監督なんだと認識していて、6年ぶりの新作という事で楽しみにしていました。
この映画に対する高すぎる期待を自覚してたのでがっかりしないか心配でしたが、逆にその期待を飛び越えてくれました。
ストーリーは、一組の夫婦の十年を淡々と辿ります。
しっかり者の妻・翔子と、だらしないけど心優しい夫・カナオ。
二人の、平凡に幸せな日々は、授かったばかりの娘の死を境に少しずつ崩れていきます。
法廷画家として生計を立てるカナオ、一方で翔子の精神のバランスは壊れ始めます。
物語は、翔子の、そして夫婦の、そしてそして家族の絆の再生を描きます。
これじゃ余りに簡単な説明なので詳しく知りたい人はhttp://www.gururinokoto.jp/story/index.htmlへどうぞ。
この映画が素晴らしい所は、あくまでも淡々と進んでいく点だと思います。
橋口監督はあえてドラマチックな演出を避けていて、例えば赤ん坊が死んでしまう直接的な描写はなく、季節が変わりスクリーンに仏壇が出てきて、翔子とカナオの表情から、観客は「そういう事があったのか」と察する事となります。
丁度、黒澤明監督の「生きる」で、いきなり主人公の葬式のシーンになる、あんな感じです。
はっきり言って、こんなやり方は従来の映画のセオリー(そういうものがあるとすれば)とは違うと思うのですが、それでも違和感が無いのは、橋口監督が主人公の二人を丁寧に描いたからだと思います。
カナオと翔子の会話が長回しのシーンがあるのですが、本当にリリー・フランキーと木村多江の素ではないかと思う程自然に撮られていて、僕はもう途中から、「映画の中で作られた架空の夫婦」ではなく「きっと日本のどこかにいる本当にいる二人」としてスクリーン上の二人を観ていました。これは本当に監督と役者陣の力だと思います。
観客ではなく、二人の人生の足跡を見つめる傍観者の気持ちに本当になっていました。
だからこそ、子供が死んでしまうシーンが描かれていなくても、「二人で辛い日々を乗り越えたんだろな」と想像し、(でもそれはカナオと翔子の二人の問題であって、僕がそれを見る必要はないし、見るべきではないな)と感じました。
はっきりいって、お金払って映画観ている訳だからこれはどこか屈折している感情だと思うのですが、本当に二人に感情移入してしまうのです、滅多に無い体験でした。
法廷画家としてカナオは歪んで行く日本社会を見ていきます、また最愛の妻は精神を病んでいきます。
そんな中、カナオはただ一人変わらず、ただ優しく傍に居続けます。
目まぐるしく変化していく世界の中で、「変わらないこと」の強さ、優しさを橋口監督は描きたかったのではないかと思います。
前作『ハッシュ』から六年の間橋口監督自身も欝と戦っていたらしいですが、その様な経験が糧になっているようで、『ぐるりのこと。』は人生の本質を見つめた非常に素晴らしい作品となっていると思います。
また、役者陣も素晴らしいです。
本格的な演技は初挑戦のリリー・フランキーですが、「うまい・へた」で言えば決して上手いわけではないと思うのですが、とにかくいい味を出しています。
カナオの役どころが実際の性格と似ているのも幸いして、飄々としつつ芯が通っているカナオという人間をちゃんとスクリーンの上で見つけることができました。
木村多江もさすがの安定感で、表情や仕草で時の流れを感じさせてくれて見事な演技でした。
精神を壊す女性の役どころといえば、『シークレット・サンシャイン』のチョン・ドヨンもそうでしたが、それよりは抑え目で上品な演技で、ストーリー全体の雰囲気にフィットしていました。
また音楽も素晴らしいです。
ラストシーンを観ながらぼんやり、ここで『ジョゼと虎と魚たち』みたいにぐるりが入れば合うだろうな、なんて思いましたが、流れてきたakeboshiのperunaは映画に非常にマッチしていて、最後の最後で映画の質をもう一つ上にあげたな、と思いました。
と、ベタ褒めしてしまいましたが、今年のナンバーワン邦画大本命です。
もう一度言います、傑作です。☆5つ!!
☆☆☆☆☆

