恋人をそう表現する人もいる。
“空気”。
なくてはならない存在であり、
いつもそばにいることが当たり前の存在。
でも共に過ごすことがあまりにも自然で、
その存在をリアルに意識できないことさえある。
彼女にとって僕は、
確かに手ごたえのある、
“水”のような存在になりたい。
時に穏やか で共に揺らめき、
時にぶつかり波が立ち、
時にあたたかく、
時に冷たい。
それでいて“なくてはならない存在”。
彼女がいつでもリアルに僕を感じ取れる、
そんな存在でありたい。
彼女に出逢って数年が経ち、
恋人という存在に辿り着くことはないまま、
僕はいくつかの出逢いと別れを経験してきた。
同じように彼女もいくつかの出逢いと別れを経験してきた。
そんなお互いの経験の中で、
友達として、ひとりの異性として、いろんなことを語ってきた。
励まし。共感。戒め。
うれしい言葉も、時にきつい言葉も。
恋人のことをうれしそうに話す彼女。
けんかの愚痴をこぼしてる彼女。
泣いて電話をかけてきた彼女。
いろんな彼女を見守ってきた。
そうして過ごした数年間で、
友達としての、
そして友達以上の、
だけど恋人じゃない、
そんな関係を築いてきた。
少なからず彼女は友達以上の好意を持ってくれてると感じるし、
彼女も僕が時折みせる好意に気付いていることだろう。
でもふたりのタイミングが、なかなか彼女と僕を結び付けてくれない。
彼女が恋愛に夢中なとき、僕はひとり。
僕が恋愛に夢中なとき、彼女はひとり。
すれ違い。
「いつかは彼女と…」なんて漠然と考えてきたけど、
彼女と僕の恋愛は、きっとどちらかが一歩を踏み出さないと、
決して始まることのないものに思えてきた。
最高の友達だから居心地がよすぎて、
そして今の関係を少しでも壊してしまうのが怖くて、
これまでその一歩を踏み出せずにいた。
だけど何もしないままいつか後悔するようなことはしたくない。
だからその一歩を踏み出すのは僕。
彼女には今も恋人がいるけど、
僕はその一歩を踏み出すために恋人と別れ、
しばらく自分を見つめ直して気持ちを確かめる時間をつくってきた。
彼女に対する自分の揺るぎない愛情を確かに感じてる今、
僕は彼女のために、そしてふたりのために一歩を踏み出す。
今までの僕の恋愛を“寄り道”なんて
言葉で表現するのはちょっと失礼。
遊びで人と付き合ってきたことなんてないし、
付き合ってきた人を好きだったという気持ちに間違いはない。
だからいっぱい笑って、時々泣いてきた。
知らなかった自分の好みにも気付いた。
ずっと想い出にしたい写真もたくさん撮った。
その日が最高の一日だって思えるような旅行もした。
自分ひとりじゃ出逢えなかった仲間にもめぐり会った。
本気でぶつかり合うくらいのけんかもした。
今までの恋愛からほんとに多くのことを学んできたのは確か。
でもこれから彼女との恋愛が動き出すとしたら、
これまでのひとつひとつの恋愛は、
彼女に似合う自分に成長するための準備期間って思える。
そろそろ僕は彼女に似合う存在になれただろうか。
きっ と“完全”なんて概念はいつまでも感じえないと思うから、
お互いの足りない部分を埋めあって、
素晴らしい部分をより輝かせることができる関係でいたい。
彼女が僕を、そして僕が彼女を成長させて、
ふたりでちょっとでも“完全”に近づきたい。
出逢って数ヶ月、
彼女に年上の恋人がいることを知る。
そしてその恋人は僕にとっても大切な友人。
僕にとって彼女は友達。
彼女にとって僕は友達。
そんな距離感で知った恋人の存在は、
むしろ微笑ましいくらいだった。
彼女もその恋人も、“友達として”好きだったから。
でも思い返してみると、その恋人の存在が、
彼女を“友達以上”の存在として意識するきっかけだった。
「彼女が僕の恋人だったら…」なんて思い描いて、
彼女のいい部分も悪い部分も見えてきたりして。
誰にでも優しくいられる彼女。
小さなことにも感動を見出せる彼女。
素直に人と接することのできる彼女。
感受性豊かで涙もろい彼女。
しっかり僕を叱ってくれる彼女。
うつむいた横顔に雰囲気のある彼女。
時に子供みたいに無邪気に笑う彼女。
無理のない自分らしさを持った彼女。
彼女に対するそんなひとつひとつの発見が、
“友達”から“憧れ”へと感情を変化させていって、
気付いたときにはすでに手遅れ。
完全に彼女のこと、好きになってた。
彼女をつくる全ての要素を好きになってた。
1997年5月。
大学に入学して1ヶ月が過ぎた頃、
教室で友達と眺めていた求人情報誌がはじまり。
「そろそろバイトでも…」という、
平凡な大学生活の1コマに彼女との出逢いは潜んでいた。
偶然買った求人情報誌から
偶然ピックアップしたひとつの求人情報。
偶然にも条件が折り合って採用が決まり、
偶然彼女との出逢いがやってきた。
“偶然は必然なり”なんていったりするけど、
そんなこと歴史の中で作り上げられた
単純に格好いいだけの言葉だと思ってた。
でもある人が人生の中で偶然選択したことが、
また別の人が偶然選択した人生と交わって何かが始まる。
彼女と僕がある日、ある場所で偶然出逢ったみたいに。
それを考えると実は全ての偶然は見えない糸“String”で
必然につながっているんじゃないかって思えるようになった。
出逢った頃は彼女を意識することもなく、
自分にとって特別な存在になるなんて気付きもしなかった。
ひとりの友達。
楽しい仲間。
優しい女性。
今も彼女に抱くそんな感情に変化はないけど、
一緒に笑って、一緒に悩んで、一緒にバカやって、
言葉を重ねて、時間を重ねて、想い出を重ねて、
たくさんの要素が僕の感情を取り囲んで、
築き上げた彼女への想いはもはや“特別”。
出逢えてよかった。
2005年10月21日。
27回目の僕の誕生日に、
想いを寄せる憧れの女性に告白します。
彼女とは出逢って8年。
“男女の友情”でつながってきた、大切な親友のひとり。
よく「男女の友情なんてありえないっ!」なんて言うけど、
彼女との関わりは完全に“男女の友情”と確信できる。
それくらい大切な人。
彼女には恋人もいる。
僕にも数ヶ月前までは恋人がいた。
8年間、それぞれがいろんな恋愛をしてきて、
お互いの恋愛のひとつひとつを語り合って、笑ったり、悲しんだり。
親友だからこそ、たくさんの悩みも共有してきた。
彼女のことを好きという気持ちは、ずっと前から気づいていたけど、
その想いを伝えられずに、他の人との恋愛を続けてきた。
人間って立場というか関係が変わると、当然気持ちも変化すると思う。
だから“親友を失うんじゃないか…”って気持ちが大きくて。
でも今はもう違う。
今あるものを失うのが怖くて、
本当に求めているものを手に入れようとしないと、
最後に残るのは後悔だけだって思えるようになった。
それにたとえ結果がどうであっても、
彼女との友情は揺らぐものじゃないって思えるようにもなった。
“人生は挑戦するだけの価値がある”
昔、本で読んだこの言葉が自分の中に響き渡る。