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引きこもり文化祭短編部門入賞作品
タイトル『匂い』
※本作品はフィクションです。
実在の人物や団体などとは一切関係ありません。
私は『匂い』で人の感情が分かる。といっても分かるのは、相手が今抱いているのが正の感情か?負の感情か?くらいだが。
正の感情の匂いは甘く、負の感情は酸っぱい匂いだ。
この能力があれば人に好かれるのなんて簡単だった、私の言動で甘い匂いがした時はそれを続け、酸っぱい匂いがした時はそれを止めれば良いだけだ。
でも、ここ最近は上手く行かない。どの人に近付いても酸っぱい匂いが漂っていて、みんな私を悪く思っている。こんな能力要らない。人が怖くて怖くて仕方がない。
そうして人と会わなくなり、自分の部屋から出なくなり、ネットの世界にのめり込んだ。オンラインは良い。匂いがしないから。
…人と会わなくなってから何年が経っただろう?最近SNSで同じ能力を持つ人と知り合った。
もしかしたらこの人となら分かり合えるかもしれない、会ってみたい。
そう思った私はメッセージを送るところから始めて、徐々に徐々に仲良くなり、何とか会う約束を取り付けた。
約束の日、その人の話をいっぱい聞いて、能力のことも色々と教えてもらった。そして最後に一言「あなたは人を見た時には必ず、酸っぱい匂いが強くなっているね。」と教えてくれた。
あぁそうか。どの人に近付いても酸っぱい匂いが漂っていたのは、きっと自分から出た匂いだったんだ。他人の感情に怯えて負の感情を抱いていたのは私だった。
そう考えると少し救われた気がした。
ひょっとしたら真実は、あの当時は本当に全員から嫌われていて、自分から酸っぱい匂いが出ていたというのが勘違いかもしれない。
でも、昔の匂いなんて証明できない。私は私が救われた方を信じることにした。
続いて短文賞を載せます。
引きこもり文化祭短文賞入賞作品
タイトル『私が救われた一言』
「怖くない。」「大丈夫だよ。」という慰めや励ましよりも、「私も怖いよ。」という共感に何度救われて来ただろうか。
大賞を取られた作品、他の入賞作品については引きこもり文化祭(旧名 引きこもり文学大賞)の公式サイトをご覧下さい。
引きこもり文化祭はクラウドファンディングによる支援で成り立っています。
次回開催時は作品投稿か支援かどちらかの形で一緒に参加してみませんか?
きっと新しい価値観と出会えます。
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