ケイジ
青く突き抜ける空。高くまで広がる羊雲。
吹き抜ける風に優しく乗る夏の匂い。
薄い青と濃い赤を同時にイメージさせるような、
湿気の重みと太陽の清々しさが今にも夏を盛り上げようとしている。
青々と茂った木々の影に自分の思いを投影させて歩く。
ふと隣を通った男子学生の香水の匂いが鼻下を通る。
感じ事もない香りに心臓が一つ音を鳴らす。
響いた音の隣に同居するもう一つの想い。
同居する赤と青。今昔の感情がぶつかり合って衝動となって現れる。
出会いへの赤い感情。愛への憧れと涸れるほどに渇望する恋への執着。
青い思い出の感情。ミッドナイトのように落ちた太陽と化した思い出。
互いの感情がマッシュアップされるならとどれだけ願うだろう。
しかし、多感な少女の心にその余地などありはしない。
奇しくもリンクする夏の風景に合わない少女の落ちた背中。
歩み寄る静かな気配は蝉の鳴き声と共に葬り去られる。
そのどちらとも言われない色の建物に入る学生たちの色は白。
まだ染まることを知らない背中の中、紫の点が一つ。また一つ。
社会、組織、仲間、家族。様々な環境に左右される多感の城。
藁の屋根は吹き飛ばされ、木の壁は取り払われる。
レンガの奥に見え隠れするガラスのショーケース。
店員のいない店内は暗く、スポットライトがただ一つ真下を照らす。
オープンされない世界で唯一のテナントの鍵は固く何重にも掛けられている。
とここでストップ。
内ポケットで持ち込み禁止の携帯が振動する。
ゆっくりとクローズアップされた携帯画面には、待ちわびた名前。
一つ風が吹いた。周囲の音は遠い。
喉に抜ける新鮮な空気。時が一瞬止まってすら見える。
灰色の世界に極彩の光りが届いたのを忘れてはならない。
嘘だと頬を抓ったところで、誰も夢だとは疑わない。
閉じた携帯をもう一度開いてみる。間違いない。
涙が一つ零れた。
「今夜会えないか?」
青い感情に火が燈った。
吹き抜ける風に優しく乗る夏の匂い。
薄い青と濃い赤を同時にイメージさせるような、
湿気の重みと太陽の清々しさが今にも夏を盛り上げようとしている。
青々と茂った木々の影に自分の思いを投影させて歩く。
ふと隣を通った男子学生の香水の匂いが鼻下を通る。
感じ事もない香りに心臓が一つ音を鳴らす。
響いた音の隣に同居するもう一つの想い。
同居する赤と青。今昔の感情がぶつかり合って衝動となって現れる。
出会いへの赤い感情。愛への憧れと涸れるほどに渇望する恋への執着。
青い思い出の感情。ミッドナイトのように落ちた太陽と化した思い出。
互いの感情がマッシュアップされるならとどれだけ願うだろう。
しかし、多感な少女の心にその余地などありはしない。
奇しくもリンクする夏の風景に合わない少女の落ちた背中。
歩み寄る静かな気配は蝉の鳴き声と共に葬り去られる。
そのどちらとも言われない色の建物に入る学生たちの色は白。
まだ染まることを知らない背中の中、紫の点が一つ。また一つ。
社会、組織、仲間、家族。様々な環境に左右される多感の城。
藁の屋根は吹き飛ばされ、木の壁は取り払われる。
レンガの奥に見え隠れするガラスのショーケース。
店員のいない店内は暗く、スポットライトがただ一つ真下を照らす。
オープンされない世界で唯一のテナントの鍵は固く何重にも掛けられている。
とここでストップ。
内ポケットで持ち込み禁止の携帯が振動する。
ゆっくりとクローズアップされた携帯画面には、待ちわびた名前。
一つ風が吹いた。周囲の音は遠い。
喉に抜ける新鮮な空気。時が一瞬止まってすら見える。
灰色の世界に極彩の光りが届いたのを忘れてはならない。
嘘だと頬を抓ったところで、誰も夢だとは疑わない。
閉じた携帯をもう一度開いてみる。間違いない。
涙が一つ零れた。
「今夜会えないか?」
青い感情に火が燈った。
コンビンスド
私はね。幸せになりたいの。
確かにそのためにならどんな不幸も受け入れようと思っていた。
その証拠に、あの人といた時は、この人とならどんな時でもって思ってたのよ。
だけど、今の私はどう?
何もない。本当に何もないの。
私の気持ちを分かってくれる人なんていない。
だってそうじゃない。理解できるはずがない。
話は聞けるかもしれないよ?だけどそれは同情でしょ?
そんな気持ちでならそんな友達いらないわ。
同情なんてお金を払わなくたっていくらでも貰える。
私は、同情が欲しくて生きてるんじゃない。
私は、彼と一緒になりたいの。彼がいれば何もいらない。
本当に何もいらないんだから。だって彼が全てを持っているもの。
お金も地位も包容力も持ってる。それ以外に何かいるものなんてある?
あるなら教えて欲しいものよ。
私は全てを経験してきた。だから周りから羨ましがられる。
可愛いとか綺麗だとか。事実、男子は私に釘付けじゃない。
そんな私から彼を奪うなんて、酷すぎる。あんまりじゃない。
神様。なんであなたはこんなことをするの?
私には分からない。
私をこんな目に遭わせて、そんなに楽しいの?
私には、あなたの目的が分からない。
こんなことに何の意味があるのか。分かりたくもない。
でも、あなたを恨もうなんて思わないわ。
だから、もうやめて?もういいでしょう?もう十分じゃない。
毎日毎日、私がなにをしていて、どうなっているか知っているはずよ?
お願い。本当にお願いだから、せめてこの状態から抜け出させて頂戴。
もうこんな私を見るのも嫌だわ。
だから、お願いだから終わりにして。
これ以上何も望まない。私は、この状態から抜け出せるなら何もいらない。
彼に会いたいなんて、もう思ったりしない。
だからお願い。助けて。
神様。お願い。
私をここから助け出して。
確かにそのためにならどんな不幸も受け入れようと思っていた。
その証拠に、あの人といた時は、この人とならどんな時でもって思ってたのよ。
だけど、今の私はどう?
何もない。本当に何もないの。
私の気持ちを分かってくれる人なんていない。
だってそうじゃない。理解できるはずがない。
話は聞けるかもしれないよ?だけどそれは同情でしょ?
そんな気持ちでならそんな友達いらないわ。
同情なんてお金を払わなくたっていくらでも貰える。
私は、同情が欲しくて生きてるんじゃない。
私は、彼と一緒になりたいの。彼がいれば何もいらない。
本当に何もいらないんだから。だって彼が全てを持っているもの。
お金も地位も包容力も持ってる。それ以外に何かいるものなんてある?
あるなら教えて欲しいものよ。
私は全てを経験してきた。だから周りから羨ましがられる。
可愛いとか綺麗だとか。事実、男子は私に釘付けじゃない。
そんな私から彼を奪うなんて、酷すぎる。あんまりじゃない。
神様。なんであなたはこんなことをするの?
私には分からない。
私をこんな目に遭わせて、そんなに楽しいの?
私には、あなたの目的が分からない。
こんなことに何の意味があるのか。分かりたくもない。
でも、あなたを恨もうなんて思わないわ。
だから、もうやめて?もういいでしょう?もう十分じゃない。
毎日毎日、私がなにをしていて、どうなっているか知っているはずよ?
お願い。本当にお願いだから、せめてこの状態から抜け出させて頂戴。
もうこんな私を見るのも嫌だわ。
だから、お願いだから終わりにして。
これ以上何も望まない。私は、この状態から抜け出せるなら何もいらない。
彼に会いたいなんて、もう思ったりしない。
だからお願い。助けて。
神様。お願い。
私をここから助け出して。
コンディション
始まりがあって、終わるもの。それがこの世の全ての事象。
何かの本に書いてあったのを思い出した。
目の前には吐き出された汚物があって、僅かばかりの血が光る。
コンビニのトイレはキレイに清掃が行き届いていたが、
私が吐き戻したせいで、便座の周辺だけが汚く汚れてしまった。
毎日毎日こうして自分の前日の食物を拝むことに慣れてしまって。
すでに店員への申し訳なさなど起こらない。
鏡に映る自分は頬がこけて、乱れた髪の毛が口の中に入って
まるで悪女を演じる女優のようにも見えてきた。
水が口の中で温まり吐き出すと異様な匂いを醸し出す。
まるで体全体を覆うようなその匂いが嫌で何度も口をゆすいでいた。
今の私は、いったい何のために生きているのだろう。
不意に頭の中に疑問符が音を出す。
奏でられた音は低く、心臓のリズムに呼応するように胸の奥に響き渡る。
自分自身が何もしていないのに、何処かの誰かに不運が訪れていたりして
それがどうしようもなく心苦しくて、神様に祈りを捧げたくなるような。
罪を犯したわけでもないのに、パトカーのサイレンが近付く度
何処か物陰がないものかと必死に探してしまうような。
良いことを楽しいことを嬉しいことを考えようとしても。
その全てが過去の思い出へと立ち返り、また元の自分を映し出している。
今の私が、ここに生きている意味ってなんだろう。
一つの疑問符が、一つ。また一つと重なり合って。
協奏曲を構築したオーケストラが譜面とは違う音を鳴らし出す。
最後のホルンが鳴り出した時。油川の中にまた一つ疑問符が浮かび上がる。
神様は、私を助けてはくれないの。
何かの本に書いてあったのを思い出した。
目の前には吐き出された汚物があって、僅かばかりの血が光る。
コンビニのトイレはキレイに清掃が行き届いていたが、
私が吐き戻したせいで、便座の周辺だけが汚く汚れてしまった。
毎日毎日こうして自分の前日の食物を拝むことに慣れてしまって。
すでに店員への申し訳なさなど起こらない。
鏡に映る自分は頬がこけて、乱れた髪の毛が口の中に入って
まるで悪女を演じる女優のようにも見えてきた。
水が口の中で温まり吐き出すと異様な匂いを醸し出す。
まるで体全体を覆うようなその匂いが嫌で何度も口をゆすいでいた。
今の私は、いったい何のために生きているのだろう。
不意に頭の中に疑問符が音を出す。
奏でられた音は低く、心臓のリズムに呼応するように胸の奥に響き渡る。
自分自身が何もしていないのに、何処かの誰かに不運が訪れていたりして
それがどうしようもなく心苦しくて、神様に祈りを捧げたくなるような。
罪を犯したわけでもないのに、パトカーのサイレンが近付く度
何処か物陰がないものかと必死に探してしまうような。
良いことを楽しいことを嬉しいことを考えようとしても。
その全てが過去の思い出へと立ち返り、また元の自分を映し出している。
今の私が、ここに生きている意味ってなんだろう。
一つの疑問符が、一つ。また一つと重なり合って。
協奏曲を構築したオーケストラが譜面とは違う音を鳴らし出す。
最後のホルンが鳴り出した時。油川の中にまた一つ疑問符が浮かび上がる。
神様は、私を助けてはくれないの。