ストーリー短歌 -4ページ目

遠雷(2)

遠雷(2)


ち 誓わずもこの身のすべて捧げたき 燃える思いのほとばしり出て


り 理非よりも大切なものあることを 身に刻み知る炎(ほむら)の中で


ぬ 沼の縁立ちて水面の映し出す 白樺の木にじっと見蕩れて


る 流浪せし魂そっと受け止めた やさしい胸を忘ることなし


を 遠方(をちかた)に遥か離れていようとも 肌に刻みし誓いは消えず


わ 侘しさは胸に畳んで静やかに だだ耐えて待ついつか逢う日を


か 仮初めと言えど誓いを結びたる 熱き心を人には見せず

遠雷(1)

遠雷(1)


い 今もなお忘れられない面影は 胸に浮かべど霧に霞みて


ろ 櫓の音の聞こえるような静けさに ときめきさえも隠す術なく


は 恥ずかしく紅差すように燃えた肌 転げるように薄れた意識


に 滲み出る育ちの良さに打ち解けて 罪の意識も抱くことなく


ほ 仄灯り心にともす一時は 何に変えても守り通さん


へ 舳先から見つめる沖に蜃気楼 幻の街幻の山


と 戸惑いはやがて炎と燃え上がり 堰切る流れ止める術なく

トライアングル(8)

トライアングル(8)


ゑ 絵本でも書いてみたいな思うさま 大人の寓話夜は優しく


ひ ひまわりの一面に咲くあのシーン 目に浮かぶのよ一人の夜は


も モラビアのあの退廃があったなら 変われるものと隣の芝生


せ 背伸びしてそんな演技が身について とれない仮面今は我が顔


す 過ぎた日とこれから来る日結ぶ糸 ぶるぶる揺れてトライアングル

トライアングル(7)

トライアングル(7)


あ あるままに縛ることなく結ばれた 赤い糸には血潮がたぎり


さ 寂しいと言ってしまえばみな終わる 揺れる綱なら揺れつ渡らん


き きびきびと汗のしたたる激しさで わたし支えて回し続けて


ゆ 許されぬ恋であろうが恋は恋 生きる歓び離しはしない


め 迷惑と言わないけれどわかってる だから優しさ時に怖くて


み 未来など夢見はしない今だけを 悔いなく過ごす精一杯に


し 痺れるの痙攣するのこの体 泣きたくなるよでも泣かないよ

トライアングル(6)

トライアングル(6)


け 毛深くてタワシのような胸の中 なぜか安らぐ獣のように


ふ 振り切れてぶら下がってる夢を見た 闇の呼ぶ声間近に聞いて


こ 小ざかしい真似はしないで君らしく 真っ直ぐわたし求めてほしい


え 円を描きぐるぐる回る風車 握る指先振り切るように


て 点線で繋ぐ線でも結ぶ糸 惹き合う限り離さぬ誓い

トライアングル(5)

トライアングル(5)


の のっそりと起きていきなり抱きしめる 君の仕草に走る戦慄


お 思い切り骨が砕けてしまうほど 強く抱いてよ君の力で


く くすくすと悪戯笑いしたくなる 君の視線が焼け付くようで


や 安らいで眠る毛髪撫でながら 刹那の母は慈愛を込めて


ま 魔が棲むと気負ってみてもしかたない トライアングルただあるがまま

トライアングル(4)

トライアングル(4)


な 何となく照れくさいから目をそらし 次の仕草に思案を重ね


ら 落書きがしたいのならば思い切り 書いて刻んでこの柔肌に


む 結ぶ糸かすかに揺れてビブラート いいのこのままバランスとって


う 虚ろだと胸を抉ってみたとても 埋める真綿に血が滲むだけ


ゐ 居明かす日いつか必ずつくってね 揺れる振り子が千切れる前に

トライアングル(3)

トライアングル(3)


よ 陽気なの今日はいいことあったから はしゃいでみたい子どものように


た 玉手箱開ける思いがよくわかる 待っているものきっと幸せ


れ 連絡はできないけれど気にしない いつもあなたを待っているから


そ 反り返り芯の芯まで受け入れる このひと時は仮面のわたし


つ 通じても通じなくても同じこと 刹那に燃える思いは一つ


ね ねじ花に思い重ねてぐるぐると 螺旋を昇る強く激しく

トライアングル(2)

トライアングル(2)


ち 血の色の毒々しさが気をそそる 悪女でいいよ仮面も好きよ


り 理性など空の彼方へ飛んでゆけ 身軽になって飛び跳ねたいな


ぬ ぬるま湯とわたしを責める眼が寒い ガラスの心ひび割れの音


る ルールなど気にしていては生きられぬ わたしがルール流れる血潮


を 踊りたい飛び跳ねたいよ君の胸 溶ける意識が時を泳いで


わ 悪いって睨まないでよ冷たい眼 背中が寒い耳が冷たい


か 舵をとり揺れる小舟は右左 こちらもほしいあちらもほしい

トライアングル(1)

トライアングル(1)


い いいのだと言い聞かせてもまた揺れる 振り子の思い果てることなく


ろ ロマンスに騒ぐ血潮が胸抉る 知性もほしい若さもほしい


は はにかんで抱かれる胸は温かく 折れよと締める腕逞しく


に 虹の夢我が身貫き身悶える 七つの光トライアングル


ほ ほんとうに選ぶことなどできはせぬ どちらもほしい振り子のままで


へ 返答に困るけれども嘘をつく 好きなのはただあなた一人と


と 当惑し開き直ってまた揺れる 生きることって素敵だけれど