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ゑ 笑み浮かべそっと手を取り恋人に 思い伝えてしばしの別れ
ひ 肘鉄を食った相手も知らぬ顔 もう面倒はこりごりだから
も 物凄い歓声の中軍艦は 凱旋をするベネチア万歳
せ 戦利品担ぎ夫は妻の元 急ぎ足する再会の時
す 筋金の入った妻はにっこりと 微笑み伝う待ち遠しいと
あ 安全な海の上だよこの町は 土地は狭いが力は強い
さ さあどうだ二十連発受けてみろ ミケランジェロのつくった銃だ
き 金銀を求めユダヤの商人も 目をつけて住む賑やかな町
ゆ 夢求め財宝求め戦いの 火の手は上がる歓声の中
め めざす敵倒し夫が戻る日は そう遠くないやれ忙しい
み 身奇麗になっておこうか合鍵は どこに隠そう心の準備
し しばらくは逢えないけれど忘れずに 待っててほしいわたしのことを
け 喧嘩して捨てた燕が纏いつく 用心棒は誰にしようか
ふ 振られたら消えてほしいの潔く ねちねちしてももう戻らない
こ 恋歌を聴かせてほしい抱き寄せて ゴンドラを漕ぐ太いその手で
え 悦に入りそっと手を取り導けば すぐに聞こえる艶めきの声
て 天使さまどうかわたしを見逃して 懺悔は後でゆっくりするわ
お 思い出すわが故郷よわが妻よ 痛くはないか貞操帯は
く 勲章をもらいにっこり髭撫でて 自慢話に花を咲かせて
や やり遂げた満足感に浸りつつ 思い出すのはベネチアの町
ま まだ少し時間かかるが帰る日を 待っててほしい首長くして
な 成金になって帰るぞ故郷へ 妻の笑顔が早く見たいな
ら 爛々と目を輝かせ品定め 漁り尽くすぞ金目のものは
む むずかしい話少しも分からぬが 骨董品だ高く売れるぞ
う 海を越え攻めて落とした敵の城 続く酒盛り酒池肉林だ
ゐ 居明かして続く宴会果てしなく 酔いつぶれる間にこそ泥の音
の 飲みすぎてしくじったけど仕方ない なにお宝はきっと見つける
よ 夜になり忍び込む影招き入れ 艶めきの声歌うがごとく
た 頼りないだけどハンサム振る腰に 色香漂うわたしの燕
れ 連綿と思い綴った便りより 胸を打つのは君の歌声
そ 傍に来てわたしを抱いてその胸に そして歌って愛の讃歌を
つ 摘まみ食いしても晴れない胸のうち 罪の意識が捨てられなくて
ね 熱風に我が身晒してみたいのに 生きる歓び感じたいのに
ち ちらちらと受ける視線が気にかかる いいのよ今宵お気の召すまま
り リベラルな気風漂う夢の町 建てた鐘楼天にも届き
ぬ 盗人は密告させて裁判だ 嘆きの橋を渡れば牢屋
る 留守宅がどうも気になる兵士たち 上さんきっと元気でいると
を 折に触れ書いた手紙に返事なし いやな予感に夢見も悪く
わ 我儘で気も短くて腹立つが だけど可愛い恋女房さ
か 勝ち鬨を挙げて攻め込む敵の城 戦利品だぞ奪い尽くすぞ
い 戦場(いくさば)と化した街捨て海の上 自由の旗を高くかざして
ろ ロマンの灯ともすがごとき色に焼く グラスきらめくベネチアの名で
は 針地獄思わすような帯つくり 妻の身につけ戦いの地へ
に にっこりと見送り妻は合鍵を 探し求める自由の天地
ほ 彫り刻み放つ光は宝石か 血の色をしたベネチアグラス
へ 辺境で残した妻が気にかかる 身持ちの固い女だけれど
と とっぷりと暮れた運河に水の音 アコーディオンの調べ切なく
ゑ 餌を求む獣のごとくらんらんと 眼光燃える闇の彼方に
ひ 膝頭わななくような隙間風 血糊の臭い鼻突くように
も もうもうと立ち込む煙壁厚く 鼻を塞ぎて出口を求め
せ 攻める術失い闇に呆然と 立ち尽くす背に雷(いかずち)光り
す 捨て身にてこの闇駈けてくぐり抜け たどり着きたし人住む里へ
あ 暗幕を張り巡らせた部屋の中 手探り歩む心地に耐えて
さ 賽の目を投げる心地で右左 獣道行く暗夜の山路
き 気味悪い叫びを耳に伺えば 白衣の揺れて風はざわめき
ゆ 夢なるか現(うつつ)なるかも曖昧な 漆黒の闇手探り歩む
め めらめらと燃える炎が風を呼び 地獄の熱はひたひたと寄せ
み 身じろぎもできず震える膝頭 床はぎしぎし軋みを立てて
し しがらみに腕をくくられ身動きも できぬ体で闇を彷徨い