45冊目。

伊勢丹な人々 川島蓉子 日本経済新聞社

百貨店ビジネスが隆盛の80年代から衰退期/変革期の90年代を経ていく中、伊勢丹がファッションビジネスを基軸にどうサバイブしてきたか、どんなチャレンジをしてきたかのレポート。

解放区、リ・スタイル、BPQC、メンズ館といったことごとく業界の常識・定説に逆行する挑戦を成功させて来た企画部門・バイヤー部門のスタッフたちの言葉は、どこまでも熱い。
何も提案せずに何もしない不言不実行な人には居場所がないという、そのチャレンジングな文化が、売り場に豊潤なストーリーを語らせている。

そんな文化を象徴する、“55%攻撃論”。

「新しいことを提案するに際し、50%の可能性があると思ったら上司に相談、55%の可能性があると思ったら自分で判断し、勇気を持って実行する。ただ、後の45%は自分で努力して100%にもっていく」


伊勢丹な人々/川島 蓉子

¥1,575
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44冊目。

ご冗談でしょう、ファインマンさん(上)(下) R.P.ファインマン 岩波現代文庫

成毛眞氏が“持ってないと話にならない”レベルと称した一冊。
第二次大戦下、ロスアラモスでオッペンハイマー・チームの一員として原子爆弾開発に大きく寄与した天才物理学者。と、書いてしまうと複雑な感慨を抱かざるを得ない。
ノーベル賞受賞科学者、リチャード・ファインマンの自叙伝。

が、読み進んでいくとファインマン氏の純粋な真実への探究心に心打たれ、かたくなまでに自分流を変えない自由の人であり続けた彼に、強い憧憬を感じる。
社会に対する「積極的無責任者」と自称する彼は、時には画家として、音楽家として活躍し、はたまた精神拡張系の世界にも(「時代」か)、好奇心を隠すことなく飛込んでいく。
一流大の教授でありながら、意気投合した初対面の人と路上の落ち葉の中で眠る。

そして、自由でいることの孕む様々な障害にも正面から戦う。国家とも向かい合う。逃げない。
最終章、「カーゴ・カルト・サイエンス」と題されたカリフォルニア工科大の1974年卒業式式辞は、自由であり続けることと筋論を貫き通すことの大切さを力強く語る名スピーチ。


ご冗談でしょう、ファインマンさん〈上〉 (岩波現代文庫)/リチャード P. ファインマン

¥1,155
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ご冗談でしょう、ファインマンさん〈下〉 (岩波現代文庫)/リチャード P. ファインマン

¥1,155
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43冊目。

淋しきカリスマ堤義明 立石泰則 講談社

先月、2000年以降に起業されたIT系企業の本ばかり読んでいたので、バランスをとるためにオールドスクールの企業ものを。
西武鉄道の上場廃止直後に発刊された著作。
企業読み物というよりは、著者が17年(!)に渡って追い続けた「堤一族」の生い立ち、隆盛から衰退までを驚愕するほどの緻密さで書かれた「堤一族論」。著者は個人的な恨みでも持っているのかと思わせる、恐いぐらいの執念深いルポルタージュ。

奔放というような言葉では片付けられないほどの父・堤康次郎のアンモラルな私生活と、実父とは思えない徹底した帝王学教育によるトラウマが作り上げた、堤義明の特異な人格と経営手法の数々。
異母兄・堤清二率いる流通系のセゾングループと堤義明率いる西武鉄道グループの確執、異常なまでに旺盛な事業欲が産み出した複雑な節税システム、「土地」に対するこれも異常なまでの執着。
フォーブスで「世界一の金持ち」と評されることもあった堤義明の歪んだ人物像は、本書のタイトル通り、どこまでも淋しさを感じさせる。


淋しきカリスマ堤義明/立石 泰則

¥1,680
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42冊目。

葡萄酒か、さもなくば銃弾を 手嶋龍一 講談社

敬愛する手嶋龍一の最新刊。
ジョン・F・ケネディ、ロナルド・レーガン、バラク・オバマ、ヒラリー・クリントン、ヘンリー・キッシンジャー、小泉純一郎、麻生太郎、小沢一郎、安倍晋三、福田康夫ら29人の新旧政治家の光と影を追ったルポルタージュ集。
インテリジェンス戦争の最前線で戦い続けるものの志と業を鮮明に描く好著。

上述の超メジャーな人物のルポルタージュも面白かったが、ビル・ブラッドレーやヘルムート・コールといったスケールの大きな海外の政治家、谷内正太郎や若泉敬といった日本の官僚・学者のストーリーに深く揺さぶられた。

なによりも、知性と品格とユーモアのセンスに彩られた著者の文章を味わうことは、大きな愉楽。
そして装丁も素晴らしい一冊。


葡萄酒か、さもなくば銃弾を/手嶋 龍一

¥1,785
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41冊目。

美学vs.実利 西田宗千佳 講談社

「企業読み物」を読むのが大好き。理由は二つ。
一つは、丹羽宇一郎氏や成毛眞氏が力説するような疑似体験性。
もう一つは、素晴らしい文学作品を読んだ時のような感動的なエピソードに触れることが出来ること。

最も好きなビジネスストーリーの一つ、ソニーvs.任天堂のゲームビジネス覇権争い。
任天堂に共同開発を反故にされたソニーが、(当時)社長の大賀氏による有名な“Do it!”の怒声を皮切りに独自のゲーム機(プレイステーション)を開発していく、あまりにも有名であまりにも感動的なストーリー。
(大賀氏は叫んだのではなくそのバリトン歌手独特の低い声で呟いた、という説も有。)

主役は、ソニーの天才コンピュータ科学者・久夛良木健。

が、PS1開発のエピソードは98年に刊行された「ソニーの革命児たち」(麻倉怜士著)に詳しく描かれている。
本書では、これまでビジネス誌で断片的にレポートされるぐらいだった、PSP・PS3開発の裏話や久夛良木がソニー本社の副社長就任からSCEを退任してしまうまでの、「その後」のストーリーが時系列にそってまとめられている。

現CEOハワード・ストリンガーが「ケン(久夛良木)の知見は得難いものだ。でも、ケンはケンでありすぎるんだ」と評した、彼の激しく純粋なエモーションが作る「その先に続く夢」が早く形になることを待ちたい。


美学vs.実利 「チーム久夛良木」対任天堂の総力戦15年史 (講談社BIZ)/西田 宗千佳

¥1,890
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