先日、別の話題について検索を行っていたときに、Deepak Maholtra (ディパック・マホルトラ)が演説する以下のビデオに目がとまりました。
“Prof Deepak Malhotra - HBS - 2012 Speech to Graduating Harvard MBA Students”
何故かはっかり覚えていませんが、途中で、本来の検索を中止して、彼のビデオを見てしまいました。最初は、あまり面白いとは思いませんでした。ハーバード大学の教授であり、2012年のMBA(経営修士号)の卒業生に話をしていたのですが、服装が若干カジュアル過ぎるではなかと思い、また、話し方もかなり会話的だという印象を受けました。内容も、ちょっとおかしいと思いました。それを抜粋すると、演説の冒頭で、本題を紹介するために、次の衝撃的な提案を言います。
Here is my most immediately actionable advice for you:
Quit. To be more specific, quit early and quit often.
(意訳: 次が、皆さんが一番速やかに行動するための、僕からの提案です。やめる。もっと具体的に言えば、すぐにやめて、そして、頻繁にやめる。)
最初、この提案はあまりにも馬鹿げていて、これから巣立っていく卒業生に対してまったく不適切だと考えました。そこで、僕もこの教授の提案に従い、ビデオの観賞を止めようかとさえ思いました。でも、見続けて、よかったです。Maholtra氏の説明を聞きながら、彼の意見にだんだん引き込まれていきました。最終的に、私にとって、教訓があり、日本企業が採用できる教訓もあることが分かりました。
Maholtra教授の本題を簡潔に纏めると、人間が直ぐ、自分の得意分野、つまり、「天才」の部分がどこなのかが分かる訳ではありません。体操選手内村航平氏のように、何が自分の天才的なところか分かって生まれてきた人もまれに存在しますが、例外的です。もっと一般的なのは、何か仕事が好きそうなので、試してみますが、途中で、自分の関心や性格に合わないという悲しい発見があります。日本人なら、我慢する場合が多いです。僕のようなアメリカ人なら、その仕事を辞めます。
今でも、不安定な状態が続く日本経済では、好まない仕事であっても、すぐ辞めることは賢明ではありません。しかし、向いていないとか、嫌いな仕事を続けることも望ましくありません。それで、社員がストレスを感じ、病気になる可能性もあります。その上、個人のモチベーションが下がり、会社全体に悪影響を与えてしまいます。このように嫌いな仕事を我慢している社員の多い会社は、従来の競争力をなかなか維持できません。もちろん、それを引き上げることもできません。
こうした場合、一体、どうしたらよいのでしょうか。私の経験を振り返ってみましょう。10年以上前に勤めていた製薬会社で、医療研究を担当していた幹部から、彼の部下のケースを聞きました。その部下は一生懸命に仕事をしていたにもかかわらず、成果をあげていませんでした。反対に、間違いが多くて仕事の進捗を阻害する存在だったそうです。それぞれの部下の特技や弱点を把握していたこの幹部は、問題の根本的原因が分かりました。その部下は数字が得意ではありませんでした。そのような彼の弱点も、この部下に研修を受けてもらったことで解決できると思ったのですが、無駄でした。実際、成果の面で何も変化が起こりませんでした。部下がいつものように、一生懸命に勉強したり、仕事を遂行したりしていたのに。何も変化が表れないのを見て、幹部は部下にこれ以上その仕事を続けてもらわないほうがいいと悟りました。でも、自分の部門では、その部下ができる他の仕事がなかったので、どうしたらよいか困りました。そこで、幹部が部下の特技に注意を向けました。部下は手先が器用です。手品やものの修理のような仕事なら、きっとできると思いながら、幹部が人脈を通して、車庫の仕事を紹介しました。幹部が思ったように、この部下が速く仕事を覚え、見事な成果を出しました。おまけに、彼のモチベーションや自信がより一層高まり、組織全体に好影響を与えました。
その製薬会社の幹部の話しを聞き、僕も自分の部下に対し、同じように、特技を見極めようと努力しています。成果がよくない場合、その原因が本人の弱点だとわかれば、得意な仕事に異動する機会を探します。まず、部内で探しますが、見つからなければ、他の部門長と相談します。最悪の場合は、苦渋の決断を下し、解雇します。この対応は一見冷たいように見えますが、この状況では、解雇はむしろ適切で人道的な対処だと思っています。もちろん、できる限り、僕も人脈を活かし、適切な仕事を紹介したいと思いますが。
この方法を、日本企業に勤める幹部が直ぐ採用できない理由はないと思います。既にそうしている会社もあります。一番、成功しているのは、部下と個人的に知り合う機会を作る上司です。人間の中心となる特技、つまり、天才的なところを知るのには、いわゆる側面から見ることが不可欠です。特技を発見するには、部下の同僚と相談したり、部下自身と直接話したりすることが必要です。理想的には、上下関係の感覚が少し薄まる「ノミュニケーション」に連れて行って、部下の家族の話まで聞き出すべきです。
ところで、前述した内村選手が示すように、天才には遺伝的な部分もあります。読者の皆さんも知っていると思いますが、内村さんのご両親は両方とも体操の選手でした。そして、天才でない人も、ぜったいに得意な事があります。部下のそうした部分を注意深く、丁寧に見つけ出すのも、上司の大切な仕事なのです。
Maholtra教授の提案を採用する場合、苦渋の決断を避けることはできません。しかし、タイムリーにかつ適切な形で、「止める」上司は、意外に、社員満足度も、企業の競争力も引き上げることができるのではないでしょうか。
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アインシュタインは天才的な物理学者として知られているだけでなく、意味深い格言でも有名です。次の文章は、彼の有名な格言です。それを読んでから、質問に答えてください。
"Everybody is a genius. But if you judge a fish by its ability to climb a tree, it will live its whole life believing that it is stupid."
1. この格言はどういう意味ですか。これを通して、アインシュタインは何を教えようとしていますか。
2. この格言がどのように、今回のブログの話題に関連していますか。
3. どのように、この格言が伝える知恵を自分の仕事、人生に適用できるでしょうか。
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本ブログの著者ジョセフ・ガブリエラと杉本有造は、両者ともにMBAの保有者であり、英語と日本語の両方でエレベーターピッチを実施する豊富な経験を有しています。くわえて、両者の経験を活かして、ビジネスパーソンに対して、仕事の現場で直ちに活用できるエレベーターピッチの技法について指導しています。エレベータースピーチのテクニックを習得したいと思われている方に、二人の共著『エレベーター・スピーチ入門~アメリカビジネスで成功するためのプレゼンテーション&自己イメージ作りの技法』を読まれることを強くお勧めします。
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ジョセフ・ガブリエラ 博士/MBA
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杉本 有造 博士/MBA
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