【今回の記事】

①《加害母も虐待されていた!「8歳で両親が逮捕」3歳女児放置死は負の連鎖が生んだ悲劇か》(https://news.yahoo.co.jp/articles/d2cbe8611e3d9566e331a4011bbbefea861ede44)

②《大田区女児放置死事件、逮捕母の養護施設時代と事件後の行動》(https://news.yahoo.co.jp/articles/1c5d250d913ef74dfaddca255b5499e79a6fc266)


【記事の概要】

①「子供の頃児童養護施設から学校に通っていたという梯容疑者は、自信が8歳の時に母親から『身の回りのことをキチンとしない』等の理由で平手で殴られ全治2週間の怪我を負わされている。あばらや腰の骨が浮き出てるほどやせ細り食事を十分に取っていない状態だった。県警は母親を傷害と保護責任者遺棄、父親を保護責任者遺棄の容疑で逮捕した」「この事件も虐待の連鎖が生んだ悲劇なのだろうか」との記事。

②「彼女と同じ児童養護施設で生活した女性は『思い通りにならないと驚くほど態度が変わった。百人一首大会では札が取れないとイライラし、球技大会では張り切って練習していたのにチーム分けに不満があると途端にやる気をなくしていた』」との記事。


【感想】

 さて、精神医学の世界では、子どもは約1歳半までの時期に、今後の人生に対する「基本的信頼感・安心感」(「上手くやれる気がする」という本能的意識)を提供する「愛着」(別名「第二の遺伝子」)を獲得すると言われているそうです。その大切な時期に、記事①にあるようなあばらや腰の骨が浮き出てるほどやせ細り食事を十分に取っていない状態」にまで彼女を追い込んだ梯容疑者の親が、我が子にどんな養育をしていたかは想像に難くありません。事実、記事②にあるような「かんしゃくを起こしやすい」「ムラっ気があり怒りっぽい」とは愛着障害の典型的症状(→ https://ameblo.jp/stc408tokubetusien/entry-12277450211.html)です。彼女は間違いなく実の親から、極めて不適切な養育を受けていたと思われます。

 その「1歳半以前」という時期に余りに無力な乳児は「親でさえ自分を守ってくれなかった」と本能に刻み込み、その後出会う他者との愛の絆を自ら捨ててしまいます。以下の記事は、精神科医の岡田尊司氏が自身の著書の中で記した、正にその本能への刻印の瞬間です(→https://ameblo.jp/stc408tokubetusien/entry-12218068284.html)


 また岡田氏は「自身が乳幼児期に形成した不安定な『愛着(親との愛の絆)』は、子育ての中で、虐待や非婚化、セックスレスといった現象となって顕著に現れる(→ https://ameblo.jp/stc408tokubetusien/entry-12238705985.html)」とも指摘しています。今回、この母親が他者との絆を捨て去ったことで一番の被害を受けたのが、亡くなった女の子でした。実の子としてこの母親に最も近い立場にいたがために、絆の無い非情な関係を何度も強いられる結果になったと言えるでしょう。


 また、この事件をきっかけに「誰かから支援を受ける力」いわゆる“受援力”に注目が集まっているようです。岡田氏は、乳幼児期に母親から世話をされず、母親との愛の絆を捨て去った子どもは、必然的に他者をも信頼することも出来なくなり、自分以外の誰かにSOSを出せない「回避型」愛着スタイルの大人(→https://ameblo.jp/stc408tokubetusien/entry-12261672150.html)になるリスクがあるとも指摘しています。


 因みに、1歳半までの時期の養育が、成人後にも影響を及ぼすのは決して子育てだけではありません。鬱や不安障害、アルコール・薬物・ギャンブル等の依存症、 境界線パーソナリティ障害や過食症等の精神的トラブルや、離婚や家庭崩壊、結婚や出産の回避、ひきこもり、非行や犯罪等の様々な社会問題であることを、やはり岡田氏が指摘しています(→https://ameblo.jp/stc408tokubetusien/entry-12364364609.html)

 つまりは「虐待する親もいるが、そうでない親もいる。その違いは何なのか?」「未婚や離婚をする親とそうでない親の違いは何なのか?」「引きこもりによって『8050問題』を起こす人とそうでない人との違いは何なのか?」「凶悪犯罪を起こす人とそうでない人との違いは何なのか?」、それらの答えを知るための方法の一つが、その人自身が乳幼児期に親からどんな養育を受けていたのか?そのことに目を向けることなのです。