【今回の記事】

【記事の概要】
   子ども同士のトラブルは、ときに親の介入が求められるケースも。ユーチューバーとして活動している「ゆきだるま」さんが、公園で目の当たりにした出来事をブログで打ち明け、話題になっている。
公園で子供たちがトラブルに
   保育園の入園式の後、ママ友達と公園に行ったという「ゆきだるま」さん。すると、ある男の子が親達の目の前で、女の子の顔面を平手で引っ叩いてしまったという。派手な音とともに叩かれた女の子の顔は赤くなってしい、その時の状況について「ゆきだるま」さんは「見ていたこっちが呆然としてしまった」と振り返る。どうやら男の子は、女の子に触られたことが嫌で、咄嗟に手が出てしまったようだ。
親の対応は…
   叩かれた女の子は泣いたりすることはなく、その子の親も遠慮してかとくに何も言わなかったそう。かたや男の子の親は「ダメだよ~」と軽く注意するのみ。「男の子兄弟の末っ子だからこんな風になっちゃったんだよね~困る~」と言うばかりで、男の子が女の子に謝る、ということはなかったようだ。
「自分の子供がされたら…」
「ゆきだるま」さんは「私の心が狭いのかもしれないけど」と前置きし、「うちの子はみんな女の子だし顔面引っ叩かれたなんて聞かされた日には…」と本音を吐露。続けて「ダメなことはダメだって教えてあげないといけないと思うし、結果その子のためにもならないと思う」と親の対応に疑問を呈した。
「ありえない」と厳しい声も
   小さい子ども達の間で起こったトラブルについて切り込んだこちらのブログ記事に、多くのユーザーが反応。加害者側の親の対応について、厳しく指摘するコメントも書き込まれている。
「わあ…あり得ないですね。うちでは人に迷惑かけたり人を傷付けることをしたらめちゃくちゃ叱ります。でも確かに、最近はちゃんと叱れる親って少ないですよね」
   子どもを叱ることについては、子どもを育てる親の多くが日々悩んでいるポイントではないだろうか。


親のモラルは低下している?
   本編集部が全国の20~60代の男女1,342名を対象に「親のモラル」について調査を実施したところ、全体で7割もの人が「親のモラルは低下していると思う」と回答した。

特に40代~60代の女性は8割前後と非常に高い割合に。しかしながら、「子どもの叱り方」は子供を育てる多くの親が悩んでいるポイントではないだろうか。

【感想】
   今回のエピソード。小さな子供をお持ちの親御さんなら、いちどは見聞きしたことのあるシチュエーションかもしれません。

まず何をするか?
   このエピソードを紹介した「ゆきだるま」さんは、女の子を叩いた後の男の子の親御さんの対応に疑問を投げかけています。もしも、我が子が他のお子さんに危害を加えてしまった場合、どのように対応するのが良いのでしょうか?いかに私なりの考えをお話ししたいと思います。

①相手の子どもの具合をみる
②相手の子どもに謝らせる
   1番最初にするべき事は、危害を加えられた相手のお子さんの怪我の状態です。このことをさておいて、②を真っ先にする親御さんは、我が子、ひいては 親である自身の社会的な体裁を繕いたい、という意識が働いているのかもしれません。実際に、怪我をしているようであれば、一時も早くその処置をすべきです。
   そのことが済んだら、次に、我が子にきちんと謝らせます。ただし、親が感情的になって謝罪を“強要”すると、謝り方がいい加減になり、「悪かった」という気持ちが相手のお子さんに伝わらない場合があります。形式上だけ「ごめんなさい」と謝ったり握手をしたり することで、親は問題は解決したと思いがちですが、被害を受けた子どもからすると、「相手の友達はきちんと誤っていない」と認識し、後になって問題が再発することはよくあります。そのためには、子ども本人に自分のしたことを正直に振り返らせることが大切です。
   まずは、友達に危害を加えてしまった子どもの言い分を聞き、その気持ちに共感します(これが出来れば、その後の指導は上手くいきます)。そのうえで、「◯◯ちゃんを叩いちゃったね。どうすればいいと思う?」等と問いかけて、「あやまる」ことを自分の意思で決めさせます。このような「意思決定能力」は、自立した大人に育てるキャリア教育の重要な要素です。子どもがきちんと謝ることができたら、「ちゃんと謝ることができたね」と褒めることも必要です。「ありがとう」と「ごめんなさい」は、相手の「承認・尊重の欲求」を満たすうえで必要不可欠です。それが言えない子どもは、相手を欲求不満状態にしてしまうことになり、うまく人間関係を築くことができません。

③先方宅に謝罪に直ぐに電話
   ①と②の子供たちの問題場面を処理した後は、できるだけ早く、危害を加えてしまった子供の親御さんに謝罪の連絡を入れましょう。昨今は、昔に比べて特に子ども間のトラブルに親が介入するケースが多いので、怪我の有無に関わらず必ず必要です。

④学校や担任へ当日のうちに電話連絡(又は朝一の連絡帳による報告)
   もし、我が子と先方のお子さんとが同じ学校や同じ学級であった場合は、その時のトラブルが、学校で再燃する危険もあります。特に、危害を加えた子どもがきちんと謝ることができなかった場合は要注意です。翌日の子ども達の学校生活がスタートする前に、担任の先生に知らせておく事は、担任が適切な児童観察・指導をするうえで必要不可欠な情報になります。

この事例の場合 他にも留意することが…
「女の子に触られたことが嫌で、咄嗟に手が出てしまった」
という今回の男の子。ただ、「触られたくらいで相手を叩くのはオーバーだ!」と感じる方もいらっしゃるのではでしょうか?このような「反応がオーバー」という反応は、“感覚過敏”が特徴である自閉症スペクトラムの傾向が強い子ども独特の特徴です(他には「とても真面目で正義感が強い」「心配性」「神経質」「融通がきかない」「新しい人、物、環境に順応するのが苦手」等)。私の経験上、親御さんがこれらの特徴を持っている場合、そのお子さんも同様の特徴を示すことが多いようです。
   特に、この“感覚過敏”の実態を把握せず、それにそぐわない指導をすることは非常に危険です。私が現職だった頃、高学年の2人の男児が廊下を走ていたところ、たまたま出くわした教諭から、烈火の如く叱られました。するとその後、一人は何事も無かったかのようにケロッとしていましたが、もう一人の子どもは廊下で人目もはばからず号泣してしまいました。実はこの子は以前神経性の脱毛症を発症したことのある、正に“感覚過敏”の子どもでした。この子にとっては、教師からの厳しい叱責によって、ほとんどパニック状態に陥っていたと思われます。そういう経験をした子どもの心には、消えることのない傷が付くことも十分あります。
   しかし、子どもを肯定的に認める「愛着7」で接していれば問題はありません。たとえ自閉症スペクトラムの傾向が障害域にあっても、また、他の発達障害であっても大丈夫です。なぜなら「愛着7」はユニバーサルデザイン(文化・言語・国籍や年齢・性別などの違い、更に、障害の有無や能力差等を問わずに利用できることを目指した設計)による支援ですから。
   
公共施設内での反応は?
「親のモラルは低下していると思う」と回答した中で、特に40代~60代の女性は8割前後と非常に高い割合になっています。因みに、公共の施設や交通機関を利用する方として、この「40代~60代の女性」の割合は非常に高いので、不要なトラブルを避ける意味でも、親は我が子を自分の目が届く場所に居させる等、いつも様子を確認できるようにしておく方がいいと思います。また、公共の場に臨む直前に、その場で守るべきマナーについて子どもに具体的に伝えておき(「お店の中では走ったり大きな声を出したりしない」「お店の中ではお母さんと一緒にいる」等)、その後守れたら必ず褒めるようにすることも大変有効です(幼い子どもの公共の場での指導については「公共の場で走る、騒ぐ1~2歳児!外での子どもの指導の仕方」参照)。