(この「愛着の話」は精神科医の岡田尊司氏を中心に、各専門家の文献を、内容や趣旨はそのままに、私が読みやすい文章に書き換えたものです)


   少し堅苦しい話になってしまうかもしれませんが、私のこれまでの30年の教員経験の中でとても重要な意味を持ってきたお話をさせていただきます。
   アメリカの心理学者アブラハム・マズローによれば、人間には生きていくために満たされなければならない五つの欲求がある(「五段階欲求説」)とされています。それは、以下の5つです。
①生理的な欲求(寝たい、食べたい、排泄したい等)
②安全性の欲求(戦争、DV、いじめなどが無い安全な環境の中で生活したい)
③所属・愛情の欲求(誰かと愛の絆で繋がっていたい)
④承認・尊重の欲求(他者から認められたい、他者から大切に思われたい)
⑤自己実現の欲求(自分らしく生きたい)

   子どもが何らかの問題行動を示した場合、それは、これらの欲求のどれかが満たされないでいる証拠です。いわゆる“欲求不満”によるストレス状態です。このことが理解されていないと、子どもが何らかの精神的な問題(「『学校に行きたくない』と渋る」「親に向かって暴言を吐く」等)を起こした時に、今どの欲求が満たされないでいるのか、その原因を見極めることができません。つまりこの各段階は、問題を抱えている子どもを分析する際の観点として活用できるものなのです。

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   さて、「五段階」というように、これらの欲求には優先順位があります。人間が最も優先して満たしたいと思う欲求は「生理的欲求」です。この一番優先されなければならない欲求が満たされない限り、次の「安全の欲求」を満たしたいとは思いません。以下も同様です。
   しかし、稀に、ある段階の欲求が満たされていなくても、更に一段階高い上位欲求が満たされることによって、それまで満たされていなかった1段階低次の欲求も自動的に満たされることがあります。例えば、母親からの愛情不足のために三段階目の「所属と愛の欲求」が満たされていなくても、仮に、自分のしたことが誰かの役に立ち母親から認められ、四段階目の「承認(尊重)の欲求」が満たされると、そのことによって、母親から承認された自分が、まるで母親から愛情を受け、母親に所属したかのような満足感を得るような場合です。
 それでは、次回から各段階の欲求を一つ一つ見ていきましょう。

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   これまで、「愛着の話」は、投稿記事とは別に断続的に投稿してきました。そこで、現在の“場所”について確認したいと思います。今回の記事は下記「目次②」の第4章の6項目めに当たります(全5章)。