【今回の記事】

【記事の概要】
   2月4日放送のテレビアニメ『サザエさん』(フジテレビ系)で、カツオがテスト勉強に励むシーンが登場。カツオが勉強を開始した理由が、視聴者を感動させたようだ。
   この日放送された「雪が降るからやめて」というエピソードでのこと。珍しく波平がフネの肩もみをすると、フネは「明日雪が降らなければ良いんですけど」とポツリ。それを聞いたカツオは、「よしてよ、父さん。明日みんなで遊園地に行くんだよ」と動揺する。
   翌朝、本当に雪が降ってしまい、カツオが楽しみにしていた遊園地行きは中止に。「慣れないことをすると雪が降る」というジンクスを真に受けたカツオは、これから何か大切な行事があるときに「みんな慣れないことをしないようにしよう」と提案する。
   次の日曜日、波平が参加するゴルフコンペの日が快晴になると、カツオは「僕に感謝して。この一週間、全然勉強しなかったんだよ」と発言。自分がいつも通り勉強しなかったおかげで晴れたと得意げに語るカツオに、波平は複雑な表情を浮かべる。
   そんなカツオに、ワカメは、カツオがテストで悪い点数をとると、お母さんが悲しそうな顔をすると発言。カツオはショックを受けてしまう。そして、その日の晩、カツオは布団を抜け出して、明日のテストに備えて勉強を開始する。
   母親を悲しませないようにテスト勉強を頑張るカツオに、多くの視聴者が感動。ネットには母親思いのカツオを称賛するコメントが多数上がっていた。
   結局、猛勉強したカツオのテストの点数は、ケアレスミスもあって「48点」といま一つ。しかし、母親のフネは「頑張ったじゃないか」とカツオを褒め、「問題をよく読めば解けたんだろうからね」と、答案用紙からカツオの努力を感じとっていた。

【感想】
   カツオが母親のフネを悲しませないために猛勉強する姿に共感する意見が多かったようです。しかし、その頑張りにも関わらず「48点」といういま一つの結果になるところが、実にリアリティーある展開だと思います。
   実は、私が目を引かれたのは、そのいま一つの結果だったカツオのテストに対する母親のフネの以下の対応の仕方です。
『頑張ったじゃないか』とカツオを褒め、『問題をよく読めば解けたんだろうからね』と、答案用紙からカツオの努力を感じとっていた。
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私がこのフネの対応の仕方で感心したのは、次の4つのことでした。
指導の順番
「ケアレスミス」の捉え方
評価の対象
評価の方法

   以下に、それぞれについてお話ししたいと思います。

指導の順番
   フネは「48点」といういま一つの点数にも関わらず、まず始めに「頑張ったじゃないか」と褒めます。そしてその後に問題をよく読めば解けたんだろうからね」と「問題を良く読むように」という指導をしています。
①褒める(子供の気持ちを受け止める)
②指導する
子供を指導するときには、この順番がとても重要になります。最初に指導から入ると、子供は「ダメ出しされた」と塞ぎこんでしまい、その後の言葉が聞こえてきません。しかし、最初に、良いところを褒めたり、子供の気持ちを受け止めたりすると、その大人に対して心を開くので、その後の指導の言葉も良く聞こえてきます。

「ケアレスミス」の捉え方
「ケアレスミス」と言うと、とかく何やってるの?!」と否定的に捉えられがちです。仮に上記の順番を守ったとしても、②「だけど、どうしてこんな簡単なミスをするの?」等と否定的な指導をすると子供は落ち込んでしまうでしょう。しかし、フネは「問題をよく読みなさい」という内容の指導をしながらも、「それが出来ていればもっと解けていた」と、カツオにはまだ良くなる可能性、“伸びしろ”があるのだと肯定的に捉えています。この「……してれば、“もっと”良かったね!」という言い方ならば、現在の子供の状態をも肯定的に捉えているので、「問題をよく読みなさい」という指導が子供によく聞こえるのです。
   私事ですが、亡くなった私の父も、子供だった頃の私達の通信票を見る時に、度々この言い方をしてくれたのをよく覚えています。だから、そう言われた時の子供の気持ちが分かるのだと思います。今更ながら父に感謝です。

評価の対象
   上記記事では「答案用紙からカツオの“努力”を感じとっていた」とあります。つまり“点数”という結果」ではなく、「“頑張った”じゃないか」という「努力」を評価しました。以前もお話ししましたが、親が「結果」と「努力」のどちらを重視するかによって、子供の価値観に大きな影響を及ぼします「結果」を重視している親の下では、子供は「出来ないことは恥ずかしい」と認識するようになり、自分の非を自分から伝えようとしなくなります。“悪いテストを隠す”というレベルであるうちはまだ良いのですが、自分がいじめられていたり、法的に許されない行いをしたりした時にも、親に隠そうとするケースも生じます。

評価の方法
   この時のカツオの点数は「48点」でしたが、「サザエさん」の設定では「いつもは20~30点くらい」(「Y!知恵袋」への詳しい方の回答より)とされています。それに比べれば、「48点」という点数からは、本人が“今までに比べて頑張った”という事を汲み取ることができます。
   因みに、カツオは一度だけ「77点」という点数を取ったことがあり、マスオさんから「(カツオくんにすれば)天文学的な点数」と言われ、その日の磯野家の夕飯がご馳走になったというエピソードがあります。如何にカツオの普段の点数が良くないかが分かります😅。
「48点」という点数は、他の子供に比べるとまだまだの点数ですが、他の子供と比べないで、以前のその子と比べる評価の仕方を縦断的評価」と言い、どんな子供でも褒めることが出来る評価方法です。
   因みに、「縦断的」があれば当然「横断的評価」という評価方法もあります。これは、その子の中で特に優れている点を褒めるものです。

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そう言えば、フネさんは、いつも微笑んで、しかも優しい語り口調ですね(いずれも「愛着7」の中の愛情行為です)。そのフネさんのこの“神評価”。これは単なる偶然でしょうか?もしかしたら、この回のプロデューサーが、そういうフネさんに合ったセリフを用意したのかもしれませんね。
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