終わったボクサー再起への心!輪島vs柳 | BOXING MASTER first 2006-2023

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輪島功一選手の試合に感動、16歳でプロボクサーを志し、ボクシング一筋45年。ボクシングマスター金元孝男が、最新情報から想い出の名勝負、名選手の軌跡、業界の歴史を伝える。

昭和50年6月7日、北九州市立総合体育館。1万2千人の大観衆は、固唾を呑んでその光景を目撃した。WBA世界Sウェルター級王者輪島功一(三迫)選手は、7回挑戦者 柳 斎斗(韓国)の右ストレートから返しの左フックを喰らい痛烈なダウン。

奇跡vs地獄・炎の信念・輪島vs 柳



倒れた瞬間、これは立てないと感じさせた。カウントが入る。キャンバスでもがくチャンピオン。戦う者の本能。闘争心だけで立ち上がった輪島選手。試合は続行。だが、もう何もする事は出来ない。2度目のダウン。だが、また立ち上がる。

放送席の矢尾板貞雄氏が思わず叫ぶ、「危ないですよ」



立っているのがやっとのチャンピオンに襲い掛かる挑戦者。3度目のダウンで王者の仕事は終わった。韓国3人目の世界王者誕生。狂喜する韓国陣営の傍らで前王者は介抱を受ける。 



ボクシング史に残る痛烈なノックアウト劇だった。敗れたりとはいえ、2度に渡り立ち上がった輪島選手の姿には、大いに感動させられた。控え室、夫人とまだ小さな長女大子ちゃんが横たわる輪島選手に駆け寄る。

「終わったよ。終わったよ・・・」

「放棄試合を申し立てれば良かった。私のミスだ」



5回終了後のアクシデントを悔しがる三迫会長。しかし、勝負は決したのだ。韓国国民の期待を一心に背負って戦った 柳 は、一躍国民的ヒーローに駆け上がった。帰国後のパレードでは大歓迎を受け、大統領直々に勲章も貰った。





「あんな負け方して、意外に評判いいんだよ」

世界王座転落から1ヶ月。前王者の色紙には、”世界一へ一心”と書きつづられていた。あれほどの負け方をしたにもかかわらず、もう一度戦うのだという輪島選手は、 柳 戦の敗北をこう分析した。

「気力の差だった」

「チャンピオンとしての余裕や寛容さを持ちすぎていた」

「あんなパンチ(5回終了後のダウン)を喰ったのは、 柳 が燃えていたからさ」

アクシデントの事は一つも言い訳にしなかった輪島選手。体も軽かったという。新しい炎は、もう燃えていた。


映画。 柳 斎斗物語。凄い人気です。

「打ち合って倒されたのを無謀な策というヤツがいた。それなら逃げまくって引き分けにすればいいのか。俺は、打っていく。それがボクシングだろう」

竹原慎二サウナスーツ館

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ダイレクト・リマッチは禁止されている。チャンピオン 柳 の初防衛戦の相手には、後輩であり三迫会長の甥に当たる三迫将弘選手が選ばれた。予想はウェルター級上がりの挑戦者絶対不利。そんな中、挑戦者の勝利を予想する関係者が一人。「三迫君が勝つんでしょ」

元日本バンタム級王者のテクニシャン石橋広次氏である。石橋ジム会長でもある元王者は、韓国リングで愛弟子のスチーブン・スミスを 柳 と対戦させた事がある。敗れはしたが、スミスは 柳 をKO寸前まで追い込んでいる。また、スミスの同僚沖田 健 もかなりの線まで 柳 を追い込んだ事実があった。

「輪島君に勝った時の印象が強烈なので、みんな強い強いっていうど、けして勝てない選手じゃない」(石橋氏)

前の試合の強烈な勝ち方(負け方)だけで、相手を判断したくなりますが、いい試合の後は悪いものですね。勝ち方だけで強いというものではないボクシング。

11月11日静岡市駿府会館。「リングで君が代を聞きたい」夢を果たした三迫選手は大健闘。4回には王者をダウン寸前に追い込んだ。弱点をさらけ出したチャンピオン。だが、打つパンチがあまりに当たるばかりに、調子に乗って打ち合ってしまった挑戦者は、コーナーの指示「打ち合っちゃダメ」を忘れ打撃戦を挑む。



6回捕まった挑戦者はついにダウン。3度のダウンでKO負けとなったが、善戦大健闘。「三迫のパンチは効いた」と世界王者に言わしめた。次は輪島選手の出番だ。

アルバラード相手に一度奇跡を演じている輪島選手。予想は圧倒的に不利。なにかやってくれるかもの期待感はあるが、やっぱりダメだろうの悲観論の方が強い。お金目当てと決め付ける輩もいた程だ。

昭和51年2月17日。はやる気持ちを抑えてTVの前に座った私は緊張していた。放送開始。日大講堂の控え室が映し出されたその映像にはマスクをした輪島選手が。これには、エッ、中止なのかと思ってしまったほど驚いた。

1万2千人の大観衆。長女の大子ちゃんからは、「パパ頑張ってね」の言葉。世界9位の挑戦者は、「やるだけ。まな板の上の鯉・・・」という言葉を残して花道に消えた。

「炎はまだ消えていません」故・逸見正孝アナの声に乗って入場する輪島選手。背広姿の三迫将弘選手が、心配そうに付き添う。リベンジの時は来た。 - 続 く ー

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