カシアス・クレイ生誕67年・来日の裏側
4年前計画されていたクレイ招聘は、徴兵問題でたち消えとなっていた。クレイの試合が実現したのは、4年前からのクレイ担当者 康 芳夫氏の執念である。34歳の青年実業家 康 氏は、ボクシング界とはなんの繋がりもない。

康 芳夫 氏。
ボクシング協会とのパイプ役は、当時協会副会長であった協栄ジム・金平正紀会長が受け持つ事に。しかし、まだ38歳の若さだ。金平会長は、”天下のご意見番”業界の大久保彦左衛門といわれた日東ジム・益戸克己会長(73歳)を伴い、JBC説得に動く。
TVはテレビ東京。そして、電通が全面的バックアップを申し出、ここに舞台は揃った。プロモーターは、あくまで 康 氏率いるプライム・オーガニゼイション・インターナショナル社である。JBCは、1千万円の委託金と引き換えに、1回限りのテンポラリー・プロモーター・ライセンスをプライム社の肥田 彬 氏に与えた。
「すじも通っている話なので、今回に限り認める事にした」(JBC菊池事務局長)

金平会長は、TV東京のプロモーター。前年、自らマネージする人気世界チャンピオン西城正三選手の専属契約を日本TVからTV東京へ移した。あわてた日本TV。しかし、これは両局トップが話し合い、交互で放映する事で収まる。
西城選手がTV東京へ移籍する条件は、後楽園ホールの試合の定期放映。業界の底辺育成を見据えての事である。昭和46年(1971年)2月28日放映された西城vsクロフォード戦は、93年のサッカーW杯予選(48・1%)に抜かれるまで、長らく同局視聴率1位の座に君臨していた。その数字、34.9%。
ボクシング協会へもプロモーターから協力金五百万円が捻出された。後日、このお金の扱いを巡り、協会は紛糾するのだが・・・。
世紀の一戦。世界ヘビー級1位カシアス・クレイvs同級7位マック・フォスター。当時としては破格のリングサイド3万円。日本のマスコミは、興味半分。プロモーターの財布ばかりに気をとられていた感がある。

アリも掃除する。(~~)
クレイのファイトマネー40万ドル(約1億2千万円)が破格なら、フォスターの8万ドル(約2千5百万円)も、「こんなにもらえるのか」という金額。プレイガイドでは、同時期行われる大場vs花形のフライ級日本人対決は売れ、ヘビー級戦はいまひとつという。
前年3月、世界ヘビー級戦フレージャーvsクレイをニューヨークからTV中継した時の放映料は4千万円。やっぱり凄いです、TV東京。そして今回は8千万円。「40%もいってくれれば」現場のせつなる願いである。
真昼の決闘。米国に合わせた試合開始時刻は正午。4月1日土曜日の昼。週休2日ではない当時。土曜は学校も半ドンだった。TV東京は、昼の放送の他に午後8時からの再放送を決めた。

宇宙中継の取り持ちは、トップランク社に決まった。米国以外からも引き合いがあり、お隣り韓国への放映も決定。4月1日、日本武道館は観衆1万4千人と発表された。試合は15回判定でアリが圧勝。つまらないと見る向きもあったが、フォスターは試合後3日間ほど入院している。
さて、気になる我らがTV東京の視聴率は23.6%。この数字は90年代まで同局歴代4位の座をキープ。なかなかの健闘ではと思います。
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興行の採算を握るのは、宇宙中継料とクローズド・サーキットの売り上げ。劇場中継が家庭での個別購入へ変わった以外は、現代のシステムと相違ない。今から40年近い昔、ボクシング素人の青年が大きな仕事をやった。
「一世一代の大勝負」( 康 氏)
ボクシング界の窓口は金平会長。金平会長は窓口の責任を、益戸会長の協力で成し遂げる事が出来た。時は過ぎ、ある平成の昼下がり。
「大竹さん、ビール持ってちょっと来てください」
出掛けていった先は、益戸会長の眠るお墓。
「お世話になったんですよ。益戸さんには」
金平会長と二人して、故人のご冥福を祈ったそうだ。
「ああやって、色々教えてくれたんだなァ」
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