そもそも本当の問題は何だろう?
1月14日(金)
こんにちは。田村真二です。
先日、フィットネスクラブを経営する社長からこんな相談がありました。
「コロナの影響や24時間ジムの出店増により、会員数が●割ほど減って困っています。ご相談させていただきたいのですが・・・」。
その少し前には、関西方面で24時間ジムを10数店舗経営する社長からも同じようなご相談を受け、私のオンラインセミナーに幹部社員とともに参加されました。
私は、相談や解決を依頼された「問題」は、そのまま真に受けることはまずしません。
なぜなら、「クライアントが考えている問題は、本当の問題ではない。本当の問題は別にあるはず」と、つねに本当の問題に迫るようにしているからです。
そもそも、クライアント自身が本当の問題を理解しているのであれば、自ら解決策を見いだすことができるはず。
ところが、表面的な問題の裏に隠れた本質的な問題というのは、そう簡単にたどり着くことができません。
事例を1つ紹介します。
以前私が勤めていた会社が経営していたあるフィットネスクラブを、建物オーナーに経営移管することになり、移管交渉を私がオーナーとしていたときのこと。
交渉が失敗に終われば、原状回復費用などを含めて会社に1億円以上の損失を発生させてしまう重要案件です。
度重なる交渉過程から、オーナーが経営移管を受け、自ら経営する意志のあることまではわかっていましたが、なかなか「受けます」とは言ってくれませんでした。
交渉事や問題解決は経験値の世界なので、「場数」がものを言います。
当時の私は今とは違いまだ30代半ば。しかも、このような交渉は初体験でしたから、百戦錬磨のオーナー相手に落としどころが見いだせず苦労しました。
経営学者が教える「答えのある問題」ではなく、現実のビジネスの問題にあらかじめ答えはありません。
私は通常業務をしつつ経営移管を成功させる解決策を四六時中考えましたが、一向に答えは見つかりませんでした。
1億円以上の損失を会社に与えるか、それともオーナーに経営移管をして会員様に引き続きクラブライフを楽しんでいただけるか。
胃がキリキリして眠れないとは、まさにこのときの私でした。
しかし、私(や会社)に前者の道はありません。なんとしてもこの交渉をまとめなければならなかったのです。
そんなときふと、「私がオーナーの立場なら、経営移管を引き受けるに際して何が問題なのか」と自問自答しました。
とはいえ、私はオーナーではないのでわかりません。
そこで、交渉の場では、交渉人というよりもコンサルタントとしての立場で(オーナーに対して)オーナーの問題や課題、不安や願望などいろいろ質問してみたのです。
すると、オーナーは小声でこう言いました。
「経営を引き次いで運営する自信はあるけど、トレーニングマシンが古いんだよね」。
私は思いました。「ああ、オーナーの本当の問題(不安)は経営を引き継ぐことが嫌なのではなくて、トレーニングマシンが古いため自分が経営を引き継いだら新たな投資が必要になることを心配しているんだな」と。
確かに、そのクラブのトレーニングマシンは利用率が非常に高かったうえに、7~8年使用していましたので入れ替えの時期ではありました。
とはいえ、こちらとしてはそんなことはまったく考えていませんでした。しかし、相手の本当の問題や不安を理解することができれば、解決策は見出せます。
オーナーの本当の問題を知った私は、リニューアルを予定していた近隣店のトレーニングマシンを移管先クラブのトレーニングマシンと入れ替えるオファー(提案)をしました。
するとオーナーは、「えっ、本当ですか。本当にトレーニングマシンを入れ替えてくれるのですね。それでしたら(経営移管を)引き受けます」と言ってくれたのです。
私はそのとき思いました。
交渉の場では、こちら側の都合だけではなく、まずは相手の本当の問題や不安の理解に努めることが大切なことを。
もちろん、何でもかんでも相手の要望に応えることが優れた交渉ではありません。
しかし、交渉においては、まずは相手の理解に努め、こちらができることを考えたうえで落としどころを見出すことが(双方にとって)大切です。
そもそもクライアントや相談者の「本当の問題」は何だろう?
私は今でも当時のことを忘れず、クライアントや相談者の心理に迫り、「本当の問題は何だろうか?」とつねに考えることを習慣にしています。
いわば、それこそがコンサルの「本質」だからです。
つまり、交渉や問題解決には、何が本当の問題なのかをきっちり見極めることが非常に重要だということです。
「表面的な問題にとらわれず、問題の本質に迫る。」
これを「イシューからはじめる」と言いますが、これが上手くできるようになると、問題解決全体の半分はできたことになります。
それでは次号をお楽しみに!
