打ち手に悩むフィットネス経営者がまずやるべきこと
2025年6月17日(火)
こんにちは。
サクセス発行人の田村真二です。
先日、あるフィットネス企業の社長から、経営に関するご相談を受けました。詳細は差し控えますが、おそらく同様の悩みを抱えている経営者の方は少なくないはずです。
そこで今回は、可能な範囲でその相談内容と、私が伝えた「最初にやるべきこと」について共有したいと思います。
その社長からの相談は、こういうものでした。
「コロナ禍以降、会員数・売上ともに減少し、経営が非常に厳しい状況です。社内でもキャンペーンや価格見直しなど、いろいろ打ち手を講じてきましたが、期待する成果が出ていません。正直、何をすればいいのか分からないのです・・・」
このような声は、今や全国のフィットネス施設で聞かれることも珍しくなくなりました。
いきなり「打ち手」を探すのは危険
こうした状況に直面したとき、多くの経営者がすぐに「何か良い打ち手はないか?」と探し始めます。そして、他社で成果が出た手法を参考にしようとします。
しかし、それは本当に「最初にやるべきこと」なのでしょうか?
結論から言えば、いきなり施策に飛びつくのはリスクが高いと言わざるを得ません。
地図や装備品の準備をしないままいきなり登山に出るようなもので、目的地にたどり着くことは極めて困難です。むしろ、まずやるべきことは「現状を客観的かつ正確に把握すること」です。
なぜ「打ち手」が機能しないのか
多くの経営者が、入会キャンペーンやサービス改善、価格改定といった「打ち手」を試みています。しかし、結果が伴わないのは、根本的な原因にアプローチできていないからです。
表面的な施策だけをいくら打っても、「そもそも誰に、何を、いくらで提供するのか」が明確でなければ、すぐに限界が来てしまいます。
つまり、今こそ立ち止まって、「問題の本質」に目を向ける必要があるのです。
現状把握が「すべての起点」
現状を把握するためには、たとえば以下のような分析が効果的です。
・3C分析(自社・顧客・競合)
・収支構造の可視化(売上とコストの構造的理解)
・KPI(主要指標)の棚卸しと可視化
・継続率、退会率、紹介率などの数値分析
・顧客満足度調査
このように、数字と実態の両面から自社を見つめ直すことが、問題の本質を見つけ出す第一歩となります。
私自身、これまで17年間にわたり、数多くのフィットネス企業の経営支援を行ってきましたが、業績が永く低迷している企業の多くは、この「現状把握」のプロセスが抜け落ちているか、あっても浅いのが実情です。
社内だけの視点では限界がある
自社の問題を社内だけで議論していても、なかなか打開策は見えてきません。なぜなら、社内には無意識の前提や既成概念が強く根づいており、外部からの視点が入りづらいからです。
「昔からこうだった」「うちの会員さんはこういう人だ」などという過去からの体験や常識が、かえって変化を見誤る原因になることもあります。
だからこそ、経営者は一度フラットな視点で、「今、本当に起きていることは何か?」を再確認する必要があるのです。
PSAを回せているか?
問題に直面したとき、すぐに「答え」を求めるのではなく、問題解決のプロセス(プロブレム・ソルビング・アプローチ:PSA)を回す力が経営者には求められます。その基本サイクルは次の通りです。
1.観察:問題点の発見。現場・現実・現物をしっかりと見る
2.分析:原因の仮説を立て、データや現場検証で裏付け
3.判断:改善策や改革案を立案する
4.実験:判断内容を実行する
5.検証:結果を想定し・評価し、必要があれば修正する
これを繰り返し、回転速度を高めていくことが、問題解決力そのものとなります。
最初から「正解」があるわけではありません。仮説を立てて検証し、必要に応じて再チャレンジする。この姿勢こそが、経営回復への近道なのです。
外部の知見を上手に活用する
「とはいえ、自分たちだけでは難しい」と感じる経営者もいらっしゃるでしょう。そうしたときには、信頼できる第三者のサポートを受けるのも一つの選択肢です。
なぜなら、外部コンサルタントや業界に精通した専門家に入ってもらうことで、自社の盲点が明らかになり、社内では出てこなかった選択肢や優先順位が見えてくることも少なくないからです。
まとめ
最初の一歩は「数字」と「現実」を直視することです。
厳しい経営環境の中で、経営者が不安や焦りを感じるのは当然のことです。しかし、「もう打ち手がない」と感じてしまうのは、まだ「問題の本質」を見きれていないだけかもしれません。
まずは数字を見直し、現場に足を運び、顧客やスタッフの声を聴く。経営者自身の目で、耳で、そして頭で考える時間をとってみてください。そこからこそ、本当に自社に必要な打ち手が見えてくるはずです。
それでは次号をお楽しみに!
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