裏山のスモモも開花してすっかり春めいた25日(木)、ハチ北高原スキー場にモーグルの練習に行ってきました。雪はもはや残り少なく、スキー場の営業も2日後の27日(土)までとなりましたが、常設のモーグルコースは土が出ることなく、しっかりと管理されていました。
この日の練習は、前回に引き続きターン弧の振り幅を変える練習です。
①直滑降(振り幅ゼロ)
↓
②大きなターン弧(振り幅大)
↓
③小さなターン弧(振り幅小
↓
④大きなターン弧(振り幅大)
↓
⑤直滑降(振り幅ゼロ)
↓
⑥ジャンプ
①直滑降から②大きなターン弧に入るところがスタートとエアの着地後のターンの開始、④大きなターン弧から⑤直滑降に移行するところがエアの手前の最後のこぶからアプローチへの入りに相当します。⑤直滑降の次に⑥小さくジャンプをして①直滑降に戻れば、モーグルコースでの滑走と同じ動きになります。
ゲレンデのフラットバーンは春雪であまりスピードが出ないので、こういう基本動作の確認をするのに向いています。
もう一つはグラウンドトリック(Ground Trick、俗称グラトリ)のバター(Butter)の練習。これは事前の勉強不足で全くできませんでした。解説だけしておくと、グラウンドトリックというのは、モーグルなどのエアートリック(Air Trick、空中技)が空中に飛び出しての演技であるのに対して、キッカー(エア台)を使用せずに雪上で行う演技です。
バターはその一つで、バターナイフでパンにバターを塗るように、スキーやスノーボードの片端だけを雪面に付けて滑走するトリックです。先端だけを付けるのがノーズバター、テールだけを付けるのがテールバター。バターをしながら1回転するのがバター360で、なぜかは知りませんが、回転するのはピーナッツバターとも呼ばれているようです。
バターはダイナミック・ポジショニング・ターンをする上で最も重要なスキーの前後の体重移動(Weight Shift)の練習になります。スキーのテールを大きく上げるノーズバターの動作はこぶの吸収動作にも通じる動きです。
さらに、ノーズバターをしながら1回転するのは、ぼくがマスターしようとしているコーク3(体を水平にしての1回転)に通じる動きです。雪が解けてゲレンデが狭くなった今のハチ北のパノラマゲレンデでこれができると、リフトのスキーヤーの注目を集めること間違いなしですが、残念ながらできませんでした。
今回の理論の話はここからが本題です。このような練習をしていて、普通のターンとダイナミック・ポジショニング・ターンでは、振動が違うのではないかと思えてきたのです。
振動とは、物理学の考え方で、振り子が揺れるように周期的な動きをすることを言います。この揺れが伝わることが波動です。寄せては返す海の波は、海水面が上下する動き(振動)が沖合いから浜辺へと伝わってくる波動です。
波動には横波と縦波があります。海の波や地面をくねりながら進む蛇のように、上下や左右に揺れながら伝わる波動が横波です。縦波はちょっとわかりにくいのですが、イモムシが体を縮めては伸ばし、縮めては伸ばしを繰り返しながら前進するような波動です。
モーグルのターンは横波に例えることができます。モーグルのターンには左右の要素と上下の要素があります。スキーを旋回するのが文字通りのターンですが、スキーのトップの向きをフォールラインの方向に向けて滑るのが直滑降、トップの向きを左右に変えるのがターンです。
モーグルコースのこぶは左右に互い違いに並んでいるので、それに合わせてスキーの向きを変えなければなりません。こぶに合わせて右に左にとスキーのトップの方向を周期的に変えます。これが左右の振動です。一方、でこぼこになったこぶを乗り越えながら進まなくてはならないので、スキーの上下の位置が周期的に変化するのに合わせてスキーのトップの上下方向の向きも周期的に変えなければなりません。
普通のターンの具体的な動きで言うと、左右の振動はスキーヤーのブーツの位置が振り子のように左右に動くことによって生じます。スキーのトップが指し示す向きが変化するのと同時にスキーヤーのブーツの位置が左右に移動します。
上下の振動はこぶの形状に合わせた吸収・伸展動作によって生じます。スキーのトップがこぶに当たって持ち上げられようとするときに脚を曲げながらかかとをお尻の方に引きつけてこぶの衝撃を吸収し、こぶを乗り越えて雪面が低くなるときにスキーのトップを下に向けながら脚を伸ばしてスキーを下げていきます。これが上下の振動です。
左右の振動はスキーヤーの進行方向(フォールライン)と垂直な面での振り子の動き、上下の振動はスキーヤーの進行方向と平行な面での振り子の動きです。この二つの振動を組み合わせてスキーヤーはこぶをすり抜けて、まるでこぶがないかのように滑走します。その結果として、スキーヤーの腰の位置は、フォールラインから左右にずれることがなく、上下にも動かず一定の位置を保つことになります。
ダイナミック・ポジショニング・ターンもこの動きで考えていたのですが、どうも違うようです。普通のターンが左右の振動と上下の振動の組み合わせであるのに対して、ダイナミック・ポジショニング・ターンは前後の振動でないとできないのではないかということがわかってきたのです。
前後の振動とは、いもむしが体を縮めては伸ばし、縮めては伸ばしを繰り返しながら前進する縦波の動きです。重りをつけたばねは上下に揺れます。水平にしたばねが伸びたり縮んだりを繰り返す様子をイメージしてください。
スキーがこぶに当たるときに脚を曲げ、こぶを乗り越えるときにこぶを後ろに押しながら脚を伸ばすのがダイナミック・ポジショニング・ターンです。脚を伸ばす方向は下ではなく、進行方向の逆の後方です。斜面と平行に30度下を向けて置かれたばねが伸び縮みするように、30度の斜面の後方に脚を伸ばさなければならないということです。
スタート台から見下ろすと絶壁のように見える平均斜度30度の大会コースでそんなことができるのか、ということですが、ヒマラヤの山地に住むユキヒョウはもっと急な崖をいとも簡単に猛スピードで駆け下ります。前足を前に出しながら後足で蹴り、前足が地面に着くと同時に後ろ足を前に引きつけます。体を縮めては伸ばし、縮めては伸ばしを繰り返す縦波の動きで疾走します。
人間には前足がありませんが、ストックを持った両手がその代わりをしてくれます。ユキヒョウにできて人間にできないはずがないのです。
ということをイメージしながら練習した結果、よく管理されたハチ北のモーグルコースがダイナミック・ポジショニング・ターンで滑れるようになってきたようです。
スキーの世界を根底から覆すダイナミック・ポジショニング・ターンの頂上が見えてきました。そろそろ、どういう形で公開し、関心のある人にどのように伝えるかということを考える時期が近づいてきたようです。