昔々、『医』の国に王子が生まれました。顕微鏡を抱いて生まれてきた王子は『病理医』と名付けられました。はじめての誕生日には盛大な誕生会が催され、多くの人たちが招かれました。3人の善き魔女が招かれましたが、不吉な悪い魔女は呼ばれませんでした。
宴はすすみ、いよいよ3人の善き魔女達が王子に祝福を与えます。
一の善き魔女は『この王子はちっぽけなものから多くのことを知ることが出来る』、
二の善き魔女は『この王子の言うことは医の国において最も価値のある金言と見なされる』と予言しました。
その時、悪い魔女が突然現れました。
『よくも呼ばなかったね。お礼に私からも祝福をあげるよ。この王子は見えたものから多くの知識と予言を皆に与える。ただし、対物レンズの中しか見えない』と呪いをかけました。
人々はその呪いの意味に恐怖を覚えました。
最後に三の善き魔女が言いました。
『まだ私の祝福が残っています。この王子は対物レンズの中のものしか判らなくなるが、外のことが判らなくてもつとめを果たせるような言葉をしゃべるようになる』
こうして、病理医は顕微鏡の中のことしか見えなくなり、
『提出標本を全割しましたが、切片上悪性所見は見られません』とか、
『この標本の中の細菌はH.Pyloriかもしれない可能性がある』とか、
『核腫大を示す扁平上皮細胞の浸潤増生があり、扁平上皮癌を疑う』とか、
『上部消化管内視鏡で採取されたこの材料は胃粘膜に矛盾しない』とか、
様々な病理医話法を生み出して視野が狭いことを補うようになった。
顕微鏡の中だけに興味があって医療に興味がない病理医なんていませんから、勿論これはおとぎ話にすぎません。・・・・と言うオチが正しいことを希望します