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PikuminのCancer Staging Manual

がんのステージングは治療や予後判定において極めて大事なものです。

On line publishもまだなので日本語に題名を訳すと

『院内がん登録全国集計2007を使った乳癌取り扱い規約組織分類の検証解析』

そのうち日本のがん雑誌では一番IFがあるやつに出ます。


中身はまだかけませんが、『院内がん登録がこんな感じで役に立つことがあるんだ』とか、『日本の取り扱い規約は何やってるんだろう・・・・』とか、『この著者意地悪そう、近づきたくない』とか言う具合に読んでもらえれば幸いです


第2版で訂正される項目が記載されたpdfがUICC HPで公開されています。

http://www.uicc.org/resources/tnm

の1番上のpdf


ひらいたらいきなりupdated in November 2011って書いてあるのがUICC qualityだが・・・・


5大がんのTNMとかは絡んでいないが、腎癌・メラノーマ・骨軟骨肉腫のTNMや前立腺癌のprognostic groupingとか絡んでいるので一応要チェック


英語版2nd editionでは直されるようですが、日本語版は変わらないかも・・・

取り扱い規約でTとNとMが記号として使われる。UICCやAJCCでもTとNとMが記号として使われる。

意味は重なることがあるから同じものと思われるが理念は微妙に違う。


取り扱い規約、特に病理部門で使われるTは腫瘍の局所進行度を示す。

          UICC-AJCC出使われるTは腫瘍の局所進行度を示す。

一緒やないかい!って怒るかもしれないが・・・


前者は局所進行の程度を示す所見描写が主目的であって、後者は予後リスク予測が主目的である。

その違いはいろんなところに顔を出す・・・その例はいろいろあるがここには書かない(もうこのブログには沢山の先例がある)

言葉にすれば同じだが理念が違う。違わない規約もあるが・・・・


規約を作るの多く人が知らないのが問題なんだが、規約はその理念上UICC-AJCC TNMをまねるより、CSやSEERのsummary stagingを参考にしたシステムを作った方が良いのではないかと思うが・・・

今日はこの辺で

某所の臨床研究センター・医療情報研究室室長および臨床疫学研究室室長になります。


『病理科』『病理医』ってことでは、そう言う方面で仕事するときには収まりが悪くて・・・

趣味や研究から仕事になったので、これからは心を入れ替えてがん登録関係にせいを出すことにします。

なんだかクリニカルパスもついてるようで・・・それが問題だが

大災害(天災と人災)のお見舞い申し上げます。


チェルノブイリ原発事故は多数の死者を出した。

爆発と急性障害で何千人も死んだそうだ。


その後遅発性の障害≒発癌によってやっぱり何千人も死んだそうだが・・・実はよく分かっていない。

小児甲状腺癌が増えたってことだがスクリーニングの影響も考えられるそうな。


いずれにしても、今回の被曝に関してきちんとした、政府企業のバイアスのかからないデータが必要となろう。

東北のがん登録の今後の大きな仕事です・・・今はまだそれどころではないでしょうが


いま、GISTはサイズと分裂能でvery low risk, low risk, intermediate risk or high riskなどと分ける。

病理医・臨床医にとってはそれでかまわないし、問題ないが、腫瘍登録士にとってはちと困る。


GIST, high riskの場合、いちいち『これは悪性ですか?』と聞かなきゃいけない。

聞いても、病理医の方は『いや、GISTは、良性とか悪性とかつけにくいので、high riskとか、riskで表現するんだよ』って答えるし、臨床医は『組織学的に悪性かどうかは病理医に聞け。臨床的には取り切れた悪性腫瘍としてフォローするよ』って答えるでしょう。


これはやっかいなことだったんですが


第7版ではGISTのTNMが設定されました。sizeにもとづくT、NとMとmitotic rateでStageIA-IVまで分かれます。

low(StageIA)であれ、highであれ(大体StageII以上)すべてTNMの対象ですから、悩む必要はありません。


問題はStageIAから登録対象とするか、IIからにするかだけの話になります

食道癌取り扱い規約のNのルールがUICC-AJCCと違うのは皆知ってると思いますが、今日はちと意外なことを


食道癌取り扱い規約、10版、19p
2.2.1.2 リンパ節群分類において
『注 多発癌、2領域以上に広がる癌のリンパ節群はいずれも深達度のもっとも深い癌の占拠部位のリンパ節群に従う』
とされています。


UICC-TNMでは、消化管で隣接部位に進展すると所属リンパ節は両者を含むことに
なります。消化管に限らず大抵の臓器でそうなります。全く異なるルールのようです。
食道癌取り扱い規約のリンパ節ルールがそう書かれているのは全く知りませんでした。


これは日本のpStagingの致命的な点を一つ明確にあらわしています。


すなわち、『浸潤の有無の軽視』です。

食道癌取り扱い規約に書かれている”広がる癌”というのはEP=上皮内癌=High grade intraepithelial neplasiaを含みます。
UICC-AJCCの方は隣接臓器への進展というのは"浸潤”を意味します。ですからリンパ節転移を起こす範囲が広がる訳です。対して、食道癌取り扱い規約は日本の病理の日常として転移しない成分の広がりですから、進展範囲で所属リンパ節を広げるとM1(LYM)がとれなくなってしまいます。だから一番深いところの所属リンパ節として、進展先の所属リンパ節を除外します。

奇妙な点を奇妙なルールで補っているわけです。


このため、多重癌ではこんな奇妙なことがおきてしまいます。

CeとLtの多発癌で、
1:CeにT1bの癌、転移なし、 
2:LtにT1aの癌、#1(右噴門部LN)に転移
の場合は、多発癌のうち深い方のCeの癌のリンパ節群分類に従う。

#1はCeの所属リンパ節ではないので、この食道癌はN4, StageIVaとなります。手遅れですね。

現在この問題を解決する方向で食道癌取り扱い規約が動いているかどうかは不明です。

胃がん取り扱い規約14版に、『胃壁外の脂肪組織などにリンパ節構造のない病巣があればリンパ節外の転移であることを記載し、リンパ節転移としてカウントする』と記載されています。

14版まではなかったルールです。

胃がん取り扱い規約は、建前上UICC-AJCC TNMにあわせたことにしたので、AJCC胃がんの部・pStagingにある

”Metastatic nodules in the fat adjacent to a gastric carcinoma,
without evidence of residual lymph node tissue, are considered
regional lymph node metastases, but nodules implanted on peritoneal
surface are considered distant metastasis.”と言う文章に基づいてこの記載を入れたのでしょう。


しかし、この規約の記載は大きな問題を含みます。


何となれば、本家の英文を訳すとこうです。

『胃がんの近くの脂肪織にリンパ節構造のない転移性結節があればリンパ節転移と見なす。

しかし、腹膜表面の結節は遠隔転移(日本で言うp-component)とみなす』

そう。これはあくまでも、転移性結節だと判断した場合の話です。

『簡単にpM1にするなよ、pNにする病変かもしれないよ!』という意味です。

取り扱い規約のみ読む人は、漿膜下の癌結節を大小含めすべてNに数えてしまうかもしれません。

しかし、当然漿膜下の結節はまず、T2b-6th/T3-7thのcomponentか、転移かの判断が要ります。


UICC-AJCCに合わせようという気持ちはくみますが、よく読んで、考えて規約は作って欲しいものです。


今日のところはこの辺で