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PikuminのCancer Staging Manual

がんのステージングは治療や予後判定において極めて大事なものです。

TNM supplementだが、どう見ても実にいい加減に作られている。

TNMでも多くのerrorがあったが、こんどもorz


いい加減に作られているものの、一昨年の秋から冬には出る予定だったものが今になったんだからかなり元は大変なことになってたんだろう。


その大変なことの一つが

FAQ 233p

Question

I have an acinar adenocarcinoma of the lungs, which shows large areas with a brochoalveolar growth pattern. In the resection specimens there are foci of brochoalveolar carcinoma away from the original tumour. Should this be counted asa asynchronous tumor or simple part of the first tumor?


Answer

The case you descirbe would be calssified T3/pT3, provied if the foci are in the same lobe and there is non-tumorous tissue between the different foci. If the tumor nodules occure in anothoer lobe, the case would be classified as T4/pT4, or M1a/pM1a if in the contralateral lung.


質問

BACパターンを伴う腺胞型腺癌がある。手術標本で本体から離れたところにBACの病巣が複数あった。

これは同時多発か、転移か?どう判断しましょう?


回答

このケースはT3/pT3だね、同じ葉内で且つつながってない場合は。

同側別葉ならT4/pT4。対側の肺ならM1a/pM1a。


・・・・お~い。

同じミスを第6版でしてたのをやっとFAQで訂正したと思っていたら・・・・

BACを伴う腺癌の周囲のBACを転移にしてたら肺癌のT3. stageIIBが全然死ななくなるぞ

あほか

amazon早

もうきた。


さて、ほとんどのルールはAJCC staging manualとそう変わらないが、衝撃の新展開を一つ


術前化学療法後のTNMはycT2N1M0とか、ycT2, ycN2, ycM0と記載し、手術したら、ypT2N1M0とかypT2, ypN1, ycM0となる。

これは鉄板でただしい。


いままで化学療法後のStageは、yStageIIとか、ypStageIIとか書くものだと思っていた。


ところが、このTNM supplement 第4版では

Stage yIIとか Stage ypIIとか書くと記載されている・・・・・だっせ~


amazonに注文しました。

これは一昨年の夏に秋頃出ると聞いてた代物ですが、やっと出ます。

発売日は5月22日・・・・あれ?




pT2 or moreとか

pT2に限らず、pT1 or moreとか・・・とくに膀胱でよく目にする。


ここで言っておくが、pTは最大のTが決められるときにのみ規定されるものだから、pT(なんとか)or moreなんてあり得ない。

『山より大きな猪』と同じ

or moreを想定しなきゃいけないのならpTはない。


cT(なんとか) or moreならもしかしたらかろうじてあるかも・・・でも原則これもない

軟部腫瘍のtumor grade判定, stagingに必要なFNCLCCを再確認しておきましょう。

(特に自分のために一部改変)


Tumor differentiation (腫瘍分化度)
1 点:正常成人間質組織に非常に類似した肉腫
2 点:1・3以外
3 点:脱分化部分を含む腫瘍、pleomorphc MFH(のstoriform主体の奴は除く)、由来不明の(悪そうな)肉腫、滑膜肉腫、軟部の骨肉腫(の悪そうな奴)、PNET(incl Ewing)、など
核分裂数
1 点:高倍率10 視野中0-9 個 (ただしSWH10Xなら 0-16)
2 点:高倍率10 視野中10-19 個 (ただしSWH10Xなら 17-33)
3 点:高倍率10 視野中20 個以上 (ただしSWH10Xなら 34- 程度に補正。ま、神経質に数えてもしょうがない)
腫瘍壊死
0 点:壊死なし
1 点:壊死巣が50%未満
2 点:壊死巣が50%以上 (針生検では無意味)
組織グレード
Grade 1:合計スコア2,3 点
Grade 2:合計スコア4,5 点
Grade 3:合計スコア6,7,8 点


Grade1がlow grade、 low grade転移なしならStageIA or IB

Grade2・3がhigh grade、 high grade転移なしなしならStageIIA, IIB or III

転移有りならIV


婦人科腫瘍学会で臓器がん登録の担当の先生が、最小生存率からカプランマイヤーに変わったって喜​んでいた。

確かに、予後の確認できない人を全て死亡として扱う最小生存率の方法では、実際より遙かに予後が悪く出てまずいだろう・・・まずいだろうが、

そんな状態でKaplan Meyer法に変えたことを喜んだり誇ったりしていいのか?


Kaplan Meyerではイベントが起こるたびにその後の生存率を計算し直してカーブを描く。

生存が確認できた人と死んだことが確認できた人の比率で、Lost in follow upを分けていくと、不公平だ。

どう考えても生存が確認できない人の中の死んだ人の比率の法が、確認できない人の中の死んだ人の比率より遙かに高いからね。これを基本的に死ぬ人の方が少ないステージや疾患に対して用いてKaplan-Meyerやるとこんどは卑怯なほど生存率がよくなる。


ここら辺はしばらく前に話題になったはず。


カプランマイヤー書く前にその予後判明率は使える判明率か?を考える必要がある。


で、学会は追跡率の高い施設だけでまとめたらしい・・・・それもまた問題が

(私の個人的な意見ですが)医学論文として他に例を見ないほどtwistの効いた1篇

Validation analysis of Japanese histological classification of breast cancer using the National Summary of Hospital Cancer Registry 2007, Japan


ついにCancer Science early view (wiley online library)で全文登場。


予後情報もない、悉皆性もない、名寄せもない、

ないないづくしのがん登録に、どんな情報も研究も足すことなく、どんな皮肉な結末を導き出せるか

手品のような論文です。


impact factorはともかく、これまで書いた論文で一番のお気に入りです。

6月1日付で

○○がんセンター 臨床研究センター がん予防・疫学研究部 
医療情報研究室室長および臨床疫学研究室室長になりました。

さて子宮肉腫では子宮限局の場合5cm以下でT1a、5cmを超えればT1bと決まりました。
子宮間質肉腫は周囲の血管内に病変が広がるのを特徴としています。
ミミズのように周囲に広がるのでこれをworm-like patternと言います。

さてさて、UICC-TNMでは原則的に血管内の広がりはTに入れません。Tがサイズで決まるときには腫瘍型にも含めません。

さて、さて、さて、どうやって子宮間質肉腫のサイズを測ってTを決めるべきでしょう?


UICCーTNM committeeの人達はTNMのルールはある程度知っていても、婦人科病理に詳しいとはおもえない。もとのルールを決めたFIGOの人達はUICCのTNMルールには興味もないので整合性など知ったことではない。


答えなどないことを想定しながらTNM help deskに質問してみました。

『 My TNM question:
About endometrial stromal sarcoma, uterine sarcoma
How do I measure the size of an endometrial stromal sarcoma (ESS). An ESS is
consisted of extensive intravascular component. Should I measure the size
including the intravascular components?』(訳:子宮間質肉腫について。子宮間質肉腫はどう測ったらいいの?血管内成分が多い腫瘍なんだけど、それを含めて測る?)


回答

『Please have a look at the FIGO publication if they indicate
How exactly to measure the maximum size of an uterine sarcoma.

In the TNM context the vascular component is not considered
in measuring the size. In some cases it will be necessary to
use the histological examination for measuring the size.』(FIGOのやつらがきちんと最大径を測る方法を決めているかどうか、FIGOの出版物を見てみろ。TNMでは血管内成分は測らないけどね)


・・・・・・・・・・・・・・・
私の自己研究を書くと、血管内成分かどうか顕微鏡でじっくり確かめたりせず、ざっくりと肉眼型を測ってそれを使うのが正しいと考えます。


Whittekindに教えてあげてください。組織見ちゃダメだと

さて、ハーセプチンが胃癌に保険適応になりました。


各施設の病理医が見てHER2陽性が免疫染色で確認された症例、あるいはHER2が擬陽性でFISHでEGFR増幅がある症例が適応になります。

ToGA studyに対する批判は聞きますが、それは別として、薬効が期待される薬が有効な治療法のない進行・再発胃癌使えるようになったのはすばらしいことだと思います。


ただ問題があります。


ToGA studyを信じるとして、その結果証明されたものは、『判断が難しい免疫染色の結果を、胃癌HER2の専門家レビュワー(おそらく数人)が陽性と判断したグループに有意な(しかしわずかな)生存期間延長を見た』と言うことです。


決して、一般の病理医が独自にアトラスを見て判断して陽性と判断したグループの生存期間がトラスツマブで延長したという結果が証明された』わけではありません。


判断がとても難しい胃癌のHER2判定を各施設で行ってTOGA studyと同じ様に生存曲線がかけるとは一切証明されていません。


ハーセプチン承認とその対象選択に一切反対はありませんが、厳密に言うと『ハーセプチンの真の治験はこれから日本の各地で本番が行われる』そう考えるのがevidence basedの考え方です。


効かないとかダメだとか判ったときにすぐにやめられるよう、承認後調査を厳密に行って欲しいところです。


それより、まず、TOGA study本部は染色した標本を各施設に送り返して、独自に評価させ、その判定で解析し直した結果を公表すべし・・・それからはじめないと

それが第一歩です。