PikuminのCancer Staging Manual -13ページ目

PikuminのCancer Staging Manual

がんのステージングは治療や予後判定において極めて大事なものです。

UICC supplement 3rd(↑)によれば、

General ruleその1は、『すべてのがんは組織学的にその存在が証明されるべし』&『そうでないものは、その旨を明記して別個に解析される』

UICCでは組織学的に証明されていない『癌』は癌としては2級市民としてあつかうということらしい



『General ruleその2』はUICC-AJCC TNMは、各臓器別に作成されるdual systemだということ。『その3』はその組み合わせ方のルール。


治療前の内視鏡、レントゲン(CT、PET-CTetc)、超音波、MRI、視・触診、生検(!)などなど、実際の治療前に行った検査でのstagingをcTNM, cStageと呼ぶ。cはclinicalのc


  がんではよくある風邪などの治療とは違い、『念のため薬を出しておきましょうね』とか

  『まだ検査が終わってないけど、とりあえず治療しましょう』なんてことはほとんどない

  (急性前骨髄球性白血病ならありえるかもしれないが)。

  あれば、・・・ちょっと考えた方がいい。


対して、腫瘍切除後の病理学的ステージをpTNM, pStageと呼ぶ。pはpathogyでも良いんだけど、post-surgicalのpだろう。

で、誤解されやすいのは、病理学的検査をやったらなんでもp・・・というわけではないということだ。


まず、切除しても肉眼上の病変が残ったらpT1とか2とかいってはいかん→pTNM分類をするには必要条件がある。(これはあとで書く)

EMR・ESDや子宮頸部円錐切除は一見pTを評価できるっぽいが、実はこれは生検。事実上pTと一緒みたいなもんだが、手術されるまではこれはcTのcomponentで、臨床医が『手術をしない』と決めるか、手術が終わったあとでpTとなる。だから、EMRや円錐の病理レポートでpT1とかpT1b1とか書くのは恥ずかしいからやめよう。特に、円錐でT1b1ならまず手術するので、pT1b1とするのはその後でも遅くない。

リンパ節転移の有無pNも臓器毎に定められた充分な数のリンパ節を調べたあとでなければpN0とか1とかいってはいけない(ただし例外がある)→たとえば、リンパ節をほじくるのを外科医に任せていて、病理医が腫瘍本体周囲のリンパ節の検索を全くやってない施設ではpNの評価はしてはいけないorしていない(本人も周りも気がついてさえいないと思うが)。


pTNMはあらかじめ、cTNMを把握した上で行う。stagingのさいには、臨床ステージで補足してpT3, cN1/pNX, cM0/pMXなどと組み合わせて書くことが多い。cN, cMであっても総合してStagingしてよい。Nはともかく、pMは組織学的に確定されないことが多いからね。


たとえば、cT2, cN1, cM0の症例を手術して、pT2, pN2とわかったとする。総合するとpT2, pN2, cM0となる。総合する場合はp-componentを原則として採用する。大腸の場合pT2, pN2, cM0はStageIIICとなる。cTNMはcT2, cN1, cM0, cStageIIIC。厳密に言えばpTNMはpT2, pN2, pMXであるが、post surgicalにstageを決定する場合 pT2, pN2, cM0(pMX)として、pStageIIICと記載して良い。ただし、PC dataとして登録する場合はpMXの方がいいかもしれない。

対して、cTNM, cStageはpTNMを見て変更してはいかん。いったん決定したら変更はまかりならん。

ただし例外があって、cTNMを確定したすぐあとに別の新しい検査法でMが見つかった場合はM0→M1に変更して良い。たとえば、cTNMを決めたあとPETがとれるようになって(急にPETがある病院に転院したとか、いつもはとらないけどたまたま広告を見てPETとってみようと思いついたとか)、転移が見つかった場合にはcM1に変えても良い。

これまではあまりルールらしくなかった。どちらかといえばTNMの説明に近いものだった。

しかし、その4は大事なルールだ。


迷ったら、小さい方、証拠が充分でない場合は小さい方


即ち

『これT1かなT2かな?って迷ったらT1にしろ』

たとえばリンパ節を見て、『これ転移かな、転移じゃないかな?と迷ったら転移じゃないと判断しろ』

『浸潤の有無がはっきりしない場合は浸潤なしと判断しろ』

もしかしたらTNMの診断が病理診断と食い違うことすらあるかもしれない。

リンパ節を見て、『これ転移かな、転移じゃないかな?と迷った』ら、転移かどうかを見るために免疫染色をするかもしれない。免疫染色で転移が確認されてもpN0/pN0(i+)だ。stageに関係なし。


それとはちょっと別の話だが

古い子宮頸癌取り扱い規約の微少浸潤の基準で微少浸潤癌を診断している人がいるかもしれない。細胞診で微少浸潤癌を診断している人がまだ日本に残存していることも知っている。病理診断は各人の裁量だからそういう理由で浸潤癌と診断してもいい。(本当は良くないけど)

しかし、TNMではcontroversyな突出した診断は避け、Tis, stage0としなければならない。

           ならないんだけど、TNM systemは個人の診断の正否に介入しないのがルールだから、どうこうはできない。そもそもそういう人はこんなgeneral ruleその4なんて聞いたこともないだろう。

その5は、多発に関する表記上の細かいルール。

細かいところはおいておいて、重要なことを


右・左のある臓器の両方に癌がある場合、別々にTNM分類/ステージングを行う。

ただし、明らかな転移と判断した場合は除く。

左右といっても当てはまるのは、肺や乳腺のことであって、左葉と右葉があるからといって、甲状腺や肝臓、前立腺はそういうことはしない。それらは一つの臓器であるから。

また、左右があっても、卵巣や卵管は別々に評価したりしない。(下記参照)


また、同一臓器内に多発している場合は、最も進行した腫瘍についてTNM分類を行う。

特に管物(食道~肛門まで)の場合、多発しているからといって誇らしげに複数のTNM分類を行わないこと(恥ずかしいので)


ただし、食道と胃に別々の癌があるような場合はもちろん別々にステージングする。


卵巣・卵管・肝臓では多発していること、そのものがT因子の要素となる。

臓器内の転移結節であるかどうかは無関係。


(以上、General rule終わり・・・つぎはGeneral ruleではないが、補足ルール)

その1は重要なルール

『サイズがTの決定因子であるときにはinvasive componentのサイズで測定する』


多くの腫瘍は辺縁にnon-invasive componentを持っている。たとえば、舌癌のT1とT2の区別はサイズで決まるが、多くの場合浸潤部の周囲に異型扁平上皮が広がっている。

異型扁平上皮をcarcinoma in situだと思ったとしても、Tのサイズに足してはいけない。

たとえば、浸潤部の長径が1.8cmで、その周囲に強い異型のCarcinoma in situ が1cm広がっていても、径2.8cm→T2としてはいけない。


子宮頸癌のT1a1, T1a2, T1b1, T1b2もサイズで分けられるが、その区別も全て浸潤部の大きさで行う。

乳癌でもDCISがいかに広く広がっていても、いかに浸潤部が小さくても、浸潤部があれば、浸潤部でTを決定する。


しかし、例外がある。

肺癌の場合、3cm以下と3.1cm以上でT1, T2が分かれる。腺癌は多くの場合周囲にBACを伴う。BACはnon-invasiveとWHOで定義されているので、BACの部分を除いてサイズを算定すべきであるが、肺癌ではBAC(=非浸潤部)を含めてサイズを測ってTを決める。

これは予後予測上大きな問題となるが、過渡期と思って我慢するしかない。(UICC HELP deskより)

BACは例外と覚えよう)

Tがサイズで決まるとき、Tのサイズはいつ測るのか。

いつ測ったサイズがTを決めるのか?を考えたことがない人も多いはず。


臨床的にはCT、MRI、または肉眼で決めることが多いだろう。肺癌のサイズを打聴診で決めるような明らかなむちゃくちゃをしない限り臨床医が決めたサイズを使ってかまわない。治療前に決定するという縛りさえクリアーすればcTはかってに決めて良い。


ではpTは?

フォルマリン固定で標本の大きさが20~30%縮むことがあるそうな。

だから、基本的にpTは固定前のサイズで決める。

舌癌が固定前、径2.1cm、固定後1.9cmなら迷うことなくpT2にしよう。でも、固定前を測り忘れていて、固定後が1.9cmの場合『固定前は2cmより大きかったはず!』と思ってpT2にしてはいけない。

『証拠があるものだけを採用する』これがルール。


で、supplement book 3rdには、固定前のサイズがわからないときにはclinicalに測ったサイズを利用しろと書いてある。

しか~し、UICC Help deskに問い合わせたところ、肺の場合は固定後のサイズでpTを決めてよし、固定前のサイズがわかった場合はそれを使ってもよし、CTサイズを優先する必要なし、とのことだった。(ここら辺はもっときちんと公式ブックには書いておいてくれと返事したが・・・)


ともかく、基本は固定前と固定後のサイズでは固定前のサイズが優先。

supplement bookにはどう書いてあれ、固定後のサイズしか測れなくても、それはそれでOKなのでpTをそれで決める。

その3:消化管や肺のようにしょう膜の破綻がTの因子であるとき

その決定は、手術標本に限らず、生検や漿膜面の擦過細胞診で行っても良い』

たとえば、卵巣の被膜破綻は組織では案外わかりにくい。漿膜面をぺたぺたとスタンプして細胞診で陽性なら、自然破綻あり→pT1cとしてよい。

消化管のSEとかは、組織ではたまたま破綻部位が面に出ないことがあるのでこの方法は良いかもしれない。やってる人は少ないだろうが・・・・


その4リンパ管・血管の内に組織学的な大きさの腫瘍があっても、T因子にはならない』

たとえば胃癌で、漿膜下のリンパ管内に癌があっても、浸潤部がSMまでなら、T2bではなく、T1。

たとえば子宮頸癌で、parametriumのリンパ管内にいくらたくさん癌が浮いていてもpT2bにはならない。リンパ管や血管の壁に付着したあと癌が周囲間質に浸潤して初めて、T因子となる。

しかし、肝・精巣の腫瘍は脈管侵襲がT因子なので例外。

あと、腎癌では肉眼的な脈管侵襲がT因子となる。


その5: 『癌の他臓器への直接浸潤はT因子。遠隔転移とはしない』

(その6をついでに書くと、 『TNMの本に書かれていない珍しい部位への直接浸潤はT4』 )

しかし、リンパ節への直接浸潤はN因子となる。これはstageに直接影響する重要なルールだ。


では、胆嚢癌が進行していて、肝床への浸潤か肝実質転移か区別がしづらいときはどうするでしょう?・・・・・答えはT3 (cT3 または pT3)。M1(HEP)ではない。なぜなら、General rule No.4 がきいてくるからだ。


NはTNM分類でもっとも重要な因子だが、ルールはTよりはやさしい。


その1:Tのところで書いたが、最も重要なものは、『リンパ節への直接浸潤はNに数える』だ。今日も日本中で沢山のN1が見逃されていることだろう。


その2:他臓器へ進展したらその臓器の所属リンパ節も、所属リンパ節となる・・M1(LYM)とはならない。   M1(LYM)というのは所属とは言えない遠隔リンパ節への転移のこと。


その3:微少な転移(0.2mm以下)や、特殊な検査(免疫染色やPCR)で検出した転移は陽性に数えない。・・・・だから、微妙な転移でリンパ節転移かどうかわからなかったらその時点でUICC-pN0とし、その後で免染なりなんなりして規約-pNを決めればいい。


その4:リンパ節転移の全てがNではない。所属外への転移であればNではなくてM1となる。上記参照。


その5:日本においてだけ極めて重要だが、あるリンパ節が規約で所属リンパ節扱いであっても、UICCでもそうだとは限らない。


その6:臨床医がリンパ節だと出してきてもそれがリンパ節だとは限らない。もちろん、脂肪織+結合織+癌とか、血管内の癌結節・・・などはN因子にはならない。リンパ節の構造が残っているか、リンパ節と思えるくらい球~長球形であった場合のみNとしていい(ここら辺は大腸癌取り扱い規約のルールに同じ)


その7:迷ったら少なく(general rule No4)。だから、数が群分けの因子である場合は、2個のリンパ節転移なのか、1個の転移だけど切れ方で2個に見えているのか、わからなかったりしたときには1個に数える。