ベルナルト・ズヴェールス(Bernard Zweers)(4)オランダの作曲家 | 妄想印象派 自作のイラストや漫画、アニメ、音楽など

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こちら で既に紹介した、オランダのロマン派作曲家。


ロマン派時代のオランダの作曲家には、

ヨハネス・フェルフルスト(Johannes Verhulst 1816-1891)

リシャルト・ホル(Richard Hol 1825-1904)

ダニエル・ドゥ・ランゲ(Daniël de Lange 1841-1918)

ベルナルト・ズヴェールス(Bernard Zweers 1854-1924)

ユリウス・レントヘン(レントゲン)(Julius Röntgen 1855-1932)

ヨハン・ヴァーヘナール(ワーヘナール)(Johan Wagenaar 1862-1941)

コルネリス・ドッペル(Cornelis Dopper 1870-1939)

等がいます。


しかし、有名なのは一人もいません。

多少有名なのは、華麗な管弦楽技法のワーヘナールと、

一部でファンがいるらしい(?)レントヘンくらいでしょうか。


絵画の世界では、

フィンセント・ファン・ホッホ(ゴッホ)(Vincent van Gogh)

ヨハネス・フェルメール(Johannes Vermeer)

レンブラント・ハルメンス・ファン・レイン(Rembrandt Harmensz. van Rijn)

らが世界的に有名だというのに・・・。


コンセルトヘボウ(Concertgebouw)

というコンサートホールやそこの管弦楽団は有名だというのに・・・。


自国産のクラシック音楽を積極的に売ろうという意識が無かったのか?

日本やベルギーなどがそうでした。

最近は、NAXOSが日本のクラシック音楽のCDを色々と出してますし、

ベルギーでも自国の作曲家を扱ったレーベルが立ち上げられています。

それとも、オリジナリティのある曲が

余り作曲されていなかったのが原因なのか?

無国籍的というか、

ドイツロマン派の亜流みたいな曲ばかりという印象です。

でもそんな事を言ったら、

ベルギー国民楽派がそれなりのものを作っていながら

20世紀末まで埋もれていた事の説明がつかない。


オリジナリティを目指した作曲家の筆頭に、ズヴェールスがいます。

彼は、交響曲第3番『我が祖国に』でオランダ民謡を用いたり、

オランダ語の声楽曲を作曲しました。

クラシック音楽にオランダらしさを積極的に取り入れたのは

彼が最初の様です。

私の知る限りでは他に、

レントヘンが古いオランダの曲を近代管弦楽の手法による

組曲に編曲したものや、

ドッペルによる『レンブラント』や『ゾイデル海』などの、

オランダにまつわる表題の交響曲、

フランス・ヨハン・スフヴァインスベルフ

(Frans Johann Schweinsberg 1835-1913)

オランダ狂詩曲(Rhapsodie Hollandaise, 1905)

という吹奏楽曲を書いた事くらいですね。


前回のズヴェールス紹介記事でも書きましたが、

ズヴェールスの交響曲第1、2番は、

ドイツロマン派の亜流そのもので、独自性がありません。

これ等の曲だけしか聴いていないと、

埋もれてもしょうがないのかなと思ってしまいがちですが、

交響曲第3番『我が祖国に』を聴いてみれば、

それが偏見以外の何物でもない事が明白です。

私が思うに、

ズヴェールスの交響曲第3番『我が祖国に』は、

オランダクラシック音楽の最高傑作だと断言したい!!


それにしても、前回の記事でも書きましたが、

交響曲第1、2番のCDが立て続けに

出てきたにも拘らず、第3番のCDが中々出てこなかった。

まるで、『ドクター秩父山』(田中圭一)の単行本みたいです。

第3巻が中々出なかったのは、有害コミック騒動の影響でしょうかね?

それから、サン=サーンスの交響曲の様でもあります。

第3番『オルガン付き』は、それ以前の彼の交響曲と比べて

大幅にパワーアップしてますもん。

シューベルトの『ザ・グレイト』とそれ以前の彼の交響曲位の違いもあります。

それでは、レビューいきます!!






交響曲第3番 変ロ短調 『我が祖国に』

Symfonie nr. 3 in Bes majeur ”Aan mijn vaderland” 1886-1890

シューベルト(Franz Schubert)の『ザ・グレイト』(Die Grosse Symphonie)や

ハンス・ロット(Hans Rott)の交響曲、

ラフマニノフ(Сергей Васильевич Рахманинов)の交響曲第2番

等と同じ位の1時間程もする長大な交響曲。


随所にブラームス的な香りが漂ってはいる、

つまりドイツロマン派の影響は認められるものの、

オランダ民謡を用いたり、新ロマン主義的というか、

劇的で大胆な表現も多々見られ、

旋律の上で独自性を引き出す事に成功している。


作品の趣旨としては、

スメタナ(Smetana)の連作交響詩『我が祖国』(Má vlast)や

ポルトガル国民楽派を代表する

ジョゼ・ヴィアナ・ダ・モタ(José Vianna da Motta)の

交響曲『祖国に』(À Pátria)と同系列です。


4つの楽章それぞれに表題が付いています。


https://www.youtube.com/watch?v=8fXLIPKmyTA


第1楽章:オランダの森にて(In neerlands wouden)

牧歌的な中にも威厳を感じさせるとても印象深い旋律が、

如何にも御伽噺の始まりの様な

霞の中から登場する様な感じで始まります。

この動機は、形を変えてその後も繰り返し登場しますが、

他の全ての楽章にも登場します。

この曲の”要”でしょうね。

冒頭附近の金管によるファンファーレ風旋律が、

如何にも物語の始まりという印象。

9:00手前辺りからは、

映画のアクションシーンやヒーローサウンドを思わせる、

緊張感溢れる劇的旋律が漲りますが、とても聴き応えあり!!

最後は、如何にもハッピーエンドな感じで、雄大に締めくくります。


第2楽章:田舎にて(Op het land)

如何にも蟻さんか何かの動物が

あくせく働いているかの様な童話の一場面を思わせる、

陽気でコミカルなハイテンポのメロディで始まります。

昔のアニメのBGMみたいです。

その次にはやや哀感漂う円舞曲(ワルツ)風旋律が来ます

その後、激しい情熱的な舞曲を思わせる

3拍子の旋律へと移り変わります。

如何にも、ジブリ辺りの映画の「逃亡と追跡」場面のBGMに使えるっぽい?

シンバルの音を余韻を残さず途中で切る奏法が印象的!!

それが終わると、如何にも大聖堂内で

合唱団が厳かに歌っているかのような、

荘厳さを湛えた宗教曲を思わせる旋律が現われます。

その後、最初のコミカルな旋律が再び現われて曲が閉じられます。


第3楽章:浜辺と海にて(Aan het strand en op zee)

悲劇的な雰囲気に包まれたメロディで始まります。

それが、6:30辺りからいきなり素早いテンポの

緊張感漲る旋律が現われ度肝を抜きます。

ジブリ映画の緊張感溢れるアクションシーンのBGMにでも使えそう?

その後に現われる、

ホルンを重ねた雄大なアルプスを思わせる旋律も印象的。

海の雄大さでも表しているのか?

如何にも、パズーとシータ達が

廃墟と化したラピュタに到着した後のBGMみたい?

その後、トランペット等の金管の咆哮によるファンファーレによって

感極まります!!

最後は、牧歌的な旋律の後、雄大な雰囲気で締めくくります。


第4楽章:首都へ(Ter hoofdstad)

ファンファーレ風旋律で始まります。

如何にも凱旋行進している様な感じ。

その後、幸福感に溢れたメロディが

入れ替わり立ち代り現われる様な感じです。

中間辺りで、哀歌(エレジー)風メロディが現われますが、とても美しい。

その後、大団円へ向けて段々と盛り上がって行きます。

息の長い最終楽章ですが、旋律の一つ一つが魅力的なので、

全く退屈さは感じません。

只、終止音がちょっと尻切れトンボっぽい感じが・・・。

演奏する時は、もっと終止音を長くするとかした方がいい様な。


CDS 1088-2


ベルナルト・ズヴェールス:交響曲第3番『我が祖国に』

演奏:ハーフ・レズィデンツィ管弦楽団(Het Residentie Orkest, Den Haag)

指揮:ハンス・フォンク(Hans Vonk)

STERLING【CDS 1088-2】2010






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Bernard Zweers Sym, 3 - HMV

Zweers: Symphony No.3 "Aan Mijn Vaderland" - TOWER RECORDS






【追記】

YouTube動画が削除されていたので、上げ直しました(2016/6/2)

交響曲第3番に調号追記(2016/6/5)






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ベルナルト・ズヴェールス(Bernard Zweers)(3)

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