

(土井喜晴氏「日本の家庭料理独習書」を参照しました)



水、酒、砂糖を入れて煮たったら、4等分した鯖、生姜の薄切りを加え、落としぶたをして5~6分中火で煮る。味噌を加えると染み込みにくくなるため、まず甘みを浸透させる。8割方火が通った段階で、味噌を煮汁で溶き、加えて更に7~8分煮て、煮汁がとろっとしてきたらできあがり。

8割方火を通す 味噌は煮汁で溶いてから 付け合わせは焼きネギ、
油を塗って直火で焼きます

久々に味噌煮をしてみました。汁物や以前紹介の味噌漬け(粕混合)以外に味噌を使っておらず、今回の白味噌も正月の雑煮用に買ったものです。人間が古くなると段々レパートリーが偏ってきます。肉より魚の方が良くなり、煮物も出汁と醤油での味付けが簡単で(慣れから失敗がない?)、心掛けないと他の方法を取ることがなくなります。ここは初心に返って定番の味噌煮にチャレンジ。煮る中身は何でも良いのですが、定番中の定番の鯖にしました。普段は適当に味付けしていますが、「適当」ではレシピになりませんので、土井喜晴氏のこれも基礎編の「日本の家庭料理独習書」から取り上げました。
大衆魚と言われた鯖も乱獲で漁獲量が減り、しかも幼魚ばかりが市場に供されていると言うことです。(*1)ご多分に漏れず大西洋では、漁獲規制が守られており、冷凍技術の発達と相まってノールウェー産のマサバが多くを占めるようになりました。(*2)できれば将来にわたって従来の鮮魚を食べ続けたいと思いますが、足の速い鯖は船での冷凍がもはや主流なのです。冷凍のお陰で、寄生虫アニサキスが死滅するので、刺身が出回るようになりました。実は刺身が売りの関鯖も冷凍のようです。
マサバは、まぐろやカツオと同じで冷水地域で太って温水地域で産卵するので、脂がのって美味しい旬があります。一方南の海で育つゴマサバは、年中美味しく、資源量が安定しているのだそうです。ゴマサバをもっと食べるべきだ、と言う資源論からの提案もあります。実は鯖はレジームシフト(生態系の構造変換)が30~50年で起こるそうなのです。早ければ2030年頃からマサバが多くなるのでそれまではゴマサバで、と言う理論です。
しかしもっと大きい変化は私たちの食生活でしょう。我が家を例に取ってみると、当初から共働きのせいもあって、長男が就職する頃には、一家団欒は無く、それぞれがバラバラに食べる状態、すなわち完全な「個食」と言われる状況となっていました。それが今や「作らない化」と、それぞれが作る「個調理化」になっています。家に残っている息子はインスタントを卒業、レトルトが主流となり、家内は惣菜専門です。(*3)
家事分担を男女が平等と考える様になった若者達の「食」はもっと進化しています。彼らの外へ向かう労働指向は、今まで当然とされていた内なる家事労働を既に不可能とし、勢い「食」に対する労働も省力化に向かって突き進まざるを得ないのです。コンビニやスーパーで買い物し、イートインコーナーで食事を済ませば、家に持ち帰るより、ゴミも出ないし合理的です。またレトルト食品は、少人数化と「個食」により手作りより経済的だし、「簡便」さだけではなく、味も自前に遜色がなく、少し手を加える「調理」で「料理」へのこだわりも満足させるように種類が増えつつあります。今や味噌の売り上げを即席味噌汁の売り上げが抜いているのです。
究極は、まな板も包丁も不要でしょう。その時「キッチン」はどうなるのでしょう?各部材を組み合わせて出来るコンポーネント型キッチンなら生き残れるかな?少数になるであろう料理こだわり派残党は、プロ仕様化していき、キッチンそのものへの執着派はリビング家具の一種という分化が起こるのではと思っております。
若者達の食文化の多様化は海外より日本が先行してしているのではないかと思っています。AIを備えた未来型キッチンを想像するのが楽しみでしたが、そんなのを飛び越え、食のソフト面、即ち考え方や意識にはパラダイムシフト(地殻変動)が起きようとしているのかも知れません。変化を見届けたいのですが、ますます化石化した残党の一味になりそうです。
*1:近海で魚が取れなくなった中国は、漁業補償を10倍にした。それを元手に遠洋漁業に乗り出し、日本ばかりではなく豪州やペルーとかチリ、反対側のアルゼンチンなども中国のトロール船が大挙して資源を漁っているとのことで、生態系が変わる程だそうです。
*2:既に10年以上前に0~1歳魚(300gまで)という市場価格が安いものばかりしか取れなくなっていたそうです。でも欧州では2歳魚(400~500g)を管理統制し親魚として残す戦略に基づく漁業を確立していたようです。<これから食えなくなる魚:小松正之著より>レジームシフトもこの本からの参照です。
*3:我が家の生態系で唯一料理をして食べている私。帰りに駅前のダイエーで割引してあるのを狙って2,3食分買っています。たまに皆の分を作りますが、まず褒められることはありません。先日は土産のうどんを、本枯鰹節を削り、昆布と本格的出汁を取ってお揚げも煮て、「きつねうどん」を饗したのですが、「出汁が薄い」と一喝されました。日頃出汁の素に慣れていますからね。「料亭の味や!」とうそぶいてみたものの、残りの出汁、やっぱりうまみが足らないように感じ、こっそり出汁の素を足して、わかめ汁にして一人寂しく消費しました。
