ーブーブーブー…


夢の世界から一気に現実世界へと引き戻す音


「ん゛…」

原因を止めようと体を動かせば

『んぅ…』

腕の中で身をよじる恋人

一瞬、起こしたか
と思ったがそうでも無いようで
まるで幼子のように俺の胸の中でぐっすりと眠っている


あまりに気持ちよさそうに寝るものだから
俺もまたゆっくりと瞼を閉じた


枕元ではまだ
俺たちを起こそうと
携帯が激しく振動していたのだが







ーブーブー


再び眠ってからどれくらいの時が経ったのか
再び携帯から響く音に目が覚めた

あまりにもしつこく振動し続けるから


「…はい」


仕方なく出ると


「お前今何時や思てんねん!!」


途端に響く怒声

時計を見れば
針はちょうど真上を指していて


「あ…」


確か今日は9時から打ち合わせ…


「あ、とちゃうやろボケ!!
さっさと隣に居るやつ起こして来い」


そう言うと
電話は一方的に切られた

静かになった部屋
隣からは心地良さそうな寝息


仕方ない


「戒君、起きろ」


『んぅ…』


嫌々と首を振ってるけれど
寝かしておくわけにもいかない


「おら起きろっての!!」


とりあえず戒君をベッドから落とした


ーゴンっっ


あ、


『いったあ…
何すんの流鬼ぃ』


「悪い…
いや、それどころじゃねぇ
戒早くしろ遅刻だ」


『え…あ゛あぁあぁぁ!!』


俺たちはどうして起こさなかった
何だかんだと言い合い
慌てて事務所に向かった

そして



ゴンっっ



戒君がベッドから落ちた時よりも重い音が俺の頭を襲った

その後も散々葵に怒られ


「流鬼、お前ツアー終わるまで戒君と同室及び一緒に寝ること禁止」


キツい罰則までくらってしまった…


一発目で起きてりゃこんなことにはならなかったのに!!


とんだモーニングコールだぜ




[Misty Rose Color]より
優しい黄泉には甘い俺を


嫉妬深い咲人には従順な俺を


ねぇ、演じてあげる

だから


もっともっと
俺に溺れて?


俺にたくさんの愛をちょうだい


「ひつぅ、一緒にお菓子食べよ」


『あ、俺それ食べたかったのvV』


「ひつ、音合わせ」


『ごめんね咲人』


黄泉は優しい
でも優しいだけじゃ
俺は満足出来ない


咲人は嫉妬深くて束縛も強い
M傾向な俺は気持ちよくて好きだけど

それだけじゃ嫌。


ほんと2人が1人になってくれればちょうどいいのに


俺って欲張りだからね


「ひつぅー」


「柩、」


ほらほら今日も
2人が俺に愛を与えてくれる




別に付き合ってるわけでもないのに、ね

2人の気持ちは嬉しくて
ありがたいけど

2人が好きなのは
俺じゃなくて


『柩』


だから
作りものの俺しか愛してくれない人はいらない


寂しいね、
偽りの自分しか愛してもらえないなんて

悲しいね、
そうだと解っている自分が


いつか本当の僕が2人の前に現れた時
今と同じ関係で居られますかー…??





[つぎはぎ人間]より
ふとした瞬間に思い出す記憶も


何度も何度も夢に見た景色も


全て俺が生み出した幻なのかな?


でも
どれも断片ばかりで
繋がらない


いつも誰かを追いかけてるのに


手を伸ばせば消えてしまう


ねぇ、貴方は誰?


耳に残る声は懐かしくて
鼻腔を擽る香りは優しい


俺のすぐ傍に居る気がするのに


目が覚めれば
匂いも声もはっきりしなくて


ただ優しくて懐かしい記憶だけが残る


ねぇ、貴方はどこにいるの?


ー戒、


ほら
まどろみの中で聞こえる声は


音を辿れば消えてしまう


「っ、い…戒!!」


『ん…ぅう』


「何時まで寝てんだ、ほら練習始めんぞ」


『あ…ごめん』


「大丈夫か?」


「戒君疲れ溜めすぎやわ」


「体調管理は大切だよ」


『うん、大丈夫だから心配しないで?』


「うし、じゃあ始めっぞ」


流鬼が声をかけて
皆が動き出した瞬間

あ…


夢の香りがした


誰?誰の匂い??


周りを見渡しても
皆一つに集まってるから解らない


俺の探してる人は
この中に居るんだ…

「戒」


この声!!
解らない

何時もなら聞き分けられるのに


ー約束しよう
次は夢じゃなく

現実の世界で会おう

俺は戒が気づいてくれるのを待っているから…


「戒君!!」


『あ、れいちゃん』


「寝ぼけすぎ」


『あはは…ごめん』


現と夢の狭間で感じる貴方


何時かきっと出逢えるはず


結ばれた運命線
今はまだ夢の中で


『必ず見つけてみせる…』


まだ見ぬ俺の探し人







[つぎはぎ人間]より
『ねぇ、』


「………」


『返事ぐらいしてよ』


「何」


『もう、いい』


「柩が返事してって言ったくせに」


『うん、でももういいや』


きっとこれが
ひつからの最後のチャンスだったんだね


一緒に居れば
それだけで気持ちが伝わるって思ってた俺は


何て愚かだったのだろう


何度も何度も傷つけて

何度も何度も泣かせて


最後の叫びも気付かないまま、


お別れしちゃうなんて


紅い赤い海に沈んだ君を

俺はただ見つめるだけで

俺は涙も見せず
優しい君が泣いているのを


また見ているだけだった


「ひつ…

ねぇ、何してるの?」


返事なんて返ってくるわけもないのに


「返事しろって言ったの柩だろ!!

俺は駄目で柩は返事しなくてもいいのかよっ」


言いようもない
悔しさと自身への怒りに声を荒げた


涙を流し眠る柩を腕に抱けば


深紅が俺を染めていく


「お願いだから、目を開けて…

もう寂しい思いなんてさせないから

お願い…」


ひつひつひつひつひつひつひつひつひつひつひつひつひつひつひつひつひつひつ……


あぁ、
今になって気づいたよ

柩、君が欲しかったものは

愛でもなんでもなくて

ただ君を俺に焼き付けて
俺の中から…

いや俺が君に執着することなんだ


「ふふ、
ひつったらほんとうにかわいいんだから…」


壊れた俺は
壊れた恋人を抱き

恋人の赫に染まりながら

笑う


俺はここにいる

もう寂しい思いはさせないから


アイシテルヨ、ヒツギー…



ねぇ、ひつ


君の願いはちゃんと叶ったー…??





[がらくた人間]より
寒い

暗い

ここは何処?
流鬼、どこに居るの?


流鬼が居ない世界は

冷たくて


暗い


独りは嫌って言ったのに…






「…い、か…い戒っっ!!」


『………』

あれ、流鬼が居る

そんなに慌てて
どうしたの?

でも、
流鬼が見えた瞬間

温かくなって

明るくなった

たくさんの光が目に入って眩しいくらい


「戒、俺が解るか?!」


何言ってるの?
解るに決まってるでしょ

何年恋人やってると思うの、変な流鬼


『…っは、』


あれ、声出ない…
俺どうしちゃったんだろ


それに
凄く眠たい…


流鬼が呼んでるのに
瞼が重たくて仕方ないの

どうしよう
眠りたくなんてないのに

眠っちゃいそう…

あそこは独りになるから嫌なのに


流鬼の居ない世界に逝きたくない

眠りたくない


いや、


『…く、い』


ねぇ流鬼、
次に俺が目を覚ました時

また一番に会うのが流鬼だといいな


だって
流鬼の居る世界だけが

温かくて明るいんだもん


ごめんね、流鬼
あと少しだけ眠らせて




「戒…」


ーまだ薬の作用で意識がはっきりとしないだけです

ただ、このまま意識が戻らなければ…


「戒、頼むから起きてくれ…
お前が居ないと、俺駄目なんだ」


白いベッドに横たわる恋人

そこに居るはずなのに
居ないきみ


なぁ早く俺のとこに戻ってこい


ねぇ早く貴方のもとへ帰りたい


早くこの(その)瞼よ開いて(くれ)

貴方に
お前に


会いたいんだ






[つぎはぎ人間]より