「戒君

俺っっ

あ゛ぁもう、
俺、戒君が好きやねん」


『え…??』


「ごめんな、
こんなこと急に言うて…」


『葵君…』


葵君が俺のことを好きー…?

嘘でしょ??

いつも俺とペアになったりするの嫌がるくせに


話だってまともにしてくれないくせに

『葵君、俺のこと嫌いだと思ってた』


「そんなことっ」


『いっつも俺と2人になるの嫌がって…
話だってまともに聞いてくれないのに

好きだなんて…
俺のことからかって楽しい?』


「からかってなんかない!!

ただ2人にならんかったり
喋らんかったりしたのは

恥ずかしかってん…」


ガキみたいやな


『子供みたいだね…』


でも
ありがとう、葵君に好きって言って貰えて嬉しかった


だけど


『俺、れいちゃんと付き合ってるの』


「嘘やろ、」


『ほんと…ごめんね』


俺…れいたに何度相談した??

あいつは俺が話をするたびに
心の底で笑ってた??


なんや
俺はあいつに踊らされてたんか…


あほくさ


『葵君??』


「いや…そか

今回は引くけど
戒君を好きな気持ちは変わらんから」


『うん…ありがと』


れいた、
俺はお前から戒君を奪う


こんな屈辱俺は許さへんからな


覚悟しぃや


次は俺の手の上で
お前を踊らせてやる




[つぎはぎ人間]より
もし明日晴れたら
散歩でも行こうか

それとも買い物の方がいいかな?

でも
家でのんびり過ごすのもいいなあ


じゃあ、もし雨が降ったらどうしよう?

ベッドに潜ってだらだらしようか

温かいココアでも飲みながらDVDを観るのもいいなあ


どうしよう
やりたいことがありすぎて悩んでしまう

何をしよう

せっかくの休み
仕事と仕事の間の小さな休息

だけど世間は仕事の始まり

月曜日

不規則にやってくる休みだからこそ
ずっと2人で居たい

仕事以外の時間をたくさん共有したい


「ひつ」


『なあに?』


「明日、暇?」


『あ、それ俺も聞こうとしてた』


「ふふ、じゃあ明日どうしよっか」


『んー…
とくに何も…』


「とりあえず家来る?」


『うん、明日のことは明日決めよ』


あ、今日泊まっていい?


その言葉に二つ返事をして
ますます広がる明日へのビジョン


予定なんて無いけど
隣に君が居てくれるなら

きっと楽しい1日になるだろう


今日は日曜日
世間では休みの日

だけど不規則な俺たちの休日は明日の月曜日


早く早く明日よ来い

俺たちの大切な1日遅れのサンデイ




[長靴とレインコート]より
ザァザァ

ざあざあ

雨が降る

どんよりと思い灰色の空から冷たい雨が降る

俺は1人雨の中佇んでいた

不思議と

髪から滴る水も
濡れて肌に張り付いた服も

心地よく感じた


『何してるの?!』


雨の音しか無かった世界を切り裂いた声

それは
俺の何よりも好きな音
大切なやつの声


「いや…なんとなく」


『なんとなくって…
きぃちゃんは歌を歌うんでしょ?
喉大切にしないと』


そう言って俺の頭を覆ったもの


灰色だった空を隠す
空色の傘


「あー…」


『あー…じゃないでしょまったく…』


パラパラ

傘を弾く雨滴
明るくなった視界と音


「世界はこんなにも変わるのか」


『何が??』


「いや、何でもねぇ」


『変なの

さ、家帰ってお風呂入ろ?
風邪ひいちゃう』


そう言われ手を引かれる俺


ガキみてぇ


でも戒の手から伝わる温もりを感じた瞬間
自分の手がやけに冷たくなっていたことに気づいた


灰色の空を覆った空色の傘も

静かだった雨の音を明るい音にしたのも

俺を温かくしてくれた温もりも



全部ぜんぶ
お前が与えてくれたものだった


お前が居てくれるだけで


俺の世界はこんなにも
明るく温かくなる


幸せとは
ほんの些細なことだ

こんなことにも気づかされるなんて


ありがとう
きっと俺はお前に出会えて初めて人間らしくなれたのだろう


俺は戒の手を強く握り返し横に並んだ






[長靴とレインコート]より
俺の大好きな時間
ライブでドラムを叩いてる時


自分だけの世界に深く深く浸れるから


流鬼の歌声
うっさんや葵くんのギター
れいちゃんのベース

全部遠く聞こえるくらい
心地よくて幸せになれる空間

だけど
ふと現実に戻って前を見た時

前に立つ皆が本当に遠くに感じる時があって

同じ空間に立ってるはずなのに


とても寂しくなる


『あ…』


どんなに自分はドラムでリズム隊で
ガゼットを支える存在なんだって言い聞かせても
不安に駆られて間違えてしまう時がある


『はぁ…情けな』


「戒君どうした
あんなとこいつも間違えねぇのに」


れいたは同じリズム隊なだけあって些細なミスも気づく


『ごめん…
手滑っちゃって』


「それ、嘘だべ」


『ど、うして?』


「どうせまた変なこと考えて手元狂わせたんだろ」


人とは正しいことを言われると言い返せないようで
俺はただ俯くだけ


「な?
お前のことなら何でも解るべ
俺はお前の相方で
そんな俺らは最強のリズム隊だからな」


『ははっ
れいちゃん意味解んない』


「何だと!!」


『きゃーっvV』


俺らは最強
天下無敵のリズム隊

「それに俺は
お前を誰よりも想ってんだべ?
気づかねぇわけねぇだろ

ベースとお前だけが俺の専門だ」


『れいちゃん…

ただのバカじゃん』


「でもそのバカの言葉にそんなに喜ぶお前も相当バカだろ」


『確かにww
じゃあ俺も、ドラムとれいちゃん専門だね』


「恥ずかしいやつ///」


『れいちゃんが言い出したんでしょっ』

「覚えてねぇ」


『ひっどーい!!』


「でも、元気になったべ」


『あ…』


さっきまで俺の中にあった不安がいつの間にかなくなっていた

ほんとれいちゃんにはかなわないや…


『ありがとう、れいちゃん』


「おう」


大好きな大好きなれいちゃん
もしれいちゃんが辛くなった時には
誰よりも早く
れいちゃん専門の俺が助けにいくからね!!


「さ、皆待ってるから行こうぜ」





[長靴とレインコート]より
シャボン玉飛んだ

屋根まで飛んだ

屋根まで飛んで

壊れて消えた…



呆気ない最期を迎えるシャボン玉


弱いくせに
どうして高見を望むのだろう…


俺はシャボン玉を飛ばしながら
子どもの頃によく歌っていた歌を思い出していた



「あれ、戒君珍しい遊びしてるね」


『あー…うっさんだ

何か買い物行ったら目にとまっちゃって

思わず買っちゃた』


「戒君らしいねww
ねぇ、俺にもやらせて?」


『いいよ、
はいどうぞ』


「ありがとー」


大の大人が並んでシャボン玉を飛ばす


たくさん飛び出したシャボン玉は
高く高く上って割れる


『シャボン玉って割れるために空に上ってさ

ここに止まってれば割れずにすむのにね…』


「うん…でもさ戒君

もしかしたら

シャボン玉は空に恋をしているのかもしれないよ?」


『うわっ
うっさんロマンチストだ!!

でも、どうして?』


「空が恋しくてさ
ここにじっとしてられないんだよ

だから」


割れると解っていても
少しでも近くに行けるよう空高く上って行くんじゃないかな



『ふぅん…』








あぁ


俺は少しシャボン玉に似てる


ふとそう思った


貴方という空に恋い焦がれて


でも
この想いは貴方に届かないまま


割れてしまう


ただ
シャボン玉と違って俺は


割れることを恐れるあまり
空高く飛ぶことも


それゆえに
貴方の近くに行くことも出来ないのだけれど


でもいつか
俺もシャボン玉のように
壊れることを恐れず

空に向かって
貴方に向かって


飛んで行ける日がくればいいな


その時は空高く上った先
割れることなく貴方のもとまでたどり着きたい





ただ今は
シャボン玉だけが空を目指し飛んで行く






[長靴とレインコート]より