ズキズキと頭に刺さる痛み


曲を創る時
詩を書く時


自分の思うようにならない時に

よく訪れる痛み



「何もしてないのに…」


今日は完璧なオフで朝からまったくといっていいほど
何もしてない


なのに


「薬、飲もうかな…」


重い腰をあげた時



ピーンポーン…


家中に響いた
インターフォンの音


「誰…」


面倒くさいながらも扉を開けば


『ごめん、起こしちゃった?』


「いや…どうしたの?」


扉の向こうには恋人の姿


『咲人とDVDでも見ようかなって…

迷惑だった?』


「そんなことないよ
どうぞ、」


困ったように笑った柩を中に入れて
2人ソファに並びながら他愛もない話をした


ほとんど毎日顔を合わせているのに
話すネタが尽きないのは本当に不思議だ


『さっき、辛そうにしてたけど大丈夫?』


突然投げかけられた言葉


「さっき?」


『うん、来た時眉間にシワよせてたから…』


「あぁ、少しね
頭が痛かったんだ」


『うそ?!
俺、迷惑だったんじゃない?』


「ううん、もう痛くないから」


柩に言われて
頭が痛かったことを思い出したぐらいだから


さっきは薬飲もうと考えてたぐらい痛かったのに…


柩と話してたら
痛みなんてどっかいってた…


『咲人?』


「ん?」


『ぼーっとしてたから、どうしたのかなって』


「柩は俺の鎮痛剤だなって」


『何それ』


そう言って笑う姿はとても可愛くて


どうやら俺は
1日1回は柩が必要なみたいだ
長い片思い
貴方を想い続けて何年経った?


貴方はただ前だけを見続けて
後ろに居る俺を見てはくれない


寂しいよ、


長い長い片思い
いつになれば終われるのかな…









届かない
いくらお前を想って歌っても

俺の声はただお前の横を流れていくだけ


人に想いを伝えたくて
マイクを持ったというのに


一番届けたいやつに届かないなんて、


「滑稽だな、」


「は?」


隣には想い人の想い人


俺が一番望む場所


「お前が羨ましいよ」


「わけわかんねぇ」


解らなくていい
解らないままでいい


どうか
あいつの気持ちに気づかないでくれ


片思いは苦しい
相手の一挙一動で幸にも不幸にもなれる


ただ悲しいことに
あいつの幸は
俺の不幸


「世の中は上手くいかないもんだな」


どちらかの片思いが終わりを告げる時

もう1人の想いが届くのだろうか



「『俺を見て』」
ビュー…ッ


「『寒っ』」


冷たい風が2人の間を吹き抜けていく


異様に冷たい冬の風は俺たちに容赦なく吹き付けてきて


「戒君顔あっけぇ」


『流鬼だって鼻真っ赤じゃん』


俺たちの体温を奪っていく



『早く春になって欲しい…』


「冬は嫌いか?」


『嫌いじゃないけど…』


「ふむ。」


わざとらしい相槌


『…?』


「少し、冬にしか出来ないことでもやってみますか」


そう言って
流鬼は俺の手を取り
自分のポケットの中に入れた


ポケットの中で繋がれた手は不思議なくらい熱くて


『恥ずかしいやつ』


「耳まで赤くして、本当は嬉しいんだろ」


『自分だって赤いくせにっ』


お互い恥ずかしいだのなんだの騒ぎながらも
繋いだ手は離すことなく結ばれてて

体すら自然と温もりを分け合うように寄り添っていった


『確かに冬にしか出来ないね』


「だろ?」


夜とはいえ外で男2人が
ぴったりとくっついて歩くのは少しおかしかったけれど


(たまには、ね)


今はまだこの温もりを失いたくない


そう思った
「戒が好きなんだ」

今でも響く貴方の声


『ご、めん…
俺、付き合えない…』



勇気を出せず
手を伸ばせなかった俺を


「そっか、そうだよな」


貴方はただ悲しそうに
見ていた


ねぇ、あの時
もし俺が貴方の手を取っていれば何か変わっていたのかな?


白雪が舞う
地を白く染めるため


粉雪が舞う
俺を冷たい白で包むため


『雪のように溶けてしまえれば、』


こんな想いはせずにすんだのに


『なんて神様は皮肉なものなのだろう』


報われない恋ばかり追いかけさせて

一体何になる?


好きの気持ちばかり溢れて辛い気持ちになるだけなんて


『ばかみたい』


流れる涙もただ虚しくて


もう戻らない時を悔いるだけ


もし時が止まるなら

言えなかった言葉を貴方に届けたい
オレンジ色に染まる教室で
語り合った将来のこと


目指すものは同じだったはずなのに


ねぇ、
咲人が凄く遠くに行ってしまう気がしたの


「俺、学校卒業したら東京に行く」


あぁ、やっぱり


ずっと一緒に居たのに
こんなにも別れは呆気なくやって来るのかと


寂しいけれど
友達の俺は咲人をとめる術を持たなくて


『頑張って、ね

俺…応援してるから』


寂しさを押し殺して強がりを伝えることが精一杯なの


咲人が好き
置いて行かないで


厚かましい言葉が脳裏をよぎった


傍にいたい
俺も咲人と一緒に夢を追いかけたい


俺の中に湧き出た思いすら
醜い欲望に思えた


俺のは夢じゃない


ただ咲人と居るための言い訳…


「柩、」


『なに?』


「もし、もし嫌じゃなかったら…」







咲人の顔が歪んで見える
言葉なんて出てこなくて

ただ
何度も何度も頷いた





「俺と一緒に行こう」