善き人のためのソナタ

2006年 ドイツ 監督:フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク
1984年、東西の壁崩壊5年前の東ドイツ。国家保安省<シュタージ>の優秀な局員ヴィースラー 大尉(ウルリッヒ・ミューエ)は反体制派の疑いのある劇作家ドライマン(セバスチャン・コッホ) と恋人である女優のクリスタ(マルティナ・ゲデック)を監視するよう命じられる。 ドライマンのアパートに盗聴器を仕掛け、生活の一部始終を監視するうちに、ヴィースラーはドライ マンたちの生き方と自分の生き方のあまりの違いに気付くようになる。 音楽や文学に溢れ、心から信頼し合い愛し合う二人にヴィースラーは羨望を抱くようになり、彼らの 世界に共鳴していくのだった。 ある日長い間活動停止を言い渡されていたイェルスカが自殺し、ドライマンが彼から送られた 「善き人のためのソナタ」を弾くのを屋根裏で盗聴したヴィースラーは、その曲に心を激しく揺さ ぶられてしまう。 その時からヴィースラーはドライマンの不利な行動を黙殺するようになる。
久しぶりにストーリの良い映画を見たと思いました。
「これを本気で聴いた人は悪人にはなれない」
<善き人のためのソナタ>を引いた後でドライマンが言います。本気で聴いてしまったヴィースラー
は自分のしている体制側の仕事に疑問を抱くようになっていきます。
少しでもその疑いありと思われる対象を激しく監視するシュタージの恐ろしい行動が、つい最近まで
行われていたのだということに改めて恐怖を感じます。壁崩壊後もこのテーマの作品が作られたのは
本作が初めてだということで、東ドイツの人々の心の傷の深さを感じずにはいられません。
それを弱冠33歳の若手新鋭監督が映画化したということに、時間の流れを思います。
<善き人のためのソナタ>を引いた後でドライマンが言います。本気で聴いてしまったヴィースラー
は自分のしている体制側の仕事に疑問を抱くようになっていきます。
少しでもその疑いありと思われる対象を激しく監視するシュタージの恐ろしい行動が、つい最近まで
行われていたのだということに改めて恐怖を感じます。壁崩壊後もこのテーマの作品が作られたのは
本作が初めてだということで、東ドイツの人々の心の傷の深さを感じずにはいられません。
それを弱冠33歳の若手新鋭監督が映画化したということに、時間の流れを思います。
ヴィースラーが正義感からではなく憧れのような気持から自分の生き方に疑問を持ち始めるという
のも、人間らしくすんなり受け入れられました。
華々しい英雄ではないけれど、自分の良心に従うことを優先した素晴らしい人物として描かれています。ドライマンが仲間と誕生パーティーを開き、友人たちが帰った後の部屋でクリスタと愛し合う様子を
天井裏で全て盗み聞きしながらうっとりしているヴィースラー。彼はその後殺風景な自分のアパート
へ帰り、娼婦を呼ぶものの時間延長の願い出をあっさり断られてしまうというなんとも情けない有様。
ドライマンとヴィースラーの日常生活の違いを上手く描き出していると思いました。
のも、人間らしくすんなり受け入れられました。
華々しい英雄ではないけれど、自分の良心に従うことを優先した素晴らしい人物として描かれています。ドライマンが仲間と誕生パーティーを開き、友人たちが帰った後の部屋でクリスタと愛し合う様子を
天井裏で全て盗み聞きしながらうっとりしているヴィースラー。彼はその後殺風景な自分のアパート
へ帰り、娼婦を呼ぶものの時間延長の願い出をあっさり断られてしまうというなんとも情けない有様。
ドライマンとヴィースラーの日常生活の違いを上手く描き出していると思いました。
また彼の失望の一端として自分の欲望を満たすことしか考えていない大臣や、自分の地位の安定を最
優先にする上司が出てきますが、これはどの世界でも共通することかもしれないですね。
優先にする上司が出てきますが、これはどの世界でも共通することかもしれないですね。
ヴィースラーは結局はドライマンをかくまったことを知られ、郵便開封係りにまで地位を落とされて
しまいます。壁崩壊の数年後、チラシ配りをするヴィースラーを見つけたドライマンは声をかけずに
立ち去りますが、その2年後、新作本を出します。その本の扉に「HGW XX7に捧ぐ」と書かれ
ているのをみたヴィースラーは店員に「プレゼントですか?」と聞かれ「いいえ、自分の本です」
と誇らしげに答えます。(HGWはヴィースラーのコードネーム)
ヴィースラーの今までの苦労が一度に報われた気がして満足できるエンディングでした。
しまいます。壁崩壊の数年後、チラシ配りをするヴィースラーを見つけたドライマンは声をかけずに
立ち去りますが、その2年後、新作本を出します。その本の扉に「HGW XX7に捧ぐ」と書かれ
ているのをみたヴィースラーは店員に「プレゼントですか?」と聞かれ「いいえ、自分の本です」
と誇らしげに答えます。(HGWはヴィースラーのコードネーム)
ヴィースラーの今までの苦労が一度に報われた気がして満足できるエンディングでした。
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ドリームガールズ

2007年 アメリカ 監督:ビル・コンドン
ブロードウェイの大ヒットミュージカルの映画化。 1962年 デトロイトで中古車販売を営んでいたカーティス・テイラーJr.(ジェイミー・フォック ス)は地元で抜群の人気を誇るジェームズ・アーリー(エディ・マーフィ)のマネージャーも していたが、ある日地元のオーディションに参加してきたドリーメッツという3人組の女性ボーカ ルグループの才能を見出し、ジェームズ・アーリーのバックコーラスとしてデビューさせる。 このドリーメッツはディーナ(ビヨンセ・ノウルズ)、エフィー(ジェニファー・ハドソン)、 ローレル(アニカ・ノニ・ローズ)の3人で、彼女たちのパワフルなステージにその人気はデト ロイトのみならず全米にまで広がって行った。 こうして3人は一躍スター街道を歩み始めるのだが、リードボーカルを歌唱力ではエフィーに劣る が容姿が綺麗なディーナに変更したことから3人の間に亀裂が生じはじめる。
最初からジェニファー・ハドソンの歌唱力に圧倒されます。
ものすごい迫力で次から次へと歌い上げていきます。見事!
ものすごい迫力で次から次へと歌い上げていきます。見事!
この映画の背景は60年代から70年代にかけて、モータウンサウンドでいわゆるブラック・ミュー
ジックが白人文化へも浸透していく過渡期にあたります。モータウンサウンドでは売れるレコード
がダンスミュージックになっていく時期にも当たり、カーティスはレコードの売り上げを伸ばすた
めに、曲のアレンジを全てリズム感のあるダンス系にしていきます。歌詞を聞かせたい、しっとり
したバラードもダンスミュージックにしてしまうカーティスに反発したC.C.ホワイト(キース・ロ
ビンソン)はグループを離れていきます。
カーティスと恋仲でもあったエフィーは、歌唱力では勝る自分がドリームガールズを売るために
リードボーカルから外されたことに腹を立て、脱退してしまいます。
ジックが白人文化へも浸透していく過渡期にあたります。モータウンサウンドでは売れるレコード
がダンスミュージックになっていく時期にも当たり、カーティスはレコードの売り上げを伸ばすた
めに、曲のアレンジを全てリズム感のあるダンス系にしていきます。歌詞を聞かせたい、しっとり
したバラードもダンスミュージックにしてしまうカーティスに反発したC.C.ホワイト(キース・ロ
ビンソン)はグループを離れていきます。
カーティスと恋仲でもあったエフィーは、歌唱力では勝る自分がドリームガールズを売るために
リードボーカルから外されたことに腹を立て、脱退してしまいます。
これはこのドリームガールズのモデルであるシュープリームス(今はスプリームスというのだそう
ですが、馴染まないなぁ…)で、リードのダイアナ・ロスよりもフローレンスのほうが歌唱力があっ
たことが元になっているのだそうです。この映画ではビヨンセがイマイチ迫力に欠けると思っていま
したが、この役の設定に沿って歌唱力を押さえて演技に臨んだのだそうです。納得。
ですが、馴染まないなぁ…)で、リードのダイアナ・ロスよりもフローレンスのほうが歌唱力があっ
たことが元になっているのだそうです。この映画ではビヨンセがイマイチ迫力に欠けると思っていま
したが、この役の設定に沿って歌唱力を押さえて演技に臨んだのだそうです。納得。
カーティスに許可を取らずに映画出演を決めたディーナはカーティスから「なぜ君をリードボーカル
にしたと思う?それは君の声に個性と深みがないからだ」と言われます。自分がマネジメントするか
ら売れるのであって一人では何もできないのだ、と言われたも同然のディーナはショックを受けます。
そして全てを自分一人で判断し仕切ろうとするカーティスにディーナもついていけないという思いを
抱きます。
にしたと思う?それは君の声に個性と深みがないからだ」と言われます。自分がマネジメントするか
ら売れるのであって一人では何もできないのだ、と言われたも同然のディーナはショックを受けます。
そして全てを自分一人で判断し仕切ろうとするカーティスにディーナもついていけないという思いを
抱きます。
歌が好きという思いと、売れる曲ヒットする曲とのギャップ、また有名になって行くに従って自分達
が無くなって行ってしまうという不安…。ドリームガールズは解散してしまいますが、3人の歌った
リズム感あふれるたくさんの曲はみんなの心にいつまでも残るでしょう。
が無くなって行ってしまうという不安…。ドリームガールズは解散してしまいますが、3人の歌った
リズム感あふれるたくさんの曲はみんなの心にいつまでも残るでしょう。
モータウンサウンド…懐かしい。映画の中にもジャクソンファイブらしいグループが出てきます。
コモドアーズ、スティービー・ワンダー、テンプテーションズ、ライオネル・リッチー…。
モータウンサウンドは昔FENで夜中よく流れていました。(私が聞いたのは80年代ですが…)
コモドアーズ、スティービー・ワンダー、テンプテーションズ、ライオネル・リッチー…。
モータウンサウンドは昔FENで夜中よく流れていました。(私が聞いたのは80年代ですが…)
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ユナイテッド93

2006年 アメリカ 監督:ポール・グリーングラス
2001年9月11日、アメリカ国内の空港を飛び立った旅客機4機がほぼ同時にハイジャックされた。 そのうちの2機はワールド・トレード・センターに激突し、もう1機はペンタゴンに突込み炎上 した。しかしユナイテッド航空93便1機だけは、目的地に到達することなく墜落した。 ハイジャックされた飛行機の中から、家族に電話で最後の別れを告げる人々の様子や、男性が中心 となって最後まで撃墜を食い止めようとした様子、また地上から被害を最小限に抑えるべく奔走す る管制官たちの様子を、遺族の方々や管制センターの人々など関係者への綿密な取材により臨場感 あふれるドキュメンタリータッチの手法で作られたノンフィクションサスペンス。
始まりからあまりにも気を張り詰めて見ていたので、111分後映画を見終わったときにはどっと疲れ
が押し寄せぐったりしてしまいました。
が押し寄せぐったりしてしまいました。
93便と連絡がつかず、ハイジャックされたかもしれないとの情報が流れた直後の管制室の緊迫し混乱
した様子がリアルで、情報をもっと早くつかむ方法は何かないのか、と思ってしまいました。
2機がトレードセンターに激突した直後に、全機飛行停止に出来てさえいたら、ユナイテッド航空は
墜落しなくてすんだかもしれないのに…。
した様子がリアルで、情報をもっと早くつかむ方法は何かないのか、と思ってしまいました。
2機がトレードセンターに激突した直後に、全機飛行停止に出来てさえいたら、ユナイテッド航空は
墜落しなくてすんだかもしれないのに…。
あのような状況の中、冷静に判断し行動した機内の人々は素晴らしいと思いました。
家族への別れの電話は聞いていて大変辛く悲しく胸が潰れそうでした。
またそれを受けた家族の気持ちを考えると…やりきれません。
家族への別れの電話は聞いていて大変辛く悲しく胸が潰れそうでした。
またそれを受けた家族の気持ちを考えると…やりきれません。
残された遺族にとってこの映画は辛いものでもあるでしょうが、取材を受けた人たちは一様に
「この映画のお陰で多くの人々の心の中にこの事故の記憶が残るのはとても嬉しいことだ」
と言っていました。
また「怒りはありますか」との質問に
「怒りはある。それは政府に対してだ。ハイジャックテロの危険を察知していながら、なんの手立て
もしなかった政府に対し憤りを感じる」と言っていたのが印象的でした。
遺族の怒りの矛先はテロ行為へだと思っていたので、この答えは意外に思いましたが、ワールド・
トレード・センターの遺族と同様、気持ちが「報復のためイラクへ攻撃しよう」とはなっていません。
この遺族の気持ちをアメリカ政府はもっと汲まなければならなかったのに…。
「この映画のお陰で多くの人々の心の中にこの事故の記憶が残るのはとても嬉しいことだ」
と言っていました。
また「怒りはありますか」との質問に
「怒りはある。それは政府に対してだ。ハイジャックテロの危険を察知していながら、なんの手立て
もしなかった政府に対し憤りを感じる」と言っていたのが印象的でした。
遺族の怒りの矛先はテロ行為へだと思っていたので、この答えは意外に思いましたが、ワールド・
トレード・センターの遺族と同様、気持ちが「報復のためイラクへ攻撃しよう」とはなっていません。
この遺族の気持ちをアメリカ政府はもっと汲まなければならなかったのに…。
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